5-10夏休みの前、相談された時のこと/入部初日
「うちうまくできてた?」
君島が去っていった後で幸恵に訊いた。
「うん。奏向くんが怪しんでいる感じは無かったし、良かったと思うよ」
「おお、これは意外な才能だったり……? なんてね。一番は幸恵が準備してくれたおかげだよ」
「そうかな?」
「そうそう。教室戻ろっか」
「うん。話しながらで良い? 今の夏休みの話で訊きたいことがあるんだ」
「うん。何?」
「美頼ちゃんも奏向くんに相談されたんだよね?」
「あ、そうだ幸恵もだよね」
「そう。その時美頼ちゃんになんて言われたか訊いて、二人が望む通りにさせるとか。僕が出来る範囲でとかが返ってきて、あ、敵わないなって思ったんだよね」
無さすぎてちょっと笑った。
「ええ!? 何それ~。ないない。絶対幸恵の方が役に立ってたって」
「いやいや。私が忘れてた考えだって思ってさ。奏向くんと冴羅ちゃん、凛紗ちゃんの気持ちを考えてなかったんだよね」
「あ~。いやそれくらいしか分かんなかったからだよ。逆に何言ったの?」
「二人に話し合わせるには二人と付き合うのが良いとか、お互いに好きだと思い込んでいる相手とも話し合えれば良かったとか……」
「やっぱ絶対役に立ってる」
「そうかな?」
「そうそ……いや君島言ってたわ、うちの考えも参考にして、君島の意志で決めるって」
「なるほど。奏向くんの中では優劣着いてないならいっか」
「良いこと言っても君島との関係縮まるわけじゃないし」
「それが一番問題」
本当に問題で一緒に笑った。
「そうだ、うちも夏休みの相談のことで幸恵に思うことちょっとだけどあるよ」
「どんなこと?」
「君島が幸恵に相談するって言ったとき、うちの意見に意味無かったんかな~、最初から幸恵に相談すれば良くね?ってちょっとむかついた」
「もしかしてその後にさっき言ってたこと言われた?」
「その通り」
◇
入部の意向を伝えてから三日後、映像部の顧問の先生から幸恵ちゃんと一緒に呼び出されました。そこで言われたのは入部できることに決まったという話でした。
今は早速コンピューター室に向かっています。
「良かった。入部できて」
「そうですよね。かなり遅い時期ですからね」
「あ、そういえばこのことみんなに話してなかった」
「ま、まあ入部は確定じゃなかったので当然といえば当然ですよ」
そうですか、それなら君島さんは……。
いえ! 君島さんは後ろ向きなことは思わないと、つい最近も思ったじゃないですか!
とはいえ部屋が見えてくると緊張しますね……。
「失礼しますー」
と言いながら扉を開ける幸恵ちゃん。まだちょっと心の準備が!
「お疲れさま、幸恵さん……と凛紗さん?」
「こ、こんにちは!」
「まだ時間あるよね? 集まったところで話したいことがあるんだ」




