第19話
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「と、いうわけで!今日からうちの部員になる、庄司纏くんです、はい、みんな拍手!」
部長であるところ永原圭吾先輩の号令で、文芸部の部室からまばらな拍手が起こる。文芸部の部員は各学年数人程度で、さほど多くない上、出席率もまちまちということで、とりあえず今日集まれる人数だけでも、ということで顔合わせを行なっている。
「水瀬さんのご好意で、誘ってもらいました。あまり長時間の活動はできないんですけど、一緒に色々できたら嬉しいです。よろしくお願いします」
僕がそう挨拶をすると、部員からの質問を募ろうと、部長が司会を続ける。なお、部長と副部長には僕の事情をある程度説明しているため、基本的には一般部員向けの質疑応答になる。
「じゃあ、ちょっと聞きたいんだけど。あ、俺は同じ2年の土屋ね。文芸って言っても、色々あると思うんだけど、何をメインでやる予定?」
そう質問をくれた土屋は、少し丸っこいメガネと、カールした癖っ毛が特徴的な、小柄な男子だった。あまり見た記憶はないので、近くのクラスだったことはないだろう。
「うーん、一応、出版社でバイトしてるから、そっちの方をメインにしつつ、何か物語が書けたらいいな、とは思ってるよ」
「出版社でバイトって、マジ?もしかしてプロの編集者の知り合いとかいる?」
「・・・ま、まあ。いつもお世話になってる人とか、いるし・・・」
文系男子的な見た目にそぐわない、機敏な反応を見せた土屋は、一人ですごい、すごいとテンションが上がっている。
「すみません、先輩、土屋さんが急に。土屋さん、漫画家目指してるんで、そういうのに興味あるんすよ」
「なるほどね。えっと、君は・・・?」
「あ、1年の向井瑞穂っす。普段は割と幽霊なんっすけど、たまに気が向くと瞳先輩に詩作とか習ってるっす」
軽く脱色したショートヘアに、派手と言うほどではないが、それとわかる程度の化粧。少し着崩した制服は、この学校では少数派なギャル系女子のものだ。ただ、彼女の場合、どこかしら漂う大人っぽさと、隅々までファッションとして行き届いています!という主張が、その姿を自然体なものにしていた。
「へえ。詩を書くんだ。すごいなあ、僕はちょっと気恥ずかしい感じがしちゃって、自分で作るのは苦手だなあ」
「まあ、男の子はそういう人も多いっすよね。特に先輩、物静か系イケメンだから、ギャップでかそうですし」
「・・・それ僕の見た目、関係あるか・・・?」
とはいえ、ちょっとギャルっぽい見た目の子が詩作を嗜むというのは、こういう判別はいけないと解りつつ、少し意外だった。
僕?ギャル系ファッションは舜や玲の教育に悪いからノーサンキューだけど、存在としては超好みです。
「よかったら、今度作品見せてくれないかな、君の作品を読んでみたくなった」
「え・・・!いや、いいっすけど、そう言われるとちょっと照れるっすね・・・自分で言うのもアレなんっすけど、結構乙女心全開というか・・・」
「ははは、俄然読みたくなった」
「あー!もうー!」
そしてこの子はなかなか、からかいがいのある後輩でもあるようだ。
「ちょっと瞳先輩もなんか言ってくださいよ!先輩が連れてきたんじゃないですか・・・!」
「えー、まあ、こんなこと言ってるけど、庄司くんの文章も大概ポエミィだよ。すっごく甘い」
「え!そうなんすか?」
・・・外野で我関せずの態度をとっていると思った水瀬さんだったが、いきなりぶっ込んできた。
「(・・・ちょっとお嬢さん、それは言わない約束じゃ・・・)」
「(ずいぶん瑞穂ちゃんと仲良さそうだし?あーゆうこ好きなんだ。庄司くんのいいところ知ってもらったほうがいいんじゃない?)」
「(嫉妬かな)」
「(・・・は!?そうだったらどうしたってのよ)」
「(・・・おおう・・・いつになく当たりが強いね・・・)」
「(嫉妬してますから)」
「・・・めんどくせえ(めんどくせえ)」
「おっきな声で言わなくて良くない!?」
まあ水瀬さんがからかい甲斐があるのはいつものことだけど、ちょっと意外だった。まあ、彼女のことは普通に好きなので、ちょっと嫉妬してもらえて嬉しい気持ちもあるのだが。
「何二人でコソコソ話してるんすか!庄司先輩の文章、いつ読んだんですか?」
「庄司くんのはねえ、公開されてるの」
「・・・!?」
依然としてご機嫌斜めな水瀬さんは、隠すつもりもないようで、部室のパソコンで僕の所属する出版社のサイトを開き始めてしまった。
結局、なんやかんやで、僕がレビューを連載していることも、編集の下働きのバイトをしていることも、その日集まった部員にはバレることになった。
それはいいのだが、本人がいる前でレビューを朗読するのはやめてほしい。
特に土屋、てめーはダメだ。
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