好感度ランキング
学校名修正中
ララのおかげで一方的に挑まれた決闘に勝つことが出来た。
決闘が終わってすぐ、ユリウス・アゾーケントに怪我をさせられていた彼の事が心配だったので決闘場から保健室に急いで向かった。
そして俺が決闘場から出ようとした時に、観戦していた他の生徒達とバッタリ出会した。
その生徒達が俺に向ける眼は大きく分けて二種類だった。
一つは化け物でも見るかの様な恐怖の眼。
『竜種を従えてるとなると普通の人間は怯えて近づかない様にするでしょうね。『七つの厄災』程ではないとしても、竜種も人間にとっては脅威ッスから。………でもあの人間が竜種を召喚した時は殆どの人間が歓声をあげてましたね。あれ?』
『それは……ワイバーンとあの巨大なドラゴンでは扱いはかなり違うだろ』
たしかエンシェントドラゴンだったか。
『なんでッスか?両方同じ竜種じゃないッスか』
そんなチワワもドーベルマンも同じ犬だろ、みたいな感じで言われても……
『強さも両方とも似たようなものじゃないッスか。ララの魔法一つで消し飛ばせますよ』
そんな超上位者目線で同意を求められても「あぁ、そうだな、両方とも雑魚だよな」なんて共感出来るわけないだろ。
そしてもう一つは仇を見るかの様な恨みの籠った眼だ。
『この国の貴族であり魔法使いであることを誇りに思っている連中ッスね。彼らの象徴の様な存在であるさっきの人間を殴り飛ばして決闘でも恥をかかせたから自分達の威信にかけて排斥しに掛かって来るかも知れないッス』
『………マジか』
だからってあの時に殴りかかったことを後悔はしてないが………平穏無事な三年間が遠ざかっていく音が聞こえる気がした。
保健室に着くと、例の男子生徒は既に目を覚ましベッドの上で上半身だけ起こしている様だった。
そしてそのベッドの横には、付き添いとして彼について貰っていたヒサメが座っていた。
「ジョン殿、決闘は……どうなったでござるか?」
ヒサメは俺がベッドに近づいてすぐに此方に気付いた様で、開口一番に決闘のことについて聞いてきた。
「あ、あぁ……勝った……と、思う」
「そうでござったか。それは一安心でござるな。何やらあの御仁は召喚術にかなりの自信がある様でござったから心配していたでござるよ」
「あの…………貴方が僕を助けてくれたんですか?」
ヒサメと話しているとベッドの上の中性的な顔をした男子生徒が話しかけてきた。
「ああ、本来なら拙者が仲介しなければならないところをすまなかったでござる。この御仁はジョン・ドゥ殿。貴殿に暴力を振るっていた愚か者を殴り飛ばした傑物でござるよ」
「僕はヘンリー・ヴィクティウムと申します。……それと申し訳ありません。僕のせいで貴方まで彼に恨まれる様な事になってしまって」
「それは違う!!」
ヘンリーは申し訳なさそうに謝ってきたが悪いのは平気で人を虐げていたアゾーケントだ。
決して彼に非は無い。
だがしまった、初対面の相手に何を大声を出しているんだ俺は。
気まずい空気が流れていた。
「……しかしジョン殿が決闘に勝利したのなら、あの者は何故決闘にあそこまで自信を持っていたのでござろうな?まるで己が勝利を確信していた様に見えたでござる。彼奴は一体何を召喚してきたのでござるか?」
ヒサメが空気を察してか此方を見て話題を振ってきた。
「アゾーケントはワイバーンを召喚して来た」
「ワイバーン、飛竜のことでござるか!召喚獣の中では特級の存在と聴くでござる。ジョン殿はよくそのような決闘に勝てたでござるな。一体何を召喚したのでござるか?」
……どうしよう、誤魔化した方が良いのだろうか?だがアゾーケントとの決闘はほとんどの生徒に見られている。ここで誤魔化してもどうしようもないだろう。
「………エンシェントドラゴンを少々」
「古龍でござるか……!?これは驚いたでござる。たしかに古龍ならば飛竜に勝つ事も容易でござろうが………まさかこの眼で古龍との契約者を見る事が出来るとは思わなかったでござる」
感心の声を上げられるたびに嘘を付いて彼らを騙しているという罪悪感が俺をグサグサと刺してくる。
「そんなにすごい方なんですか!?そんな方に僕はどうやって、何を償えば………」
ヘンリーの顔は既に暗く沈み切っていて、償いなんていらないと言ったところで逆に気に病みそうな状態だった。
だが俺は彼に何かして欲しくて助けた訳では無い。
「拙者にいい考えがあるでござるよ」
「何か、何かあるんですか!?僕が償える方法が……」
「ヘンリー殿、拙者達の班に入っては貰えぬか?」
「ヒサメ!?急に何を……!?」
「………ジョン殿、少しいいでござるか?」
ヒサメの発言に驚いていると当のヒサメから保健室の外に着いて来てほしいと目で合図された。
「ヒサメ、一体どういうつもりだ?俺は彼を見返りを求める為に助けた訳じゃ無い」
保健室から出てすぐにさっきの発言について問いただした。
「ジョン殿の懸念は尤もでござる。しかしこれは彼のためでもあるでござるよ」
「彼のため?」
「知っての通り拙者達の目標である宝物庫にたどり着く為にはこの魔法学校での催し事で拙者達が所属している班が頂点を取らなければならないでござる。そしてヘンリー殿も例に漏れず班を作るか、誰かの作った班に入るかをしなければならないでござるが、ヘンリー殿と同じ班になるという事は、あの愚か者に睨まれるのと同義でござる。誰もヘンリー殿と同じ班になろうとする者はいないでござろうな」
「……でも俺はアゾーケントに決闘で勝ってヘンリーには関われ無い様にしたぞ」
「ほう、そのような条件にしたのでござるな。流石はジョン殿、やはり拙者の眼は間違っていなかったでござる。……しかしその条件ならヘンリー殿に手出しは出来なくともヘンリー殿の周りに居る人物に圧力をかける事は出来るでござる」
「そんな………」
じゃあ俺は、結局ヘンリーを三年間孤独にしただけということか……!?
