2-54帰路:終わりに向かって
「そろそろ行こうか」
卯月さんから声が掛かった。ちなみに帰ると同義で「行く」を使うのは方言らしい。
帰りは疲れているのか車内の言葉数は少なくちらほら寝ていた。さすがに卯月さんは大丈夫だ。
「良い夏休みだね」
卯月さんが僕に言うとでもなく呟いた。
「はい」
始まる前はどうなることかと思っていたけど……今でもどうなるか分からないけど、楽しかったことは確かだ。
「本当想い描いていた通りだったよ。しかもそれを間近で見られるなんて思ってなかったな」
今日はあまり卯月さんと話さなかったけど、遠くから見られていたらしい。
僕が大切だと思える人といること。誰かといるからこそ分かることを僕が知ること。それが卯月さんの理想だったはず。
それが誰で、場合によっては何人で、どれだけ理想に近かったのか。
今の僕には知る気にもなれない。
「その……私が言うのもなんだけど、頑張ってね」
割とその物言いさっきの疑問の答えになっている気がする……。
まあ、頑張らなければならないのは確かだ。
頑張って、十日後の祭りの日、僕は冴羅さんと凛紗さんとの関係、そして二人の計画に終わりを迎えさせるんだ。
深町姉妹の二人は今日楽しんだだろうか。気が気ではなかったかもしれない。そう思いながら右後ろを見て、胸が締め付けられた。
その二人が肩を寄せ合って眠っていた。
可愛らしさや微笑ましさよりも、それが本来の双子なのだと思わされて切なさを感じた。
でも、安心もした。
きっと戻れる。冴羅さんと凛紗さんなら。
◇
その夜、一枚の写真が送られた。
櫓からだ。
「……なんで僕に」
思わず声を出したそれは、水着の自撮り画像だった。
>いいだろう? 直接見たかっただろう?
水着は黒のオフショルダー。痩せすぎず太すぎず、結構良い体型で肌も綺麗だった。美人だ。良い性格していなかったら男女問わず人気だったんじゃないかな。
と、ちゃんと見た中で、その背景が気付いた。
これ……僕だよね? え? あの場にいたってこと? もしかして睨まれた気がしたのは櫓の? もしかして入館料を二人分請求しておきながら一人分で退き下がったのは……!
僕が返信できずにいたところ、また受信した。
>楽しかったよ。
何が!?




