4-28目標 ☆
「私から始まったことだ。私から話そう」
「そうだね。お願い、福成くん」
「私は宇宙の歴史についてだ。前は漠然と天文学ならなんでも良いと思っていたが、丁度良い分野があるものだな」
「そうなんだよね、だからすごく悩んだよ。でも家族のことを考えたら、お金のこともあるけど、より近い地球のことの方を知りたいな~って思ったんだ。だから、考古学を目指そうと思う」
「確かに宇宙よりは身近だけど……。なんにせよ良かった、目指すものができて。幸恵さんらしい選び方でなおのこと安心したよ」
僕の言葉に、笑顔がぱあっと咲いた。
いつか、学校の玄関外で見たようでいて。
でもあの時より、安堵が深いようだった。
「奏向くんがそう言ってくれて嬉しい!」
ああ、本当に良かった。こんなに幸せそうで。
「あとそれから、もしできそうなら宇宙考古学とか天文考古学が選ぶつもりなんだ~」
楽しげ……ん?
「もしかして四択って天文学、考古学、宇宙の歴史、宇宙に関連した考古学?」
「合ってる……。誤魔化せてなかった!?」
「うん。分かりやすく焦っていたから。なんの四択かは分からなかったけど」
「そっか……今ここで初めて伝えたかったんだけどな。まあ何で迷って何を選んだかは今初めて知ったみたいだから良し! まさか福成くんも何か分かってたとか?」
幸恵さんは勢いよく顔を油井に向ける。
「そうだな。同じ分野を選ばない予感はしていた」
「あ……そうだね。福成くんとは別々になるね」
表情は見えなかったけど、その声は切なそうだった。
「大学も違うはずだ。これからは個々に勉強する方が良いだろう」
「そうだよね……。奏向くんの進路も訊いていい?」
「僕は工学部。近くの大学にするつもりだよ」
「やっぱりそうだよね。ちょっと寂しいけど……うん」
幸恵さんは立ち上がって僕と油井とを交互に見た。
「どこかで二人に会える気がする!」
「そんなことがあるかもしれないな」
「僕もそう思ってた。なんでかは分からないけど」
「じゃあ、そんな時のためにも、お互い頑張ろう!」
僕たちは立ち上がって、幸恵さんに頷いた。
「前に歩いていくんだね、幸恵さん」
「うん。寂しさ以外にも怖さとかあるけど、空っぽじゃない。遠くなるけど、家族もいるから大丈夫」
「そっか。本当に良かった。あ、冴羅さんと凛紗さんには話した?」
「このあと話すつもり」
「前に歩かないときがあっても、たまには後ろを気にするときがあっても良い。例えば今は座ったから砂が付いてしまっている」
そう言ってから油井は音を立てて尻を叩き出した。
「え?……本当だ」
幸恵さんも手で払う。
「二人とも直に座ったの?」
「奏向くんは座ってなかったの?」
「実際しゃがんでた」
「「なるほど」」
この二人はやっぱり似ている。




