3-10撮影方法も相手も
文化祭コンセプトムービーの撮影の目処が立ってきた。台本が上がり、詳細が詰められ、撮影日程が決まっていた。
それを受けて、生徒会・文化祭実行委員会共同のものとはまた別に、映像部としての打ち合わせも行なっていた。
「やっぱり並走は危ないかな。揺れちゃうし」
「……映像が、だよね」
「他に何かあった?」
「いえ! 並走を一瞬写すだけにすれば見ている人に不快感を与えず躍動感を表現できると思いますよ! ね!?」
「う~ん。それだと遠景も必要になるけど、二度走らせることになっちゃうから割りに合わないと思って」
「確かに。もし同時に並走と遠景を撮ったとしても写り混んだ撮影者を消す技術もないし。それなら定点のすぐ近くを走ってもらうのでいいですね」
「あ、その方法忘れかけてた。ありがとう奏向くん!」
すでに思い付いてはいたところも、なぜか忘れているところも、幸恵さんらしい。
冴羅さんの案の動画で集める物は、既にサイトで公開されているポスターを六つに分けた物となった。制作者は快諾どころか分割版も制作してくれた。気前が良いけど……それが油井だと思うと妙に納得してしまう。
その小道具を確認してほしいと言われていたので、映像部一行は撮影方法の話を切り上げて美術室に向かった。
その途中、後輩たちはなぜかこそこそしていた。
「今今!」
振り返った僕の前に背中を押されて飯塚さんが出た。
「君島先輩」
「はい」
僕たちは立ち止まり、しばし沈黙。幸恵さんは先に行っていた。
なんかこれ……。
「幸恵先輩、美術部の先輩と良い感じですけどそれで良いんですか」
告白のわけないよね。
「君島先輩は諦めているようなことを言っていましたけど本当に良いんですか? 幸恵先輩も幸恵先輩です。もしかすると私たちじゃ考えも付かないこと思っているかもですけど、前までが嘘とも思えません」
いつかの僕の急場凌ぎからずっとその疑問を抱えさせていたのだろうか。
でも、今望まれているようなことを僕は望まない。
「本当に幸恵さんが僕に好意があるなら嬉しい。けど、幸恵さんがより良いと思う方を選んでほしい。最近の幸恵さんが望んで前までとは違う感じになっているなら、それで良いと思っているよ」
「……分かりました」
「どうかした?」
後ろから幸恵さんの声がした。
驚き過ぎてすぐに声を出せなかったけど、なんとか平常通りに振る舞えたと思う。
「大丈夫。油井のこと話してた」
「そうなんだ。みんなは初めて会うもんね。じゃあ私も何か話しておこうかな。そうだね……あ、油井くんは専ら紅茶だよ」
「どこかの警部?」




