第22話
「なあ、それで、いいのか?なんつーか、諦めちまって」
『うん・・・頑張って、時間をかけて、本当の友達としてやっていけるように、向き直ってみるよ』
それが、まといっちと一番仲良くなれると思うから。そんなふうに心の内を曝け出した、電話越しの幼馴染の声は涙で湿っていて、俺の心まで悲鳴をあげそうになる。
『もちろん、恋人としてって言うのも、魅力的だけど。あたしはやっぱりまといっちが好きだから。好きな人とは、一番仲良くなりたいし』
自分に向けられることのない、想い人からの、異性に対する好意。その現実に挫けそうになりながら。それでも、想い人との一番いい関係を探ろうとする。そうせずにはいられない、一途な想い。
けっして、纏に伝えることはないのだろう。それが、重荷になることを知っているから。ただでさえ多くを抱えているあいつの、邪魔だけはしないように。
自分にできる、自分なりのやり方で、親愛を注ぐ。一人の、気の置けない友人として。
でも、そんなのって。
「ずっと好きだって言ってたじゃねえか。水瀬より、ずっと前から言ってたじゃねえか・・・!」
『好きだよ。多分、ずっと好き。だから、まといっちが一番幸せになれる方法が、そこにあるなら。あたしがそうしたいだけ』
そう断言する幼馴染の決意に、返す言葉は、心の辞書のどこを探しても見つけられなくて。
『だからさ。孝が泣かないでよ。失恋したのはあたしなんだから』
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『あたしは、多分まといっちのことはずっと好き。これから、ずっと』
そう、泣き笑いでこぼした声も。
『あたしが言うのもなんだけどさ。孝も、いい恋しなよ』
さっぱりした声で、諭すように語った声も。
どれもこれもが、大切な幼馴染の、大好きな声で。電話を切ったとしても、俺の心を掴んで離さない。
「・・・ていうか、最後のは、やっぱ俺の気持ちはバレてたんだなあ」
あの察しの良い幼馴染との付き合いは、もう10年近くになる。
そして、それと同じくらいの時間、ひっそりと恋心を育ててきた。
電話口で思わず泣いてしまったのは、誰よりも、美織に幸せを掴んで欲しかったから。水瀬だって、纏だって、友達だけど。自分の密かな恋心は置いておいて、美織が望む未来が来ればいいと、そう願っていた。
叶わない恋だと知りつつ、身を引くことを決意する。なんだかんだ、美織の決断は、俺自身が過去になしたものと全く同じで。
「惚れた弱みだよなあ・・・」
そんな些細な共通点すら嬉しくて。
俺も俺で、あの幼馴染のことを、多分、ずっと、好きなままなんだろう。
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『相馬孝:それはそうとしてテメーは許さねえ』
『まとい:いきなりすぎない!?』
『相馬孝:許すわけにはいかぬ・・・そう、愛ゆえに』
『まとい:美織かあ・・・』
『相馬孝:お前その察しの良さをもっと周りに役立てろよ』
『相馬孝:主に俺が可哀想だろ。てゆうかお前どんな情緒でこのやり取りしてんだ』
『まとい:美織は僕の鉄壁の防御を踏み越えてこようとはしないからね。まあ水瀬さんに防御破られそうだけど』
『相馬孝:鉄壁(笑)』
『まとい:しばくぞおまえ』
『相馬孝:まあそれは冗談として。もう良い加減付き合えよ。そして俺たち周囲の精神安定に貢献しろ』
『相馬孝:さもないと向井さんが良い匂いするとか言ってたことを水瀬にばらす』
『まとい:鬼か貴様』
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