3-52対抗から悪あがきへと ☆
「それが、今凛紗に話そうと思っていたことだったの。君島も聴いてもらえるかしら。今度こそ面と向かって伝えるべきことを伝えるわ」
君島は軽く頷き、凛紗は神妙な面持ちになった。
「私は幸恵のことを知ってから対抗意識を持ってきたの。彼女よりも他人のためになるようなことをしたいなんてね」
君島は意外そうだった。さすがにここまでは予想もしていなかったようね。対して凛紗は心当たりがありそうだった。双子だもの、どこかで勘付くわよね。
「そもそも生徒会に入ったり他の活動に加わったりしたのもそれが理由よ」
凛紗が大きく息を吐いた。
「そうだったんですね。……そのわけを疑問にも思わなかったことが情けないです。私からすれば頼りになることが当たり前になっていて、だから色々な活動をしていくのも自然で。私は本当に何も分かっていなかったんですね」
「会話しなくなったのもちょうどその小学校高学年ぐらいだものね」
「でもそれなら、高校に入ってからの幸恵さんのことはどう思っていたんですか」
君島から恐る恐る訊かれた。
「もちろん本気で立ち直ってほしいって思っていたわよ! でも確かに同時に、決着させることも決めていたわね」
「決着?」
「高校の間に幸恵に及ばないと思わされたら私の負け。そうでなければ引き分け」
「勝つことは無いんだ?」
「無いわね。対抗しようとした時点で彼女に影響されたということだし、何人もの他人のことを自分のことのように思うなんてできないもの。けれどどうにかして、並び立つぐらい他人のためになるような存在になりたいと思ったのよ」
自分で言ったことに対して笑った。
「でも実際私は私の想定を下回っていたわ。凛紗のこと、宮国のこと。一番酷いと思うのは私たちがお互いに見張っていた時ね。凛紗にもだけれど、距離を置くと言い切った宮国のためにもなっていなかったなんてね。それから考え直していたの。呆けていたのはその時ね。至った結論はより幸恵のようになること。自分を捨てて他人を自分のように思うことよ」
凛紗が息を飲んだ。
「だから告白も……?」
君島は目を伏せて訊いた。
「ええ。けれど付け焼き刃だもの。自分を捨て切ることができなかったわ。私は大いに他人に迷惑をかけて、幸恵は大いに他人を魅了して。幸恵なら他人に弱いところを突かれても、むしろその人物に興味が湧くのかしらね」




