第18話
「どうしたの、玲ちゃん」
小学生の力は意外と強くって、変に引っかかってしまわないように注意しながら、ゆっくりと中腰になり、彼女と目線を合わせる。
「・・・髪の毛、教えてほしい」
私と玲ちゃんは、お菓子作りの途中にお話ししたのだけど、彼女も女の子らしくおしゃれに興味があるようで、髪の毛いじりに興味を示していた。料理中だし、また後でね、と言ったけれど、楽しみにしてくれていたのだろう。
「そうだね、やってから行こうか。約束だったもんね」
「・・・やった!ありがとう、ひとみおねーちゃん」
なぜだかちょっと泣きそうになっている玲ちゃんを突き放すなんてできなくて、ついつい長居することを選択してしまう。
玲ちゃんは、嬉しそうに、後ろを編むのがうまくできないの!と私の手を引いて洗面所へ向かう。
そんな私たちを眺める、庄司くんの優しげな瞳が、やけに印象的だった。
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『ひとみおねーちゃんが、本当におねーちゃんだったらなあ・・・』
髪を結っている間に、口を尖らせてそんなことを呟いた玲ちゃんを思い出して、私は自室で思わず吹き出してしまった。
庄司くんの弟妹はどちらもすごくいい子だ。自分達の家庭が普通とは違うということをどこかで感じつつも、十分な愛を兄である庄司くんや、椎名先生から受けていることをちゃんと理解していて、やっぱりどこかで遠慮をしてしまうこともあるのだろう。思いがけず現れた私に、普段から気になっているだろう、おしゃれに関することを色々と聞いてきていた。
『水瀬:玲ちゃん可愛すぎない』
『まとい:やらんぞ』
『水瀬:いやあ、私の妹もさ、あんな可愛い時があったなあ、と』
『まとい:まあ玲は10年後も可愛いままだが』
『まとい:それは揺るぎない事実なのだが』
『まとい:おい』
『水瀬:いや、言葉尻とらえて、そんなガチにならないでよ・・・』
やっぱり、二人のことを話している時の庄司くんは少しばかり、おバカになる。一緒に過ごしていて、お兄ちゃんモードになっている時は、結構格好いいんと思うんだけど・・・。
『水瀬:そういえば、お夕飯ごちそうさまでした。毎日やっているだけあって、やっぱり料理上手だよね』
『まとい:僕の主夫力はカンストしている』
『水瀬:でも、今日ちょっとだけ二人の相手させてもらって思ったんだけど、ぶっちゃけ時間、大変じゃない?いくら好きなこととはいえ、勉強も家事もあって、バイトもあるよね・・・?』
『水瀬:あ、もちろん、二人が邪魔とかじゃなくって』
『まとい:わかってるよ、気にしてくれてありがとう』
『まとい:正直なところ、月末はきついかなあ・・・。バイトはほとんど在宅でできるんだけど、在宅だとなかなか時間が取れなくて』
『まとい:ついつい、二人のことを構っちゃうんだよね』
『水瀬:庄司くんらしいね』
本当に、いいお兄ちゃんだと思う。
でもだからこそ、彼の力になりたいと思った次の日に、思い立ったが吉日、と仲間に連絡を入れていたプランを披露する。
『水瀬:あのさ、よかったら、なんだけど』
『まとい:???』
『水瀬:文芸部、入らない?』
『水瀬:幽霊部員でも、加入だけしてくれたら、場所もパソコンも使えるよ』
『水瀬:部費はちょっとだけ徴収してるけど、普段の出席ノルマもないから、庄司くんの仕事場に使ってもらう、くらいの軽い気持ちで』
『まとい:・・・それはありがたいけど、周りの人がいい気はしないんじゃない?正直、参加時間もあんまり長居できないし・・・』
『水瀬:部長の許可は取ってあるんだよなぁ・・・』
『まとい:(鯉が目を見開いているスタンプ)』
・・・なんだか、初めて庄司くんを驚かせることができたかもしれない。
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