3-58夜の校舎 ☆
文化祭の片付けは粗方終わり、残りは後日となった。しかし冴羅から生徒会室で待つように言われた。
正直なんのためなのか分からないけど、花火大会の時のことから嫌な予想をどうしてもしてしまう。なんだろう。やっぱり考え直して生徒会を辞めるとかかな。僕気持ち悪かったし。
ため息が止まらない。静まり返った校舎全体に響き渡りそうだ。
もう少し距離を狭めたいとかだったら良いのにな~。そんなことわざわざ呼び出してまで話すことじゃないよな~。
この部屋に近付く足音が聞こえ、やがて扉が開いた。
「無理を聞いてくれてありがとう」
「ああ、いや。感謝されるようなことでも」
冴羅が予想外に明るいことにも、自分の声が予想以上に暗いことにも驚いた。
「あ、その……。改めて、文化祭お疲れさま」
「冴羅こそ。並んでいたからな」
「楽しんでもらえたのかしらね」
「そうだな。私にはそう見えた」
「……それから、ありがとう。色々と力を尽くしてくれて」
「それも冴羅の方が動き回っていたように思うが。……同じようなことを言ってばかりだが、本気で思っているからな」
「それは……私のことを見ていたからかしら?」
な……何その質問!? え? 素直に答えて良いの? いやさすがに気持ち悪いと思うよね……? そうか。これが本題……労いと礼の後に原因を告げ……本当に生徒会を辞めるつもりなのか。
◆
「……そうだ。気分を害したのであれば申し訳なかった」
な……なんで私謝らせているの!? え? 顔が怖かったかしら? 今精一杯明るく振る舞っているつもりなのだけれど……? いえ、そうよね。まだ全く本題に入っていないものね。
伝えなければならないことは分かっている。
けれど何から話せば良いのか分からない。
今私のことをどう思っているか分からない。
思いを伝えた後どう思うのか分からない。
君島に大丈夫と言われてもやはり分からない。
ため息が出てしまう。
今でも私のことを好きでいてもらえないかしら。ただ生徒会のよしみで今ここにいるということなのかしら。
「謝らないで! 宮国に謝ってもらうことなんて何も無いわ。違うの。私からお礼したいの」
「あ……お礼……」
「あなたが中学生の時のことを話してくれたでしょう。そのおかげで大事なことに気付けたの」
「大事なことか……」
「私の努力を誰かに見ていてほしいと思っていることよ」
「ああ。なるほど。より評価してもらえるところに行くのか」
「なんの話?」
「さすが、理由としても上手い。私のせいにしないようにしてくれて感謝する」
そう言って、力なく笑った。
どうして私が離れようとしていることになっているの? 一度距離をおいたから? どうであれ私といるのが嫌だから?
血の気が引いた。呼吸が荒くなった。脚に力が入らなくなった。




