第17話
「れいちゃん、みさこちゃん、見てみて!パンダ!」
「ひよりちゃんすごーい!・・・れいちゃん、それはなに?」
「かめれおん!」
「・・・カメレオン?」
私と舜くんが冷蔵庫から戻るとすぐに、女の子たちは、すぐに元気を取り戻し、パンケーキやクレープをデコレーションし始めた。庄司くんが用意した各種のソースや、フルーツは大好評のようだ。
「ありがとう、水瀬さん。舜も助かったよ。好きなの取ってたべな」
「よっし、玲、メープルシロップちょうだい」
「舜のにも、かめれおん描いてあげる!」
「・・・いいよ、それヘビみたいだし・・・」
「あ!ひどい!」
兄妹の掛け合いに、ひよりちゃんとみさこちゃんが沸く。その様子を見ていた庄司くんも、嬉しそうに優しく微笑んでいて、その表情に思わず見惚れてしまい、私は顔の火照りを抑えるために手元の水を慌てて口に含んだ。
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「水瀬さん、今日は本当にありがとう」
はい、コーヒー、と言って差し出されたカップに口をつける。あの後、子供たちは、お持ち帰り用にと、シュークリームとパウンドケーキ作りに取り掛かり、つまみ食いしながらなんとかオーブンに生地を入れるところまで辿り着いた。
しかし、慣れない場所での慣れない作業に加えて、お腹いっぱい甘いものを食べたからか、眠くなってしまい、リビング脇の和室で4人揃って眠りこけている。舜くんは最後まで片付けを手伝おうとしていたが、船を漕ぎ始めたあたりで庄司くんによって強制退場させられていた。
「・・・みんな、ぐっすり寝てるね」
「本当に。最後のケーキ、試しに焼いた一本、美味しかったのか全部食べちゃったもんね。さすが水瀬さん」
「はは、照れるなあ」
最後のパウンドケーキは、庄司くんが苦戦していたスポンジを、難易度を下げつつ大人でも楽しめるように苦心した力作だ。私も、生地作りでちょっとだけお手伝いさせてもらった。
「僕があんまり料理得意じゃないからなあ・・・玲も舜も、なかなかこういう経験させてあげられなくて。だから、本当に、ありがとう」
「なんだか、庄司くんが素直に苦手だっていうの、珍しいね」
「いや、苦手ではない。得意でないだけ」
「やかましいわ」
「ふふ・・・まあ、自慢の兄にも休息は必要なのだよ」
「ま、そうよね。お疲れ様、お兄ちゃん」
「頭なでなでしてくれてもいいんだよ?」
「おまえ羞恥心はないのか」
ちょっと疲れていたみたいだけど、庄司くんはコーヒーを飲み終わる頃には、すっかりいつもの調子を取り戻していた。
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「おじゃましました!」
「ありがとうございました!」
「みさこちゃんも、ひよりちゃんも、またいつでも遊びにきてね」
「また学校でね!」
一眠りして元気を取り戻したのか、女の子たちは元気いっぱいだ。その手には、寝ている間に冷ます工程まで急いで済ませたお土産がある。舜くんは、まだ寝ているみたいだ。
「じゃあ、気をつけて帰ってね」
そう庄司くんに見送られて、二人はそれぞれの自宅に戻っていった。夕暮れ時ではあるが、まだ日は残っており、彼女たちだけで帰っても問題ないだろう。
今日のお菓子作りが、彼女たちにとって、楽しい思い出になってくれたら、私も休日に手伝いにきた甲斐があるというものだ。
「じゃあ、庄司くん、私もそろそろお暇するね」
そう伝えて、靴を履こうと身を屈めたその瞬間、私の腰に抱きつく、玲ちゃんの感触があった。
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