『ダンジョン攻略』
今日は魔法学校の成績に関わる最初のイベント『ダンジョン攻略』が開催される日だ。
そして今は全生徒の目の前でアドルフ校長がこの『ダンジョン攻略』のルールの説明をしているところだ。
校長の説明を簡潔に纏めると
・全ての班がダンジョンに入れた事が確認出来たらスタートの合図がある。
・ダンジョンの内容は各班ごとに違うが難易度は殆ど変わらない。
・ダンジョン生成室で各班ごとにランダムに生成されたダンジョンに挑み一番奥に置かれている宝物を手に入れることが出来たら合格。
・宝物に触れたら自動的に取得扱いとなりダンジョンから戻って来れる。
・生成されたダンジョンの中には魔物も配置されているが、魔物からの攻撃をくらっても本当に怪我する事はない。しかし魔物からの攻撃を受けたとダンジョン生成室が判定したらダンジョンから追い出されてしまう。
・ダンジョンの中では班で纏まって行動しても一人一人が別々の行動を取っても問題ない。
・班のメンバーの全員がダンジョンから追い出されたら失格で、無事にダンジョンから宝物を持って帰って来る事が出来た班は、攻略にかかった時間等で採点される。
という事だ。
今もあの場所で、一人で待っているイリエステルの為にも、ヒサメの悲願の為にも、協力してくれるヘンリーとリリィに報いる為にも必ずこの行事で上位の成績を修めなければならない。
………と言ってもその殆どをララに頼らなければならないのだが。
『このララにお任せ下さいッス』
学校長の開始の合図と共に、自分達の班に振られた番号の順番に五、六人で構成された生徒の集団が次々とダンジョン生成室の中に入って行った。
「……ここからがジョン・ドゥ班にとっての正念場でござるな」
「はい!ジョンさんとヒサメさんが目的を達成できるように僕もジョン班の一員として頑張ります!」
「ええ、ジョン・ドゥ班の力を見せつけてやりますわ!」
「………」
……このジョン・ドゥ班という名称は俺が決めたわけでは無い。交流会の後、班の申請をしなければならなかったが、知らぬ間にみんなに名前を決められていた。
「次はジョン班の皆さん、ダンジョンの中に入って下さい」
どうやら俺達の番が来たようだ。
案内係の先生に従ってダンジョン生成室には足を踏み入れると直後に白い光に包まれ、目を開けた時には洞窟らしき場所に転移させられていた。
「ふむ、洞窟でござるか。アゾーケント殿が何故『ダンジョン攻略』だけ召喚術を禁止しなかったのかと疑問に思っていたのでござるが……これは……竜種を召喚出来るほどの空間が無いでござるな」
「えーっと……それじゃあどうします?校長先生はバラバラに行動してもいいって言ってましたけど……」
「とりあえずこのダンジョンの中に配置されている魔物がどの程度の強さなのかを確認した後でも遅くは無かろう。………と言っても学生向けに用意されたものでござるからな。そこまで強力な魔物が出てくるなんて事は無い筈でござる。魔物の強さの確認が出来たら二手に分かれたいと思っているでござるよ」
「もし二手に分かれるのならジョンさんと私、ヒサメさんとヘンリーさんになりますわね」
リリィがさも当然と言わんばかりに分かれた時の組み合わせを決めていた。
「………リリィ殿、その組み合わせには何か理由があるのでござるか?」
「もちろんございますわ!二人組を組むとなると極力お互いの不得意な分野を庇い合える組み合わせになるのが理想です。そうなってくるとまずは近距離戦闘が得意なヒサメさんと遠距離戦闘が得意なヘンリーさんが組むのは道理じゃ無いですか」
「確かに一理あるでござるな。しかしその理屈だとヘンリー殿とリリィ殿を入れ替えても問題ないのではござらんか?」
「まだ私の話は終わっておりませんわ。前にも話した事がありましたが私は氷魔法とは別にもう一つ、ナイトエイジ家に伝わる固有魔法を使う事が出来ますわ。『製剣魔法・円陣展開』!」
リリィが固有魔法らしきものの呪文を唱えると彼女の頭上に前方を向いた五本の剣が弧を描くように現れた。
