4-27夜明け ☆
一晩明け、修学旅行は最終日となった。
この早朝に今度は幸恵さんから油井とともに呼び出されていた。
我ながら忙しい。もし二人の気を持たせていたらこんな感じが続いたのかもしれない。無理だろうな。引き摺ったりどっちかのことを考えたりしそうで。
油井とはエレベーター前でちょうど出くわし、約束の時間三分前に待ち合わせ場所にいた幸恵さんと落ち合った。
「おはよう。奏向くん。福成くん」
「おはよう。幸恵さん」
「ああ。おはよう」
「来てくれてありがとう。ちょっとここだと話しづらいから、海の方に行ってもいいかな?」
「うん」
「分かった」
このホテルから少し歩いただけで海岸に出られるようになっていた。ここは西側なので朝日は見えないけど、地平線の上に橙、白、瑠璃と色が重なった空を見ることができた。
「おぉ~。良いね~海」幸恵さんが言うと、
「そうだね。渋山は山ばっかりだもんね」幸恵さんの右にいた僕が返し、
「今日はよく晴れそうだ」幸恵さんの左にいた油井も返した。
座り込み、少しの間波音を聞いた。
「……急になんで天気の話?」
「雲一つ無いからな」
「ふふっ。二人ともいつも通りだね」
僕は幸恵さんの方を見た。油井は視線だけ右に向け、幸恵さんはまだ前を向いていた。
また僕たちは静かになると、息を吸う音が聞こえた。
「私…………二人のことが好きだったんだ。でも今は、夢を優先したいと思ってる。ありがとう、私と過ごしてくれて。とっても楽しかった」
波の音、磯の香り、風の音、空の明るさ、海鳥の声。
幸恵さんが言い終えた後、それらがより鮮明に感じられた。
「うん……。こちらこそ」
僕はそれしか言えなかった。
「恋慕か、憧憬か。私も似たようなものを君に抱いていたと思う」
油井はいつもと変わらない口調で言った。
「そっか。私もなんだ。目標とかを持たせる人とか、前向きにさせたりする人。そんな人になりたいって思ってるから」
「どうだろう? もうなっていると思うけど」
「そうだな」
「え? 本当?」
「部活の時どれだけ助けられたか分からないし、夏休みは深町姉妹のことで心配してくれたし」
「私は最近まで目標を決める猶予を持てた」
「でも、まだまだ弱いところはあると思うし……」
「目指すのも良いけど、幸恵さんに勇気付けられた人がいたことも忘れないで」
「ありがとう」
幸恵さんは僕に微笑み、油井に頷きかけていた。
「それで、どんな夢かな? それとも私の進路から話そうか」
「福成くんも決まったの? そうだね……じゃあ同時に言おう」
「え?」
「分かった」
「分かっちゃったか……。多分僕は何言ってるか分からないと思うよ」
「じゃあやっぱりなし!」




