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4-31帰り道 ☆

 トイレを探そうかとも思ったが、この早朝に開いていないと判断し、持っていたハンカチを買った水で濡らして拭くことにした。


 ハンカチを濡らしながら俺は質問した。

「美頼。途中『ねえ』などと挑発的な物言いをしていたが、どこで覚えた」


「な、何それ!? そんな覚えないよ!?」


「そうか」

 無意識とは恐れ入った。


「あ、それとも優哉の話し方が移ったのかもな~?」


 絞る直前の重みもあってハンカチを落としかけた。

「そ、そうか」


「なんで?」


「もうその物言いはやめてくれ」


「じゃあ優哉も」


「……俺以外に」


「へ!? あ、え!? あ。うん……」


 恥ずかしかったが、同じくらい恥ずかしがっている美頼を見られたので良しとしよう。


 それからお互い確認しつつ顔を拭いた。顔も小さいな……。

「目の周りは赤いが、これで一応は分からないだろう」


「ありがとう。でも優哉はそれじゃ手を拭けないよね」


「まあ、ハンドドライヤーとかでどうにかしよう」


「う~ん。後で買ってあげる」


「いや、そこまでは」

 何か似たようなことを言った気がする。


「うちが買いたいんだ」

 やはりこうなったか。


「お返しっていうか、記念っていうか」


「分かった。なら俺からも買おう」


「それじゃお返しに……! うん。やっぱりお願い」



 四日目は空港に移動し、お土産などを買うための長めの滞在時間を経て、帰路に着くという日程になっていた。

 想定を大幅に超えて充実した四日間だった。僕がいろいろ明かしたのも悪くなかったのかな。


 僕は特に買う物も無いので撮影した動画を確認していた。


「君島~」

 そそくさと、どうも木庭と買い物に行っていた草壁から声をかけられた。


「動画どんな感じ?」


「水族館はちょっと難しかったね。人多いし、暗いし。あ、昼食は使わせてもらおうかな」


「うん。使って使って」


「奏向くん」

 動画を確認していたからか幸恵さんもやって来た。


「美頼ちゃん、お疲れさま」


「幸恵~! ありがとう!」

 脈絡なく感謝する草壁の手を幸恵さんが握り、何度か頷いた。


「何かあった?」


「女同士の話なんで」「奏向くんでもちょっと言えないな~」


「そうですか」

 と、僕はちょっと笑いながら返した。


「なんで笑ったん?」

「こっちの話なんで」

「思い出し笑い?」

「それは違うけどね」

「「え~?」」


 何も無ければ関わりもなかったであろう二人が、こうして仲が良くなっていることに嬉しくなったとか、言えるはずもない。


「あ、それで水族館は私のを使えば良いよ」

「聴いてたの?」


 未だに僕とも仲良くしていることは……まあ、二人が望んでいることならいいか。

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YouTubeにて「僕(じゃない人)が幸せにします。」制作裏話を投稿しております。 もしよろしければこちらもご覧ください!
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