1-22勉強を教えよう!
その場でチャットをするのもこの短い間隔でトイレに行くのも怪しまれると思った僕は、通話場所に外を選んだ。
まず、三人の意見は「僕に教えを求める」ということに一致した。面倒たけど最近僕のところに来ないことを考えると草壁よりまともかもしれない、という期待は一瞬で崩れ去る。三人とも中間試験での合格点越えは厳しい。
草壁を含めた彼女らは理解の方向性が異なり、個々に見ていく必要がある。それを僕一人では対処できない。人手不足解消のために新城を呼ぶしかないのだった。
ここまで説明し終えると、こちらに向かってくる新城の姿が見えた。電話を切って新城が近寄りながら話を続ける。
「偶然を装う必要は?」
「一応、今偶然捕まえた体で。でもここからどうしよう」
「全部終われば帰ってくれるかもしれないんだろ。優先的に見るしか無いんじゃないか」
「それもそうなんだけど、草壁のことを疎かにして今日のうちに何も出来なかったとしたらかわいそうだし……」
「ならもう一遍に見てやるよ」
当然のようにそう言い放った新城は店内へと入っていった。
恰好良いな……。
「あれ? 新城じゃん」
一人が気付いて声を掛けた。
「え? 新城くん!?」
驚きのままに新城を見ようとする草壁。会えるように計らって良かったと思える反応だ。
「お、おう。今君島、にそこで捕まっちゃっ、てさ」
さっきの僕の言葉をそのままぎこちなく言った。
恰好良くはない……。
草壁は隠れるように椅子に戻っていた。他の三人はともかく、草壁が気にしていないならいいか……。
その後僕と新城は必死で四人の勉強を見た。様々な教科を見ることになって、お互いの不得手な教科を補い合うように対処していった。
途中、僕は新城に小声で話しかけた。
「(どうした?)」
「(ごめん、草壁のこと見てくれる?)」
草壁を一目見て、また僕に戻ってきた。
「(起きてる? まったく動かないんだけど?)」
「(大丈夫。起きてる。本当に何も出来ないんじゃないか)」
四人同時に見るというのは考えるまでもなく厳しかった。
基礎的な範囲と目下の提出課題に絞ったことで、店が込み出すまでにはなんとか終わらせることができた。




