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4-24想い響く先

 修学旅行三日目、戦争に関連した施設を巡り講話を聴く一日となっていた。

 防空壕を再現した施設や平和祈念資料館などで、当時が偲ばれる展示をゆっくりと見た。


 当時は他人のためを考えられる余裕があっただろうか。あるいはこんな時代だからこそ、他人を思いやらなければ互いを支えられなかったのだろうか。



 麗奈ちゃんが言っていたことは確かに参考になったな。

 同じ方を向いて頑張りたいと思える人。逆にその人に向けて頑張りたいと思える人。それが大切な人。


 でも、それだけじゃないと思う。

 話していたこと以外に二人から感じたのは、その人がなくてはならない人だってこと。


 奏向くんも福成くんも、私の目標でありながら私を頼ってくれたりもしそうな、支え合うことができそうで大切な存在。

 でも私は、頼られて初めてその人の方を向く。目標にするのも一部を見習うだけで同じ方を向くわけじゃない。


 そうじゃなくて、常に向く、向いてしまう人。

 そんな人……


 うん。いる。

 ああ、これで良かったんだ。

 やっと選べる。これで私自身を生きていける。



 大切な人か。

 いたのかな、この人たちにも。離ればなれになったのかな。もう一生会えなくなったのかな。急でも、覚悟していても、辛いはずだよね。

 一緒にいられたら。もう一度会えたら。そんなことを何度も願うよね。


 昨日のあれってそういうことか。

 寂しくなってたからかな、無意識に重ねたんだ。手を引いてもらったあの日のことも。離れたあの日のことも。あの後ろ姿に。

 何迷ってたんだろう。っていうのは言いすぎか。うちにはもったいないくらいだったから、今もちょっと迷ってる。

 でもあの日から願っていたことだった。一緒にいたい。もう一度会いたい。


 封じ込めたこともあったけど、その願いは今も変わらない。

 ここで手を伸ばさなかったら絶対に一生後悔する。



 講話の間は教室と似たような席配置になっていた。

 十中八九寝ると思っていた僕の隣が寝ていない。それどころか熱心に講話を聴いていた。

 何か思うところが……草壁ならあるかな。

 途中見かけた幸恵さんも同じような表情だった。


 決意について考えていた。

 それは時として身を滅ぼすものかもしれない。それでも人間にはどうしても必要なものだと思う。



「あ、幸恵。ちょっと話したいと思ってたんだ」


「美頼ちゃんも? 実は私もなんだ」


「え? 何?」


「私の大切な人、分かったっていう話」


「それ私も。ちゃんと伝えたくて」

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