「……これが我が家に伝わる『製剣魔法』のその一部ですわ」
そう言うと彼女は自らの頭上に等間隔に並んでいる剣のうちから一本を手に取り、自分が近接戦闘もこなせるという事を証明するかのように剣を構えた。
「私は近接での戦闘にも対応出来ます。それに私とジョンさんが組めばジョンさんに武器を供給する事も出来ますわ」
という事は俺自身もこの『ダンジョン攻略』に貢献出来るということだろうか。ララに頼りっぱなしなのは申し訳ないと思っていたのだ。是非リリィが魔法で造ったという剣を借り受けよう。
「……なるほど、しっかりとした理由があったのでござるな。拙者はてっきりジョン殿と拙者の目標を応援すると言ってくれていたリリィ殿が、拙者達の悲願に関わるこの重要な局面で自身の浮わついた感情を優先しているのでは無いかと疑ってしまったでござるよ。戦友を疑うような真似をしてすまなかったでござる」
ヒサメはその場で深く頭を下げた。
「………も、勿論この私がそのような浮わついた気持ちで挑む訳無いではございませんか!誤解です!………誤解ですけれど頭を上げてくださいまし」
『全ての生徒がダンジョンに入った事が確認出来ました。ではこれより第1091回『ダンジョン攻略』を開始致します』
リリィが必死でヒサメの頭を上げさせようとしているのを見守っているとダンジョン内にどこからともなく開始のアナウンスが流れた。
「始まったみたいですね」
「……では参ろうか」
「はい!パパッと魔物の強さの確認をして二手に分かれて探索しましょう!一位を取る為に!えぇ勿論それ以外に理由はありませんわ」
そしてとうとう『ダンジョン攻略』が始まった。
数時間後、
俺達はガチっていた。
「前方にトロルキングを確認しました!耐魔ローブと棍棒を装備しているみたいです!耐魔ローブのせいで魔法が効きづらいので僕は牽制に徹します!『フレイムボール』ッ!!次、ヒサメさん!!」
ヘンリーの炎魔法がトロルキングの眼前で爆発した。
「うむ、任されたでござる」
トロルキングがヘンリーの魔法で怯んでいる隙にヒサメの持つ魔力刀がボストロルの棍棒を持ち手の部分から切り落とした。
「武器は無力化したでござる!リリィ殿!」
「お任せください!『製剣魔法・円陣展開』……射出!!」
武器を失ったトロルキングに向かってリリィの造った無数の剣が発射された。
「………」
そして俺は出番が無くリリィの造ってくれた剣を片手に立ち尽くしていた。
仲間が有能すぎて俺の出番が無かった。三人が戦闘を繰り広げている最中に後ろから敵が来たら俺が対応しようと思ってはいるが、今のところそのような事態には遭遇してなかった。
無数の剣をその身体に受けたトロルキングは粒子となって消えていった。
「………皆さん残りの魔力は如何ですか?」
「……まだ大丈夫でござるが、この先がどれだけあるか分からぬ以上、極力温存していきたいでござる」
「なあ、何か変じゃないか?これって魔法学校の生徒向けに用意されたダンジョンだよな?俺達にはリリィが付いていてくれたからどうにかなっているが耐魔ローブなんて普通ならどうしようもないだろう。それにさっき戦っていたボストロルを始めとしてここまで戦ってきた魔物達はAランクの冒険者が複数人いてようやく戦いになるような強力なものばかりだ。絶対におかしい」
「……確かにおかしいでござるが、だからと言って立ち止まったりは出来ないでござるよ。この間にも他の班が拙者達より先に進んでいるのかもしれないでござるからな」
「でもジョンさんが強力な魔法を使えると分かって安心できた矢先に耐魔ローブを装備した敵が出て来始めるなんて……」
「まあ私としてはジョンさん……とヒサメさんのお役に立てる機会が出来て良かったとは思うのですが………極力連携をしっかり取って進んでいきましょう」
それから更に数時間後、俺達は数々の死闘を潜り抜け、ようやく宝物の前に辿り着いた。
「あれ………ですわよね、宝物というのは」
