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第21話

私は激怒していた。


何がって、あの男である。


ちょっと可愛い後輩にボディータッチされたくらいで、あっさりと鼻の下を伸ばしている、あの男である。


「美織!どう思う!庄司くん、だらしなくない!!」


「・・・瞳、ちょっと声抑えて・・・ここファミレスだから・・・」


私は、あの男が瑞穂ちゃんにメッセージIDを教えたことを白状した後、鬱憤を発散しきれずに、美織を捕まえて、近くのバイキング形式のファミレスで管を巻いていたのである。





ーーーーー





いや、もうドン引きである。何がって、私の前でまといっちに対する愚痴を延々と口にしているこの親友のような何かが、である。


いや、わかるよ?確かに、まといっちはちょっと無神経なところがある。というか、普段はすごく気遣いができるくせに、急に雑になる瞬間がある。


相手からの好意に気づいていても、これを口にしたら面白いんじゃないか?っていう思いつきだけで、場をまぜっかえしちゃうタイプだ。


でも。


でも、である。


あたしは、瞳とは親友のつもりだ。高校に入ってからの付き合いではあるけど、いろんなことを相談してきたし、何かをやる時にはお互いに1番に誘い合った。


確かに、あたしがまといっちを好きになったことを話したことはないけど、孝でさえ気づいているあたしの気持ちに、全く気づかず、あまつさえ愚痴をを延々と繰り出すのは親友としてどうなのだろうか。




「・・・はあ、私、どうしてあの男のことが好きなのかしら。。。ねえ、美織、聞いてる・・・?・・・・・・・は!?え、私、好きって言った?え、私、そういうこと・・・?」




・・・それも、言うに事欠いて、本人は自分の相手への好意すら今(それもなぜか唐突に)自覚する始末。


そしてそれに付き合っている自分は、バイキングの時間を半分以上消費しつつも、おかわりをとりにも行けていない。


「っ〜〜!ああもう!うるさいのよ、瞳は!あたしデザートとってくる!やけ食いしてやる!」


「・・・!?ど、どうしたの美織、急に」


「うるさい、あたしは今からケーキ全種制覇しなきゃ行けないの。あんたの惚気なんか聞いてらんないわよ」


慌ててお皿を持って追いかけてくる瞳を振り返ることもせず、あたしはミルフィーユやチョコレートケーキを次々にお皿に盛り付けていく。




・・・孝にも散々言われたことだが、正直、まといっちは瞳の方が好きなんだろうな、っていうのもわかってる。あたしのことも、大切にしてくれてるけど。それは、多分、女友達としての距離感であって、恋人としての異性という距離感からは、近いようで、遠い。


多分、彼は、自分の家庭のことが大変だから、一歩を踏み出せないだけ。


でも、だからと言って、自分のせっかく育ててきた恋心を、すぐに忘れて、親友を応援してやれるほど、あたしは人間できてない。




今日は、いっぱい甘いものを食べて、家に帰ろう。そして、孝にちょっとだけ電話をして、それが終わったら、ちょっとだけ泣こう。




そしたら、あたしは、明日からまた、瞳の親友でいられるから。






ーーーーー






「(ちょっと、元気なかったな・・・)」


ファミレスから出て、帰り道で美織と別れた後。少し様子のおかしかった親友のことを思う。


まあ、私が自分の恋の相談をしすぎて、辟易させてしまったのかもしれないが・・・。


でも、自分でも意外だった。庄司くんのことを、好きだ、と言葉にした瞬間。なんだかそれが自然と腑に落ちたのだ。


あるべきものが、あるべきところに収まったような、そんな安心感。


そんな私を見て、美織は、


「気づくまで結構時間かかったね」


なんて苦笑していたけれど。美織は鋭いから、私の気持ちなんて、私より随分前に気づいていたのだろう。周囲から見たら、もしかしたらバレバレだったのかも、と思うと少し恥ずかしい。


とはいえ、美織は格別だ。彼女は、すごく良く気がつくし、いい子だ。高校になってできた友達で、1番の親友だと、胸を張って言える。


私はあの子ほど気がつくわけじゃないから。やっぱり、たまにわからないことだってあるけど。それは他人なんだから仕方がないし、これから時間をかけてわかってあげられればと思う。




それにしても。




「・・・自分に向けられてる気持ちくらい、美織ならわかりそうなものなんだけどなあ・・・」


私は、そう独り言を呟きながら、兼ねてから恋の相談をされていた相手にメッセージを送る。





『水瀬:美織ちゃん、元気ないみたい。なぐさめてあげてね』


『相馬孝:りょうかい!』

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