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4-23大切な相手 ☆

 相手がようやく決まった。

 広間を見渡すと見つけ出せた。

 ビュッフェとして並べられた朝食を見ることなく近寄った。


 その相手は私に気付くと、

「あ、幸恵。おはよー」

 と明るく声をかけてくれた。


「美頼ちゃん!」


「え? 何? どうしたの?」


「訊きたいことがあるんだ!」


「う? あ、うん」「もちろん麗奈ちゃんも一緒に!」


「わ、分かった」


「あの、幸恵? とりあえず落ち着いて?」


「うん。声かけられたから落ち着いたよ」


「本当にいつも通りに戻った……。なんだったのさっきまでの」


 朝食の間は自由に席を取ってよくなっていて、私たち以外にも組や班に関わらず話し合っている人がいた。


「でもうちから幸恵にしてあげられる話なんかあるかなぁ?」

 席に座りながらそんなことを訊かれた。


「うん。単刀直入に訊くと、大切にしたい人って誰?」


 美頼ちゃんは箸を取り損ねた。

 二度も。

 三度も。

 四度も。


 それから右手首を押さえてこちらに向き直る。

「あ~……ははは。気にせず食べて」


 悪いことしたかな……。

「ごめん。その、単刀直入すぎたね。事情もある程度知っているのに意地が悪かったよ。具体的な誰かじゃなくて、どんな人がなんで大事かを教えてほしいだけなんだ。あ、物でも良いよ。それに今じゃなくても大丈夫だから」


「幸恵ちゃんはなんでそんなことを美頼に?」


「それは……自分の夢、というか進路を決めるためだよ。今迷っているけど、誰かのためとか何かのためとか、しかも漠然としたのじゃなくて具体的なそういうのが必要だって思って」


「うわ~、分かる~」

 麗奈ちゃんの共感は大分深かった。


「確かに作った服を着た人にこう思ってほしいとか、こういう時に着てほしいとかもあるけど、春仁はどうしたら作りやすいとか、難しいけどこれなら作れるとかも考えるもん」


「お~。そうなんだ」


「なるほど、そういう人ってことか。確かに大切だわ。……あれ、今調子に乗ってた?」


「いえ、参考になります先輩!」「いや恥ずっ」


「……まあでも、そういう人ならいるにはいるかな」

 そう言って美頼ちゃんは目を伏せた。


「料理を作ってあげたい、食べてほしいじゃなくて、負けないぐらい美味しいのを作りたいとか、食べてもらってどう思うのかを教えてほしいとか思う人」


「なるほどね。そっか、そういう感じかぁ。二人は似たようなところがあって分かりやすかったよ」


「あ、そうかも。服とか料理だとそうなっちゃうものなのかもね」


「まあ、特定の誰かに向けて作りたいっていう人もいると思うけど、それってお母さんみたいだからね」


「確かに」

 笑う美頼ちゃんだった。

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