「何というか……宝物というには禍々しい色をしてますね」
「しかしこれで少なくとも失格にはならずに済むでござるよ。あとは拙者達が一番乗りであることを祈るばかりでござる」
ダンジョンの最奥、今までの狭き通路は何だったのかと思えるほどに大きく開けた空間の奥にある台座の上に禍々しい雰囲気を纏った短剣が刺さっていた。
もう残りの魔力も少なくなってきた中でようやく辿り着けたゴールに四人とも気が緩んでいた。
『アニキ!急いで通路の方に戻って下さい!!』
開けた場所を四人で進んでいると頭の中に急にララの警告の声が響いた。
「…………!みんな!通路の方へ戻れぇぇぇ!!!」
「「「!?」」」
しかし一歩遅かった。
四人の目の前に、巨大な死神のような見た目をしたアンデットの王と呼ばれる魔物、《リッチ》が姿を現した。
リッチとは、生前魔法使いだった者が何らかの方法でアンデットとして蘇り魔物となった存在だ。魔法耐性も耐魔ローブなんて比べ物にならないほどに高く、魔法使いのみで構成されたパーティではかなり相性の悪い敵だった。
リッチは四人が通路の方へ戻ろうとするよりも先に手に持った巨大な鎌で横ぶりに攻撃してきた。
「させないでござるッ!」
しかし、ヒサメが空高く飛び魔力刀でその迫り来る鎌の柄と刃の付け根の部分を切り落とし全滅の危機を免れた。
しかしリッチの攻撃はそれだけに終わらなかった。自身の持つ武器がただの棒切れになったと理解してすぐに新しい鎌を作り出しヒサメの背後から恐ろしい速さで振るってきた。
一本目の鎌を切り落とした後、未だ地面に着地出来ていないヒサメはどうやっても避けられそうに無かった。
「なッ!?」
直後金属同士がぶつかる甲高い音が鳴り響いた。
「………ジョン殿!?」
音の発生源に居たのは俺だった。
リリィに借りた剣で何とか防御に成功していた。
しかし胆力で完全に負けてしまい、背後にいたヒサメを巻き込んで吹き飛ばされた。
「「ぐあっ!」!」
「ジョンさんッ!!」
リリィの悲鳴が聴こえた。ヒサメと共に壁に叩きつけられ未だに体勢が立て直せていない俺達にリッチが迫って来ていた。
しかし横合いからヘンリーの魔法が飛んできてリッチの顔に直撃した。ダメージにはなっていないようだったが顔の部分で起こった爆発に一瞬だけ怯んだ様子をリッチが見せた隙にヒサメと共に通路の方まで移動した。
「ハァハァ……どうやら部屋の外までは追ってこないみたいですね」
『助かったよララ。ララの警告のおかげでみんな無事だった』
『いやララはアニキだけを………いや、アニキのお役に立てたのなら何よりッス』
「まさか最後にあんなのがいるなんて………僕の魔法も効いたようには見えませんでしたし、リッチが現れた瞬間に短剣の周りに魔法障壁が張られました。どうやらリッチを倒さないと短剣には触れられない様ですね」
「あれが見た目通り伝説のアンデットの王であるなら拙者の魔力刀もほとんど役に立たないでござる。武器を無力化しようにも先程のように再度武器を造られてしまってはどうしようもないでござる」
「私も力になりたいのですがここまでの道中で殆どの魔力を使い切ってしまって……あと剣を二本程度しか造れなさそうです。申し訳ございません」
「……いや、出てくる敵が耐魔ローブを装備し始めてからずっとリリィに頼りっぱなしだったんだ。謝らないで欲しい」
……と言ってもどうしようか。魔法が殆ど効かないとなるとララの力を借りてもどうしようも………
『七つの厄災と呼ばれていたララの力をもっと信じて欲しいッス。所詮伝説と言っても魔物の中で……ッスよね』
『ララ!もしかして何か方法があるのか!?』
『はい!アニキがララに頼ってくれさえすればあんなの簡単に倒せるッスよ!』
『どうすればいいんだ?』
『はい!相手の魔力耐性を無視する魔法……ララがあの腐れおん………『腐敗の女神』に撃っていたあの魔法を使います』
イリエステルに撃っていた………あの巨大な雷のことか!!
