入学
魔法学校の名前を変更したのですが修正し忘れている部分があるかもしれません。もし3章の物語の中にオグワーツという名前があったら感想で教えてもらえると助かります。
「新入生の諸君、ようこそマジカルヤマダ魔法学校へ。儂はこのマジカルヤマダ魔法学校の校長のアドルフじゃ」
目の前で、眼鏡をかけた白髪で白い髭を立派に蓄えた老人が新入生歓迎の挨拶をしていた。どうやらあの老人はこの魔法学校の校長のようだ。
俺は無事に魔法学校に入学する事が出来た。入学試験については俺はただその場に立っていただけだったので特に話す事はない。ララが魔法で目の前にあった的を破壊した。ただそれだけだ。
そして無事に合格し、大広間と呼ばれる場所で他の合格者と共に歓迎の挨拶を受けていた。
「今、君たちの後ろに座っておるのが君たちの先輩方じゃ。この学校で分からないことがあれば頼ると良い」
後ろを見ると六列に長テーブルが並べられそれぞれの列に学生服を着た者達が並んでいた。彼らが学校長のいう先輩達なのだろう。
ただ一つ、一番端の列のテーブルには誰も座っていない事が気になった。
「そして、今君たちの前に並んでおるのがこのマジカルヤマダ魔法学校の先生方じゃ」
校長の横にずらりと並んで座っていた人達が順番に立ち上がって紹介されていた。
「そして最後に……今日君たちにとってのメインイベント、寮分けじゃ。」
そう言って校長は自らの目の前にある椅子の上に水晶を置いた。
「この水晶が、君たちがどの属性に一番適性が有るか、君たちに眠っている才能を見てくれる。君たちの得意とする属性によって、三年間住む事になる寮や、受ける授業、クラスが変わってくる。
火属性を得意とする者達の集うイフリート寮、
水属性を得意とする者達の集うウンディーネ寮、
風属性を得意とする者達の集うシルフ寮、
雷属性を得意とする者達の集うヴォルト寮、
氷属性を得意とする者達の集うセルシウス寮、
そして、基本属性の魔法は苦手じゃがそれ以外の魔法を得意とする一芸特化の者達の集う特別寮
の六つの寮じゃ。どの寮にも頼りになる先生方が、先輩方がついておるから安心してよい。選ばれた寮が君達一人一人にとっての当たりの寮じゃ」
岩属性は?岩属性が得意な人達の集まるノーム寮は無いのか?
前に並んでいた生徒達が水晶に触れると水晶の色が様々なものに変わっていった。そしてその水晶の色によって各々の寮のテーブルに案内されている様だった。
しばらく待っているとジョン・ドゥの順番が回ってきた。
水晶の前に行くと大広間全体がざわついた。
??
『あー、ララの魔力が漏れていたのかも知れないッス』
なるほど?
疑問に思いつつ椅子に座り水晶に触れた。
するとその瞬間、頭の中に誰かの声が聴こえて来た。
『…………………む?お主、魂の格が高く魔力は潤沢じゃが………魔法を使えんな?』
この声の主はもしかしてこの水晶か?………しかしまずい事になった。この水晶そんな事まで分かるのか。なんの対策もしていないまま水晶に触ってしまった。
『しかしお主も試験で一定以上の魔法を見せたんじゃよな?一体どういうことじゃ?よーく見せておくれ……………お主の魂の奥に恐ろしい程の魔力の塊が見える………これは…………………!?どういうことじゃ!『悪滅の雷』!?お主、魂の中になんて恐ろしいモノを飼っておるんじゃ!このマジカルヤマダ魔法学校の中にそのような化け物を入れるわけにはいかん!悪いが退が『退学にしたらお前をコワス、私のことを喋ったらコワス、今すぐヴォルト寮の色を表示しないと絶対にブッコワス』………ぬぅぅぅぅ!』
………暴君かな?退学させられそうになったら脅しにかかるとか問題児が過ぎるだろ。
そして水晶の色はヴォルト寮を示す黄色………ではなく黒色を表した。
『………私はヴォルト寮と言ったはずだが?』
『…………ワシにも寮分け水晶としてのプライドがある。譲歩できるのはここまでじゃ。それにこの子自身は悪人では無いみたいじゃからの。何か事情があるんじゃろう?じゃからこの子のために放任主義の特別寮にしたのじゃ』
『………』
「ほう特別寮か、珍しいのう。特別寮は一番右の列のテーブルじゃ」
どうやら気になっていた誰も座っていない列のテーブルは特別寮という寮のテーブルだった様だ。
最初は俺が一人でその列に座っていたのだが、ちょこちょこと増えていき最終的に特別寮のテーブルには俺も含め五名の生徒が座っていた。
他の寮のテーブルは新入生と在校生が楽しそうに交流していたが、特別寮のテーブルに座っている五人は黙々と料理を食べ続けた。
こうして俺が三年間を過ごす事になる寮が決まった。
歓迎会の様なものも終わり、自分が住む事になる部屋の鍵を渡された。そして今は、その鍵に書かれている番号の部屋に向かって移動をしていた。
「ここか……」
部屋の前に辿り着き、鍵を開けて中に入ると既に誰かが部屋の中に居た。
中に居たのはさっきの歓迎会で隣に座っていた灰色の髪をした男の子だった。
その男の子はこちらを見て一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに人当たりの良さそうな笑顔を浮かべて挨拶をしてきた。
「貴殿が同居人の方でござるか?拙者の名前は無一文字 氷雨………いや、たしか王国の方ではヒサメ・ムイチモンジという風に名乗らなければならなかったでござったか。三年間どうかよろしく頼むでござる」
ござる!?拙者!?………お侍様!?どうしてこの世界に!?というかなんで魔法学校に!?
