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4-21ちょっとした励まし

 僕たち三人はぎりぎり夕食の時間に間に合うことができた。長浜は部屋に戻っていたはずなのにいつの間にかロビーを通過していたらしい。


 草壁が来る前の長浜との会話によると、赤堀くんたちの高校は明日の朝にここを出ることになっていたらしく、こちらもぎりぎりだったようだ。

 会えてもうまく話してもらえるか不安だったけど、向こうの高校の女子たちに認識されている点からして明らかに変わっていたんだと思う。期待以上に草壁に伝わるものがあったはず。

 もし草壁の背中を押せていたら嬉しい。


 夕食の内容はラフテーやミミガーなど、昼食の魚介類に対して、沖縄の肉類の代表料理が揃っていた。



 食後、冴羅さん、凛紗さん、宮国の三人が集まっていることに気付いた。そしてなぜか冴羅さんと宮国の顔が暗かった。


「何かあった?」


 声をかけたその一瞬で暗さを消して顔を上げた。凛紗さんは僕の声と二人の動作で連続して小さく驚いていた。


「なんだ……君島じゃない」


「いや、良いのか?」


「良いわよ、今更。むしろ事情を知っているから現状も理解してくれるはずよ」


「まあ……そうか」


「ちょっと雑な扱いは友好の証として受け取っておくよ。何かあったんだね」

 僕は空いていた席に座りながら、遠回しで本題に入らない二人ではなく凛紗さんに訊いた。


「はい。今日の班行動は二人が一緒でして」


「そうだったんだ」


「それで観光が意識散漫になったそうです」


「のろけ?」


 僕の発言に冴羅さんは両手で顔を覆い隠し、宮国は目を閉じながら仰いだ。お似合いだなこの二人。


「僕から言わせてもらえば大切にした方が良いと思うよ。そういうの」


「開き直るけれどその通りね。でもこれは後で報告しなければならないのよ? どうすればいいのこれでは同じ班の二人に迷惑をかけてしまうわ……」


「どうであれ見たままを伝えるしかないんじゃないかな?」


「見た……」「まま?」

 困惑する二人。


「この二人何を見ていたんだろう」「ごめんなさい双子でも分からないです」


「写真とか撮らなかった?」


「い、いや、ちょっと」「見せたくないわね!」


「あ、今ので分かりました」「うん。お互いが写ってるんだね」


 恥ずかしがる二人を見て、僕は自身の考えが正しいと思えた。


「それだけ楽しめたってことだよね。そこを伝えられればいいんじゃないかな」


「……よく考えると現地人と話しているところは使ってもいいわね」


「逆光の写真ならいいだろうか?」


「良かった。なんとか纏められそうですね」


「後は任せようか」


 僕と凛紗さんは一緒に席を立った。


「あの二人ならなんとかしたかもしれないけどね」


「でも集中しすぎちゃいますから、君島さんがいなければ修学旅行の間も引きずっていたかもしれないです」


「それもそうだね」


「……また、ですね」


「え?」


「あ、その、私はこちらですので。……また、明日」


「あ、うん。おやすみ」

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