『ただ一つ問題があります。この魔法はチャージに凄く時間がかかってかなりの隙を見せてしまうことになります。奴の攻撃が効かないララが直接出てやってもいいんですけど、どうやらあのアルバァスという男が見てるみたいなんで極力この手段は取らないほうがいいでしょうね』
『ならばここから撃てば良く無いか?』
ここには向かってこないようだし。
『それが一番簡単なんですけど、ここから撃ってしまえばあの魔物の後ろにある宝物まで消滅させてしまう恐れがあるッス。でもそれはまずいでしょう?だから奴の横から……もしくは上から撃つしか無いッス』
………難しい条件だった。確かに眼前の空間は天井もかなり高く、上にさえ回れば安全にチャージをする事も出来るだろう。しかし飛行能力なんて持っている筈も無く上から撃つなんてことも不可能で、恐ろしく広い攻撃範囲と目にも止まらぬ速さの攻撃速度を持つあの鎌を振るわれる中、リッチの横で隙を晒すなんて事も出来そうになかった。
そんな八方塞がりな状況で俺はふと三人の方を見た。
………いけるかもしれない。
「リッチの真上の天井に剣を刺せばよろしいんですの?」
「ああ、頼む」
「……分かりましたわ」
リリィが剣を一本だけ造り、俺の頼み通りに天井のリッチの直上にあたる部分に剣を発射させた。
しかし天井に向かっている剣が一瞬だけリッチの攻撃範囲に入り、それに反応したリッチによって叩き落とされた。
「……あぁ、申し訳ございませんジョンさん。失敗してしまいました。それに………あと一本分しか撃てなさそうです」
「いや、途中で反応される事が分かったから収穫があった。これで作戦が纏まった」
「……何かジョン殿には策があるのでござるか?もう拙者も含めてこの場の全員が打つ手無しでござるよ。もうジョン殿に全てを賭けるでござる」
「僕はもともとジョンさんのことを信じてます。ジョンさんのたてた作戦なら喜んで協力します」
「もちろん私もエデ、ジョンさんの事を心から信じております!ジョンさんの命令なら喜んで聞きますわ!」
「みんな……ありがとう。作戦は簡単だ…………」
まずはヒサメに牽制を仕掛けて貰う。
リッチの持つ鎌をヒサメが魔力刀によって無力化させた。
しかし、リッチは三本目となる鎌をどこからともなく取り出しヒサメに向かって振り下ろそうとした。
「先程は不覚をとったでござるが、来ると分かっていたら造作もないでござる」
ヒサメは体を捻り返す刀でその鎌も無力化した。
リッチが更に鎌を取り出そうとしているその隙にリリィの造った最後の剣に掴まった。
「リリィ!今だ!!」
「はい!!射出!!」
そして俺を運んだまま剣は、先程のお試しで撃って貰った剣と変わらぬ速度で天井に向かって飛んでいった。
ヒサメがリッチの鎌を次々と無力化しているおかげで先程のお試しでは落とされた場所を無事に通り過ぎる事が出来た。
とうとう剣は天井に刺さった。
俺は天井に刺さった剣のガード(鍔)の部分に足をかけ天井に立つような体勢で真下に向かって手を翳した。
『ではチャージを開始します!』
『よろしく頼む』
『はい!』
しかし、リッチも伝説とまで呼ばれた存在。そう簡単には隙を見せてはくれなかった。
俺に向かって無数の魔法陣を展開し、魔法を撃ってきた。
だが、それも想定内だった。リッチは生前に魔法使いだった者がなると言うのは有名な話だ。魔法を使ってくる事も予測していた。
ヘンリーに残りの魔力を全て使う勢いで俺に向かってくる魔法を全て逸らして貰うように既に頼んでいた。
頼み通りにヘンリーはヒサメの後ろから俺に向けられた魔法に向かって魔法を打ち続けていた。
ヘンリーを狙おうにもヒサメが次々と鎌を無力化し続けているせいで攻撃できず、だからといってヒサメやヘンリーに向けて魔法を撃とうにもヘンリーが対応してくるという対リッチの布陣が完成した。
『……………チャージ完了したッス!』
『分かった!』
「みんなリッチから離れろぉぉ!!」
ヒサメとヘンリーが俺の声に従い通路の方まで退避をした。
リッチはこれ幸いと俺に向かって魔法を撃とうとしていたが………もう遅い!
