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3-44敗けて退くのは ☆

「で、なんで君は選ばれなかったの?」


 お客様は相変わらず動揺を誘おうとしていた。

 だが、その問いに私は少し笑った。やはりその戦法は詳しくは知らない相手には効果が薄い。


「当然だ」


 相手は断言する私を怪訝そうに見た。


「あの二人に私は邪魔だったからだ」

 強がりではなく、本心からそう考えている。

 確かに私は選ばれなかった。だがあの時冴羅が選んだのは凛紗だ。もしその時から別府のことが念頭にあったのだとしても、姉妹の仲が良くなったことも事実だ。

 私はそれを喜ばしく思っている。いやらしい思考だが、それを見て罪滅ぼしができているような気になれる。

 あの選択は彼女たち二人と、私にとって最良だったのだ。


「三戦目、宮国の勝利です」


 続く四戦目。配られた手札を見て、役を告げた。

「今、スペードのロイヤルストレートフラッシュだ」


「君かな? 大声で怒鳴りたてているというのは」

 こちらの状況を気に止めることもなくそんな声をかけたのは、校内で最もがたいの良い教員だった。冴羅、容赦ない。


 当人はのらりくらりと回答した。

「そうっすけど? だってここで一番強いとか言ってる奴に五連勝したわけですし? 停止ぐらいのことしてもらってよくないすか? その娘もそうすること許してくれたしさ~」


「おお……よっぽどだな?」

「ええ、はい。すみません……」

 驚きを隠せない教員と謝る外無い冴羅。


「じゃあ続きは向こうで聞くから」


 腕を掴まれるが抵抗する。

「は? 待てよ。こっから俺が勝つんだから見とけ!!」


 彼の怒鳴り声で見物人たちは一斉に静まり返った。

 このまま落ち着きそうもないので私は手札を裏返した。


「は……?」


 私はルール通り真実を告げていた。これ以上無い役を所持していることを。


「インチキだ! イカサマだ!」


「確かにそう思ってしまうよなあ。ところで」

 腕を掴んでいた教員が呟いた。その直後、その腕を勢いよく下に下げさせると……数枚のトランプが出てきた。


「これはなんだ?」「くそっ! 放せ!」「処遇は後で決めるとして、まず警察に連絡するね?」「やめろ!」

 そんな捨て台詞とともに人だかりの間を連行されていくのだった。周りの奴らもうるさかったが、これまた屈強なうちの生徒たちが居合わせてくれていたようで、取り押さえられるのだった。


「なるほど。動揺を誘ったのはこちらの間違いを待つだけでなく、イカサマする隙を作るためでもあったのか」


「何感心……いえ、ありがとう。何かお礼を……」


「いや、別にいい」


 ……何か私たちに視線が向けられ……あ、今の対戦中の会話……。ぼかしはしたけどこの大勢の前でさんざん個人的な話をしちゃったからだ! うわ、これ絶対冴羅に伝わるよな~。はあ……どうしよう……。

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