1-20頭を抱える人、言葉とちぐはぐな人
数学の授業が終わった後、今思い付いたかのように「ちゃんと勉強できていないだろうから」とかなんとか言って提案した。
あからさまに頭を抱えていた草壁は提案を喜んで受け入れてくれた。週末だろうが校外だろうが気にしていない様子だった。それどころか何でもしかねないと思わせる気迫を感じた。
何でもしてください……新城と。
後はその新城を誘うだけだ。こちらはいくらか隠すことが少ないからいくらか気が楽だ。
◇
新城と会ったのも一年前の数学の授業。大原と同じ出身中学で部活はソフトテニス。映像部として部の大会を撮影しに行ったが、これもまた上手い。だがこの間のように女性に対しては運が無く、彼には器用貧乏という言葉が悲しくも似合う。
草壁なら、大丈夫だよね?
昼休み、新城のいるクラスの教室からひと気の無い廊下へと連れ出した。
「どうした? なんか頼みか? あ、期待に答えられなかったらごめんな」
「多分大丈夫。新城を好いてくれている人に会ってほしいって話なんだ」
「俺を? それは嬉しいけど……」
新城の表情が変わった。それを見て、僕は聞き間違えたのかと思った。それぐらい口に出した言葉とちぐはぐな表情だった。
なぜこうなることを考えなかったのだろうか。僕にとっては気が楽でも、新城にとっては別れたばかりだから渋るのは当然だ。
「当分そういうことから離れたい?」
「……さすがに疲れたな。こんなに別れてもその理由も分からんし」
贅沢を……と思ったけど、僕も他人のことを言えませんでしたね。
別れた理由として、考えられるのはやはり。
――振った奴は遊びだったんでしょ
「相手が付き合うことが目的じゃなかったから、とか?」
新城は深くため息を吐いた。
「やっぱそういうことになるんかな」
掘り起こしている僕が思うのもなんだけど、さっきから言葉と様子は矛盾してばかりだ。自分ではどうしようもないところにある理由に、無理にでも納得しようとしているみたいだった。本当は自分の中にある原因を探し出そうとしているみたいだった。
この新城こそ、僕みたいに、いや僕以上に草壁を助けてくれると思えた。
「やっぱり、今の新城にこそ会うだけでも会ってほしい。草壁はそういうことが嫌いって言っていたし」
「え? 草壁さんなの? やった。あれ? しかも俺のこと!? すげぇ嬉しい!」
「さっきまでの深刻そうな雰囲気どこ行っちゃったの」
新城は咳払いした。
「分かった。ありがとう。別に会うぐらいはいいよな。それに君島推薦とあったら会う以外ないしな! 今度こそ頑張るわ」