『「悪滅の雷!!!」』
瞬間、下に向かって翳していた俺の掌から途轍もない力を内包した白雷が真下に居るリッチに向かって降り注いだ。
雷が止むとリッチが居たはずの場所に底の見えない大きな穴が空いていた。
『どうやらやったみたいッスね』
『やったのか………やったのはいいけど……』
どうやって降りよう。
流石に底の見えない穴に向かって飛び降りるような事はしたく無かった。
結局天井から降りれないままにヘンリーに短剣に触れて貰ってダンジョンから転移した。
「ふむ、君達が最後の班じゃな。して、どのような宝物を持って帰ったのかの?」
「……これです」
ヘンリーがダンジョンで手に入れた短剣を校長に手渡した。
「ふーむ、これは………鑑定魔法で調べたのじゃが物騒じゃのお。この短剣は刺した者の肉体に宿る魂を破壊し必ず死を与えるという効果を持っているようじゃ。普通なら生徒の持って帰ってきた宝物は宝物庫に収めることにしてあるんじゃが、これは危険すぎる。儂が預かっておこうかの」
「あの………それより僕達が最後って本当ですか?」
「おお!そうじゃった!皆、既に会場の方で待っておるぞ。君達も急いで会場の方に向かうと良いじゃろう」
そういうと校長は短剣を片手に俺たちの前から去っていった。
「………あの、僕達が最後………って大丈夫ですよね」
「正直あの難易度のダンジョンを普通の生徒が攻略できるとは思えぬでござる。皆一様に魔物にやられて失格という形で先に終わったと考えたいでござるな」
「とりあえず会場の方に向かってみましょう」
四人とも重い足取りで会場の方に向かった。
「では全員揃ったところでお待ちかねの結果発表じゃ。しかし順位こそ付くのじゃが、今年も全ての班が合格出来たことを喜ばしく思うぞ」
「「「「「なっ!?」」」」」
………全ての班が合格した?あのレベルのダンジョンを?
俺たちの必死の戦いは無意味だったのか?
班の三人の顔を見渡してみると全員信じられないといった表情をしていた。
「では早速一位の発表からいくぞい。まずはどの班よりも速く宝物を持って帰ってきたアゾーケント班!君達が一位じゃ」
周りからの拍手の中アゾーケント班のメンバーが立ち上がった。
そして俺たちはまるでお通夜のような雰囲気を漂わせていた。
「では次に二位の発表じゃ。二位は………ジョン・ドゥ班!」
………は?
四人共が固まっていた。
「………ん?二位は君達じゃ。堂々と立ち上がりなさい」
「ちょっと待ってください!!」
二位の班へ速く起立する様に促していた校長先生に待ったをかけた人物がいた。
一位として起立していたアゾーケントだった。
「そいつらが一番遅く戻ってきた筈です。順番を見ればそいつらが最下位なのは明白でしょう!!」
「ふむ、確かに順番だけを見れば彼らは圧倒的に遅かった。しかしそれもしょうがないのじゃ。君達がスライムやゴブリンと戦っている中で彼らは強力な魔物と戦っておったのじゃ。そして誰も欠けることなく宝物を持って帰って来た。じゃから儂が彼らの点数にちょっと点数を加えたのじゃ」
スライム!?ゴブリン!?
「しかし……!」
「不服があるのなら良かろう。今回の『ダンジョン攻略』は彼らだけ何故か行事とはかけ離れた難易度に設定されていたという不公平な状態で行われたものじゃ。後日しっかりとした管理のもとでやり直すとするかのぉ。そして次に同じ間違いが起こらぬ様に今回何故この様な事が起こったかを事細かに調査してみるとしよう」
「それは………すみません、不服はありません。発表を続けて下さい」
「それは良かった。ではジョン・ドゥ班の皆に拍手を!」
まばらな拍手の中で四人一斉に立ち上がった。
「では三位は……」
続く校長の言葉は聴こえていなかった。一時はもう終わったと思っていたが、なんとか二位に収まることができて安心して力が抜けた。
結果発表が終わって四人で話す機会もあったが、二位になれたことや、俺たちの班だけ難易度がおかしかった事は明日話そうということになり、各々の部屋に戻った。みんな心身共に疲れていた。
そして電池の切れたロボットの様にベッドに倒れ込み深い深い眠りに落ちた。
この小説をここまで読んでいただき誠にありがとうございます。




