3-12助言に感謝!
「君島くん! ありがとうな!」
撮影を土曜に控えた連休明けの朝だった。
いつもの如く別府がいきなり話し始めた。
「えっと、何が?」
「冴羅と付き合えることになった」
今到着したらしい隣から息を飲む音が聞こえた。
「……今なんて?」
「冴羅と付き合えることになった」
ゆっくりと言われた。
……いや、夏休み前から数えて三度目の正直だ!
「どこかに行くの?」
「おお……。そうだな。そういうことするよな! どこに行くか。どこが良いと思う?」
やっぱりそういうことじゃなかったよ。
「……話し合ってください」
「それもそうだ。ありがとう! これからもよろしくな!」
「あ……うん」
いつもの如く別府は一方的に話を終わらせて去っていった。
それからまずは頭の中が真っ白になった。
それで思い出したのはつい最近似たような状態になったこと。深町姉妹に宮国のことを話した後のことだ。なに無関係のことを……いや、それがきっかけになって、例えば……本気で距離を取ろうとしているのかもしれない。いやそもそも本当に受け入れたんだろうか? 何か勘違いでも――
僕の腕が突然掴まれた。
その力が意外にも強く、掴んだ人物を目では見ていたのに誰が掴んだのか理解できなかった。すごい形相だったから余計だった。
「草壁……さん?」
思わずかしこまった。
「なんで当たり前だけど難しくて大事なことを伝えるだけなの……?」
「草壁に言われると説得力がすごい」
「いいの? 君島は」
「……確かに信じがたいけど、冴羅さんが良いなら」
「それはそうだけど。なんて言うか……」
掴まれたままの腕に更に力が加わった。痛い……。
遂には。
「えっ!?」
僕は斜め上に引っ張られて立たされた。飲食店で働くって力付くんだな~。
「な、何?」
「聞きに行く」
「誰に?」
「副会長に」
「分かったよ……。僕も行くからとりあえず手を離してもらえます?」
草壁の表情が少し落ち着いた。
草壁が自身の右手を見た。
慌てて離してくれた。
「……ごめん」
◇
探しに教室を出ると、早速見つけた。
と思ったら凛紗さんだった。
「凛紗」
「ひゃ、ひぃっ!」
最初の反応はいつもの驚き方だった。そのすぐ後の反応がいつもの驚き方ではなかった。
「副会長知らない?」
草壁は低い声で凄んだ。
「あ、あっ……」
凛紗さんは青ざめていた。
「二人とも落ち着いて。草壁、顔恐いよ。凛紗さん、深呼吸」
草壁から恐い顔を向けられた。凛紗さんは深呼吸してくれた。
「ごめんなさい。映画なら大丈夫ですけど現実のものは駄目で……」
「あ、いや、こっちこそごめん」
「今のはホラーと言うより任侠ものだったけどね」
もう一度恐い顔を向けられた。
「ん? 凛紗、ホラー好きってこと?」
凛紗さんにはにこやかな顔を向けてくれた。
「はい!」
「すご。憧れるんだよね~」
「ありがとうございます……! それで、冴羅ちゃんですよね? 今なら外にいると思いますよ」
「ほんと? ありがとう!」




