第4話
「ねえねえ、庄司くんと水瀬さんって、やっぱり付き合ってるのかな?」
「どうなんだろう・・・でもお似合いだよねー、知的な美男美女って感じ」
「わかるなあ」
纏と瞳が立ち去った教室では、その様子を見ていた女子のグループが騒がしそうにしている。まあ、纏の数少ない友人である俺、相馬孝からしても、纏と水瀬さんはお似合いだと思う。
俺の隣で、ねめつけるようにガンを飛ばす少女の存在がなければ。
「ねえ孝、まといっち帰っちゃったんだけど」
「だな」
「瞳とデートですって」
「・・・まあ本人は否定してたけどな」
「あざといのよ!瞳めえ・・・あいついっつもいっつも・・・」
やってられるか!と言った感じに荒れているのは、俺の幼馴染である井上美織。まあ纏と俺との3人で悪友、という感じで連んでいるのだが、この幼馴染どのは、かなり纏に熱を上げているのだ。
自分と恋人になる幼馴染はいなかったよ・・・。
「そんなに気になるなら告白して付き合っちゃえばいいじゃねえか」
「それはない。振られたら立ち直れない」
それは、ない。と力無く繰り返す様子を見て、思わず力が抜けてしまう。俺も、美織も、まあぼんやりとだが、纏が日々早く家に帰る理由は聞いている。親はどうしてるとか、小学生がどれくらい手がかかるとか、気になることも多いのだが、あいつの情熱の8割くらいは弟妹に向けられていることもわかっている。
だからこそ、自分の容姿に自信のある活発美少女(自称)の井上美織をしても、告白をして纏を困らせたくはない、という気持ちがあるのだろう。現に、先ほど噂をしていた女子生徒たちに対して、「すぐ色恋に結びつけるんじゃない!」と(小声で)憤慨していた。小心者だ・・・。
まあ、こいつの場合、纏にアプローチできないのも、本音からビビっているだけという可能性も捨てきれないのだが・・・。
「・・・俺らも帰るか」
あいつが珍しく時間がありそうだと思って、誘って3人で帰ろうかと思ったのだが、当てが外れてしまった。
「かえりますかー」
美織の返事を受けて、歩き出しながら、俺は、でもよ、と続ける。
「正直なところ、水瀬さんは強敵だと思うぞ」
「は!?わかってるし、美織ちゃんに死角なしだし!」
「早速今日遅れをとったじゃねえか」
「・・・それはさあ!」
不意打ちはノーカン!となんとも情けない幼馴染殿は置いておいて、まあ実際のところそうだと思う。趣味も合うみたいだし、こんなガサツな美織より、よっぽどいいのではないだろうか。あと、美織は自分はスタイル完璧と思っているようだが、残念ながら容姿の面でも水瀬さんの方が上だと思う。
「もう!孝、帰りにスタバ奢ってね!美織ちゃんは悲しい!」
「・・・はいよ」
俺は、やっぱり幼馴染に惚れる・惚れられるのは物語の中だけだなあ、という実感と共に、美織に引き摺られながら駅前通りを目指すのだった。
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この二人は、纏の良き理解者です。