3-4相談というのは
「あの、それでご相談は?」
「あ、ごめんなさい! 相談というのは冴羅ちゃんのことでして。実は最近、ぼーっとしていることが多いんです」
「そうなんだ。……なんで僕に相談したの?」
「その、文化祭の関係で近くにいることも多いかと思いまして」
「宮国じゃ駄目なの?」
「だ、駄目です」
「じゃあ幸恵さんは?」
「あ……うぅ」
なんだろう? その二人じゃ駄目な理由か僕じゃなければならない理由があるのか。
「最近……例えば夏休みの終わりに何かあったの?」
「……はい。お祭りの後、君島さんに相談しましたけど、それからのことです」
草壁・木庭と幸恵さん・油井が一緒にいる様子を見たいという相談に対して、僕は一人からは難色を示されるかもしれないけど、結果としてはみんな受け入れてくれると伝えていた。それは全くその通りだったらしい。
「ご一緒したのは少しだけですけど、私たち姉妹よりお互いを大切にしていたことが分かりました」
そして、そんな姉妹は別々になって冷静考えた後、話し合って結論を出した。
その結論はどうも言葉にしづらいことのようで、凛紗さんは口を噤んでしまった。
「大丈夫? 無理に話さなくても」
「いえ! ご迷惑をおかけした君島さんに伝えるべきことなんです。遅くなってしまったのは宮国さんにとっては言いふらすようで、どう伝えれば良いのか迷っていたからでして。ただどうしても今日の文化祭の会議の前に伝えたいんです」
「分かった。待つよ」
僕に言うと同時に自ら再確認することにもなったのか、軽く頷いて続きを話してくれた。
「私たち、宮国さんから距離を置くことにしたんです」
僕は何も言わなかった。
何かを言う気になれなかった。
そこに僕の言葉を入れると何かを変えてしまうように思えた。
何より、凛紗さんは納得していた。
「宮国さんにも君島さんにも申し訳ないことをしてしまいました。それでも、何を言っても言い訳にしかなりませんけど、もしあのままなら誰にも良いことがなかったと思っています」
「それで良いなら、僕もそれが良いと思う。……けど、そうじゃないんだね?」
「はい。正直これしか原因と思えるようなことが無いんです……。ただ、宮国さんの名前まで出して直接訊くと『そうかもしれないわね』とかすごく曖昧で」
その様子を聴くに、凛紗さんの見立て通りであることは確からしい。でもそれと併せて、自覚がないのか、隠したいのか、認めたくないのか……。
「うん、分かったよ。確かにこれは宮国には頼みづらいね。でも幸恵さんには話してもいいような気がするけど?」
「それは……冴羅ちゃんが幸恵さんに対抗しているように私には見えるからです。もしそうならあまり頼らない方が良いのではないかと……」
「そうなの? でも凛紗さんが言うならそうなのか」
「いえいえ! ぼーっとしていること含めて思い過ごしかもしれないですから!」
「事情は分かったよ。まずは様子を見てみる」
「はい! お願いします!」
凛紗さんは勢いよく頭を下げた。
「ところでなんだけど、一つ訊いていい?」
「なんでしょうか?」
「凛紗さんは宮国と距離を置いてみて、今のところどう?」
「そうですね……。素敵な男性だとは今でも思っています。でも、それより今は冴羅ちゃんといることの方が楽しいです」
「冴羅さんがぼーっとしている理由、凛紗さんと久し振りに仲良くできて浮かれているからだったりして」
「ひぇ!? そ、それなら、嬉しい、ですけど……」
凛紗さんすごくにやにやするじゃないですか。
「本当に修復したんだ。仲良さそうで良かったよ」
「はい。君島さんのおかげです。本当にありがとうございます」
凛紗さんはお辞儀をして、僕に微笑んだ。




