3-21「二年四組ポーカー最強決定戦」後編 ☆
十二戦中の六戦が終了し、休憩も兼ねて中間結果がプレイヤーに発表された。
三位・四位は総当たりの結果と同じ順位。そして二位が、冴羅さん。一位は宮国。その点差は一。
ここからだったと思う、冴羅さんと宮国が少しずつ変わってきたのは。まず欺こうとする発言が増えた。主にお互いを。他のプレイヤーの発言もあってのことだけど、冴羅さんより有利な手札を宮国に棄てさせるまでに至ったこともあった。
まるで現在の天候のように暗雲が立ち込める中で訪れた、第十戦目。
宮国は手札を入れ替え……フルハウスを完成させた。僕は隣の人の手札とともに宮国の横顔を撮った。あくまで平時と変わらずにいた。
「冴羅さんはどんな様子かな」
先に宮国が動いた。
「ええ。調子が良いわ」
訊かれた冴羅さんはほくそ笑んだ。
「フルハウスよ」
あれ? 言っちゃうの?
「奇遇だね。私もだ」
え!? そっちも!?
このゲームは役の強さが一番なら二点得ることができ、以降一点、マイナス一点、マイナス二点。棄権は零点で、棄権が一人出れば二番が一点、三番がマイナス二点。二人出れば、二番がマイナス二点。
つまり、冴羅さんと宮国以外に抜けられると強い役にも関わらず持ち点が引かれる可能性が出る。
この二人がそれを理解していないはずがない。わざとやっているのだろうか? 決着させるため? それはこの“勝負自体を”? それとも“お互いの関係を”?
「本当かしら? 全く何も揃っていないことに焦って騙し仰せるつもりではないの?」
確かに三人棄権なら自分を含めた全員の加点を零にすることができる。
「強がらない方が良い。私の手札を弱いと決めつけて二人を棄権から引き留めたいようにしか見えない」
「私が恐れをなしていると? あなたがKを三枚揃えたフルハウス以上とは思えないけれど」
「まさにその組み合わせだが?」
自分の手札について伝え終わり、親から順に勝負への参加と棄権を告げ……冴羅さんと宮国が残った。
そして、互いに手札を明かした。
本当にどちらもフルハウス。その上で嘘をついていたのは……。
宮国だった。
冴羅さんはQを三枚揃えたフルハウス。宮国はJを三枚揃えていた。
実際僕は実況の声で大分前からこの結果は分かっていたけど、この一連の流れには全員が驚かされた。
◇
最終結果はこのマイナス二点が響いて宮国は二位。冴羅さんが二年四組ポーカー最強の座に着くのだった。
終わってから宮国から一言言われた。
「あの言い合いを使わないということには……」
「なりません」
この勝負の様子を見た幸恵さんの反応。
「二人がすごく可愛かったよ!」




