第10話
「み、水瀬さん、やっぱり、わかる・・・?」
私の指摘は、庄司くんも薄々勘づいていたのか、随分と芯にダメージを与えてしまったようだった。
「うん、ちょっと・・・子供だと甘い方が好きかもだけど、この、ついてるバラの香りがちょっと強いから、気になるかも。あと、ちょっとスポンジの食感がぐずぐずになっちゃうから・・・」
「くっ・・・殺せ・・・」
「私は鬼からオークにランクダウンしたのかな?」
お菓子作りは子供の頃から結構好きで、今でも時間を見つけてやっているから、ついつい細かい指摘をしてしまった。正直、小学生の女の子なら、わいわい皆んなでお菓子を焼くだけで満足してくれると思うのだが、彼の本気度は並大抵ではないので、やはり気になるようだ。
「水瀬さん、もしかしてお菓子作り、得意だったりする?」
「まあ、それなりに・・・」
「やっぱりそうか、そうだと思ったんだ!僕も頑張ったんだが、流石に一夜漬けては限界なのか・・・」
「一夜漬け!?」
「ああ、ケーキはいっつも買って済ませてたから。今週の月曜に急にこの話が出てな、明日玲が友達を連れてくるからって、昨日から本格的に焼き始めたんだ」
「・・・その練習期間でこれだけできたら、私のたつ瀬がないなあ・・・」
本当に、この男は、情熱とスペックの使い方が極端すぎる。
「しかし、今日は二人とも早く帰ってくるから、もう一度練習する時間は取れそうにない・・・能力の及ばない自分が憎い・・・」
「・・・纏、お前、落ち込み方が独特すぎんだよ・・・うちの幼馴染殿を見てみろよ」
「ごめん、まといっちのケーキ美味しすぎて馬鹿みたいに食べちゃった」
「美織の優しさがつらい・・・」
なんだかさらに落ち込んでしまった庄司くんを見て、「お世辞じゃないから!」と美織が慌てて励ましている。いや、でも女の子としては、美織の感想の方が正解だったかも・・・正直にダメ出ししちゃった・・・。
「かくなるうえは・・・水瀬さん、明日、付き合ってくれないか!」
「ぅえ・・・!?」
なにを言おうとしてるかはわかるけど!なんでこう言う時もわざと紛らわしい言い方するの!この男は!!
「・・・もう、じゃあ、明日お家にお邪魔するね。手助けできる範囲で、私も頑張るから」
「・・・水瀬さんが照れてくれないのは、それはそれでちょっと寂しいなあ」
「流石にワンパターンなのよ」
「でも顔赤くしててやっぱかわいい」
「・・・もー!!!」
せっかく頑張ったのに!
「まあでも、玲も、その友達も、多分僕だけじゃなくて綺麗なお姉さんが教えてくれた方が嬉しいとは思うし。僕だけじゃ力不足なところもあるから、よろしくね」
「・・・うん!」
・・・もう、ストレートな褒め言葉には触れないでおこう・・・。反応したら、そこからさらに揶揄われる気しかしない。
「流れるようなデートの約束・・・。孝、やっぱ瞳は強敵だわ」
「いや、お前じゃ勝てないだろどう考えても・・・完敗だよ」
「まだ負けてないもん・・・」
・・・纏もいいやつなんだが、もう少し、うちの幼馴染殿を気にしてあげてくれませんかね・・・まあ、全然自分からアプローチしてないから、仕方ないんだけどさ・・・。
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ちなみに作者はお菓子作りはしたことありません。




