4-24想い響く先
修学旅行三日目、戦争に関連した施設を巡り講話を聴く一日となっていた。
防空壕を再現した施設や平和祈念資料館などで、当時が偲ばれる展示をゆっくりと見た。
当時は他人のためを考えられる余裕があっただろうか。あるいはこんな時代だからこそ、他人を思いやらなければ互いを支えられなかったのだろうか。
◇
麗奈ちゃんが言っていたことは確かに参考になったな。
同じ方を向いて頑張りたいと思える人。逆にその人に向けて頑張りたいと思える人。それが大切な人。
でも、それだけじゃないと思う。
話していたこと以外に二人から感じたのは、その人がなくてはならない人だってこと。
奏向くんも福成くんも、私の目標でありながら私を頼ってくれたりもしそうな、支え合うことができそうで大切な存在。
でも私は、頼られて初めてその人の方を向く。目標にするのも一部を見習うだけで同じ方を向くわけじゃない。
そうじゃなくて、常に向く、向いてしまう人。
そんな人……
うん。いる。
ああ、これで良かったんだ。
やっと選べる。これで私自身を生きていける。
◇
大切な人か。
いたのかな、この人たちにも。離ればなれになったのかな。もう一生会えなくなったのかな。急でも、覚悟していても、辛いはずだよね。
一緒にいられたら。もう一度会えたら。そんなことを何度も願うよね。
昨日のあれってそういうことか。
寂しくなってたからかな、無意識に重ねたんだ。手を引いてもらったあの日のことも。離れたあの日のことも。あの後ろ姿に。
何迷ってたんだろう。っていうのは言いすぎか。うちにはもったいないくらいだったから、今もちょっと迷ってる。
でもあの日から願っていたことだった。一緒にいたい。もう一度会いたい。
封じ込めたこともあったけど、その願いは今も変わらない。
ここで手を伸ばさなかったら絶対に一生後悔する。
◇
講話の間は教室と似たような席配置になっていた。
十中八九寝ると思っていた僕の隣が寝ていない。それどころか熱心に講話を聴いていた。
何か思うところが……草壁ならあるかな。
途中見かけた幸恵さんも同じような表情だった。
決意について考えていた。
それは時として身を滅ぼすものかもしれない。それでも人間にはどうしても必要なものだと思う。
◇
「あ、幸恵。ちょっと話したいと思ってたんだ」
「美頼ちゃんも? 実は私もなんだ」
「え? 何?」
「私の大切な人、分かったっていう話」
「それ私も。ちゃんと伝えたくて」




