3-8向ける人物は誰? ☆
まずは別府を注視する必要がありそうだ。
「よう! 奢ってくれ!」
注視……。
「じゃあ貸すのは? いや貸してくれ!」
注視…………。
「駄目だ……! 十一は困るッ……!」
注視………………。
必要かな? やかましすぎない? あとなんでそんな金に困ってるの?
よく考えれば別府は他人を尾行とかできそうな性分ではなかった。なんで同じ組なのに僕はそこに思い至らなかったんだろう……。いや、そう思わせて実は物陰に隠れることが得意という可能性もあるし。
でも可能性を言い出したら多くの人が疑わしいし、なんなら学内に限らないかもしれない。
とりあえず姉妹二人に今日はどうだったか訊いてみよう。
>今日も視線を感じたわ
>見られていたと思います
昼休みとかは?
>その時間ではなかったわね
>私はその時間に見られていたと思います
その時間は別府にアリバイがあった。本当に別府ではない可能性が高そうだ。
>そうなの?
>私は五組を見たけれど気付かなかったわ
更に次の日。
「君島」
僕は宮国に呼び止められた。
僕は別府の次に宮国が怪しいと踏んでいた。何か勘づかれた?
返答すると「他人に聞かれたくない。場所を移しても良いか?」と言われた。
「冴羅と凛紗なんだが、最近なぜかお互いを遠目に見ているらしい。君島は何か知らないか」
え? ああ、そういうこと。……いや、納得するにはまだ早い。その話はつまり僕の疑い通り盗み見ていたのは宮国とも取れる。
「どうして僕にそのことを?」
「それは……よく冴羅や凛紗と話しているところを見るから」
「よく見てるの?」
「そう……じゃなくて! ただ見かけただけだって!」
本性が出るほど焦るとは怪しい。
「今、二人とも誰かの気配感じるって不安がっているんだよね」
「……僕を疑っているわけですか」
「盗み見るようなことをした覚えは?」
「そこまではしてないよ」
「『そこまでは』?」
「……ちょっと見るぐらいは許して? でも、二人が不快な思いをしたなら謝るし、今後不用意に見たりもしないようにする」
「分かった。二人に訊いてみる」
「お願いします」
宮国は頭を下げた後、少し考えてから口を開いた。
「……それで、もし僕じゃなければ」
「お互いが正体の可能性が高いってことになるかな」
「そっか。……あの二人らしいよ」
宮国は笑って言った。その笑いはずいぶん昔を懐かしむかのようだった。




