5-13捕らわれているもの
「大丈夫ですよ! 映像部もお休みです」
「そうなの。待たせてしまってごめんなさい。放課後は時間が取りにくくて」
「仕方がないです。君島さんも長くなるかもしれないとのことでしたし」
「夏休みの時のことで思うことがあったとも言っていたけれど……それが美頼と幸恵を不幸せにしないために起こしていた行動と関係しているということよね」
「恐らくは」
真剣な様子から一変、穏やかに笑う冴羅ちゃん。
「この話最初に幸恵から聴いたけれど、思わず笑ってしまったわ。君島らしいわよね、そういうことのために行動するところ」
「そうですね」
冴羅ちゃんが一旦居間を出たところで、元気が出てくるような感じに気付きました。
よし、なんか頑張ります!
◇
次の日の放課後、二年の教室が並ぶ階の空き教室。私たちはすぐにここに集まりました。
三人とも椅子に座ってから君島さんが話し始めました。
「じゃあ、早速だけど話すね。僕、実は草壁と幸恵さんから好意を持たれていたんだ。でも、僕から引き離したいと僕は思った。好意を持たれたことは嬉しかったんだけどね。いや、だからこそかな」
それから、櫓さんと協力したこと、その直後のこと、文化祭の時のこと、修学旅行の時のことを話してもらいました。
「大切にしたい人のために、わざと距離を置くこと。それを二人もしようとしていたことに驚いて……止めた方が良いって少し思ったけど、口が裂けても言えないよね」
「ありがとう、話してくれて。これまで申し訳ないことをしたと思っていたけれど、距離を置くことは必要なことだったとも思えそうだわ」
「はい。お互いに。宮国さんにとっても大事な時期だったと思います」
「そうね」
「その……おぞましいとか言って本当にごめんなさい」
「ああ、いや……その通りだ、って思ったよ……。人の気持ちを無視する、申し訳ないことであることは確かだから」
「あ、えっと、それで……質問しても良いですか?」
「うん」
「どうして君島さんはお二人を引き離したいと思ったんですか?」
「それは、僕だと幸せにできないと思ったからだよ」
「あ……そう、ですか」
これですか?
君島さんが捕らわれているものは。
両親が離婚しているから、その子どもである君島さんも相手を同じ目に合わせるという恐れですか?
「冴羅さんは訊きたいことある?」
「特に無いわ。充分聴かせてもらったもの」
「じゃあここまでってことで。部活も無いんで帰ります」
君島さんに合わせて立ち上がる私たち。
「ええ。ありがとう」
「また……明日」
「また明日」




