表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/281

3-35文化祭初日/巨大ピンボールの実態

 遂に文化祭当日を迎えた。


「別府くん~? 始めるよ~い。ふふ~い」


 今のは二年のもう一人、女子の実行委員会の人だ。昨日の撮影や前夜祭の取り仕切りが上手くいったりいかなかったりのせいなのか、その頃からあんな感じだ。大丈夫かな?


 一組での準備を終えてしばらく経つと、お客さんがまばらながらも入ってきた。僕の担当は正午前後なので、ここからは午前の人たちに任せよう。


 そう思って教室を出ていこうとして、

「君島」

 と呼び止められた。


「……まだ何かありましたか? 草壁リーダー」


「敬語も『リーダー』もやめてほしいんだけど」

 低い声で言い放った。


 そうかと思えば、

「それに……仕事のことじゃないし」

 小さな声で囁いた。


 こんな草壁を見るのも久し振りだ。

「もしかして、一緒に回ろうとか……」


「うっ。……まあ? どうせ君島は一人で回ろうと思ってたんだろうし? それなら着いていこうかな~って」


「それで迷惑じゃないならいいけど……。木庭とか新城とも予定があったりしないの?」


「……ない」

 小さく低い声で言った。


「あっ……いやごめ――」


「優哉は二組の裏方とバスケ部! 新城くんは劇の出演とテニス部! 全っ然予定が合わなかったの!」


「そう……なんだ」

 それを聴くと確かに忙しそうだけど、本当は譲り合った結果だったりして……。


「だからほら、行くよ!」

 そう怒鳴って勝手に行ってしまった。


「あれ? 着いていくんじゃないの!?」



 二組の前を通り過ぎて、まずは三組に入った。

 巨大ピンボールの宣伝は初期に撮影だったから、その全貌を全く知らなかったけど……


 本当に大きかった。

 片側の出入口から伸びる空間が確保されているだけ。後は教室全体をぎりぎりまで埋め尽くすように造られていた・・・・・・。木造であることや、その塗装も相まってどこか古めかしい見た目だ。


「おや。いらっしゃい、二人とも」

 僕らは油井に出迎えられた。


「観覧は自由、遊ぶなら並んでもらうよ」


「丁度やる人がいるみたいだし、まずは見るよ」


 この学校の三年生と思しき男性が、両手でプランジャーを引いてバレーボールを打ち出した。

 ボールは円弧を描いている頂点で速度が下がり、フリップの方へと転がり落ちてきた。その間にプレイヤーはプランジャーから歯車の付いたグリップへと持ち変える。

 フリップは機敏に動いた。カサカサとした木同士の摩擦音も微かに聞こえるけど、ボールが当たる音の方が大きい。


 校内にある大きいボールの中でも比較的軽い物を使って負荷を減らし、全ての部品はやすりがけと塗装でできる限り滑らかにしているそうだ。


 草壁が油井に訊いた。

「柱とか矢印の所で点が増えるの?」


「その通り」


「どうやって数えてるの?」


「中の人たちがそれぞれカウンターで」


「……冗談?」


 ベキッ


 そんな危うい音に不意を突かれた。

 矢印の所は細い通路状になっていたのだけど、そのガイドが曲がっていた。

 結構衝撃的だったので……当人でもないのに落ち込んだ。草壁も落ち込んでいた。


「すみません!」


「いえ、気にせず!」


 そう油井は言うけど、転がってきたボールは左右どちらのフリップも届かない所を通過してゲームオーバーとなった。

 それから間もなくしてピンボールの盤面の向こうから物音が聞こえ……。

 盤の奥の方に点が表示された。


「本当に裏にいたんだ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YouTubeにて「僕(じゃない人)が幸せにします。」制作裏話を投稿しております。 もしよろしければこちらもご覧ください!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