「だから彼には拙者達の班に入って貰うのでござる。そしたら昼食の時等も一緒に居る理由になるでござるよ」
「さっきも気になっていたが、その拙者達の班って言うのは何なんだ?」
「……少し流れが前後してしまったでござるが、ジョン殿……どうか拙者と班を組んでほしいでござる。拙者が名刀『でゅらんだる』にたどり着く為にはジョン殿が必要でござる」
急に頭を下げられた。
「ちょっ、頭を上げてくれ!むしろ俺からしても願ったりだ!」
『ええー!ララがいればアニキ一人の班でも絶対に勝てますよ!』
『でも人が多いに越した事はないだろう?班を作るっていうくらいだから人が多く必要になるイベントもあるかも知れないし』
『………メンバーは男……これ以上ゴネたらアニキからの好感度が………分かりました、この男達と班を作りましょう』
「それは良かったでござる!では、ジョン殿改めてこれから三年間同じ寮、同じ班の者としてよろしく頼むでござる」
「此方こそよろしく頼む」
「……では話は戻るでござるが先ほどの提案は、この場にいる全員に利がある提案だったでござる。拙者達は特別寮所属。そんな者達で作った班には誰も入りたがらないでござろう?そのような中で一人でも班に入ってくれるのなら御の字でござる。そして今ヘンリー殿の中に渦巻いている申し訳ないという感情も、助けた代わりの提案として此方から申し出る事によって消し去る事が出来るでござるよ」
「なるほど……!」
『あれ?この男……アニキの中の好感度ランキングを凄い勢いで駆け上がっていってる……?早まったか?』
「ではヘンリー殿のところに戻るでござるよ」
「それで少しでもジョンさんに対して恩返しが出来るのなら……よろしくお願いします!」
「良かったでござるなジョン殿!これで三人目の仲間が出来たでござるよ!」
「そうだな!ヘンリー、これからよろしく頼む」
「ではもう遅い時間のようでござるから拙者達はこの辺でお暇するでござる」
「ヘンリーも今日はしっかりと休んでくれ」
怪我人を遅い時間まで無理させる訳にはいかないからな。
「あ…………分かりました」
「じゃあまた明日」
「………はい!また明日……!」
保健室を後にし特別寮の部屋へと戻る道中、ヒサメが話しかけて来た。
「ジョン殿の耳に少し入れておきたいことがあるでござる」
「なんだ……?」
「どうやらヘンリー殿は幼い時の記憶が無く、今まではこの魔法学校の校長に引き取られて育てられていたそうでござる」
「校長に……?」
あの入学式の時にいた人か。
「うむ、しかし自分の後見人が校長だからと言って必要以上に謙ったり気を遣ったり等とはしないで欲しいと本人は言っていたでござるよ。ジョン殿も同じ班として三年間ヘンリー殿と関わっていくことになるでござろうがどうか普通に接してあげて欲しいでござる」
「分かった」
「それは良かったでござる。三年間共に過ごす以上はお互いに気負いなく接する事が出来るという関係が一番でござるからな」
ヒサメと話しているうちに部屋の前まで辿り着いた。
「今日はジョン殿も色々あって疲れたでござろう?難しい話は明日にして今日はもう休むでござる」
ガチャッ
「………な!?」
寮の自室のドアを開け中に入ろうとしたが部屋の中の光景に唖然とした。
「部屋が………荒らされている……!?」
「………やはりこうなったでござるか」
「なにか……なにかこうなった原因を知ってるのか?」
「おおかたジョン殿に敗北した愚か者の仕業でござろう。全く……己の研鑽よりも他者への嫌がらせに精を出すとは……アゾーケントという者は余程の愚か者なんでござろうな」
「…………そんな」
じゃあこの部屋の惨状は俺のせいなのか…!?俺一人の部屋ならともかく今はヒサメと同室だ。ヒサメは言ってたじゃないか、この国の貴族でもある生徒には気をつけろと。それをすぐに無視してアゾーケントを殴ったのは俺なのにヒサメの私物まで滅茶苦茶にされていた。
「ヒサメ、すまない………ヒサメはせっかく忠告してくれたのに俺がアゾーケントからの恨みを買ってしまったせいでこんなことになってしまって………」
「いや……気にしないで欲しいでござる。この学舎にそこまで大切な物は持ってきてないでござるからな。それよりも三年間共に過ごす事になるジョン殿があの場ですぐに助けに入れる義侠心を持った立派な人物と知れた事の方が良かったでござる」
「ヒサメ……!」
『まずい!アニキの中の好感度ランキングが!……このままではこの男に負ける!?このララが!?………もう殺るしか……』
その日は散らかった部屋を少し片付けて眠りについた。
この小説を読んで頂いて誠にありがとうございます。次の話から女性キャラも出てきて、さらに波乱に満ちた魔法学校編になる予定です。どうかこの後もよろしくお願いします。