「あ、あぁ……俺の名前はジョン・ドゥ。こちらこそ三年間よろしく頼むでござる」
混乱しすぎて訳の分からない語尾を付けてしまった。
「無理に此方の話し方に合わせなくても大丈夫でござるよ。この口調が王都では珍しい口調というのは拙者も分かっているでござるからな…………でも其方から歩み寄ろうとしてくれたのは嬉しかったでござる」
いろいろと引っかかる部分はあるが、三年間一緒に過ごす事になる同居人が悪い奴じゃなさそうで安心した。
その日の夜、話題作りも兼ねてどうして魔法学校に入ったのかをムイチモンジに質問した。
「ムイチモンジはどうしてこの学校に入ろうと思ったんだ?」
「呼ぶ時はヒサメで構わないでござるよ。わざわざこの学校の中でも蛇蝎のごとく嫌われている特別寮に入ってまで拙者が何を目的にしているのか、やはり気になるでござるか?」
………特別寮って他の生徒から嫌われてるのか?
『………アニキが傷付くかもと思って今まで黙ってましたけど、この学校に深く根付いた思想として、魔法使いは基本属性を使えて当たり前で逆に基本属性を満足に使えない者は魔法使いに在らずという考えがあるみたいッス』
マジか……
「拙者の家系、無一文字家の先祖が所持していたとされる家宝がこの魔法学校の宝物庫にあるらしいでござる。拙者はどうしてもその家宝を故郷に持ち帰らなければならないのでござる」
「なるほど………その家宝が何かを聞いても大丈夫か?」
その家宝って『状態異常封じの腕輪』じゃないよな………?もしそうだったら同居人と競わなければならない事になる。出来ることなら気まずい三年間にはしたく無かった。
「名刀『でゅらんだる』でござる」
被ってるっ!
少し前まで俺が使っていた聖剣と名前が被ってるっ!
「……………目頭を押さえてどうしたでござるか?」
「気にしないでくれ」
「逆にジョン殿の目的も知りたいでござる。……と言ってもジョン殿もわざわざ特別寮に入ってまで、ということは拙者と似たような目的ではないのでござるか?」
「当たってる、俺もこの魔法学校の宝物庫にある『状態異常封じの腕輪』が欲しくてこの学校に入ったんだ」
「やはりそうでござったか。欲しているものがジョン殿と被らずに済んで良かったでござる……本当に」
ヒサメと話しているうちにいい時間になったのでその日はもう寝る事にした。
慣れないベッドで寝ていたせいか眠りが浅く、かなり早い時間に目が覚めてしまった。
「ジョン殿も起きたでござるか?」
ヒサメも既に起きていたようだった。
「ヒサメももう起きていたのか」
「たまたまでござるよ。やはり慣れないもので眠りにつくのは難しいでござるな。はあ、布団が恋しいでござる」
「俺も似たような理由だ。まあそのうち慣れるとは思うんだが」
「ジョン殿はこの後、何か予定はあるでござるか?本格的な授業が始まるのは二日後からと先生方は仰っていたみたいでござるが……拙者は日が昇って少ししたらこの学校の構造を把握する為に散策に出かけるでござるよ。ジョン殿もどうでござるか?」
「なら俺も一緒に行かせてもらうよ」
ヒサメと共に魔法学校の中を散策していた。時間も経ち、他にもちらほらとこの学校の生徒らしき子らを見かけるようになった。
するとヒサメが歩きながら真剣な声で話しかけてきた。
「ジョン殿………先程から何人かの御同輩とすれ違い始めたでござるが一つ気をつけてほしいことがあるでござる」
「気をつけてほしい事」
「そう、気をつけてほしい事でござる。拙者もこの魔法学校に入るに当たって既にこの学び舎を卒業された御方にいろいろな話を聞きに行ったでござるよ。そこで聞いた話では、この学校には大きく分けて四種類の生徒が居るらしいでござる。一つはジョン殿や拙者のような宝物庫の中にあるものを目的にしている者達、二つ目は『魔法学校を卒業した』と言う将来に役立つ肩書きを目的にこの学校に入った者達、三つ目は単純に魔法の道を探究する為にこの学校に入った者達でござる。その者達は自分の目的に一生懸命で此方から何かしなければ無害でござる。……ただ最後の四つ目、これがこの学校の中でも八割を占める程多い者達でござるが、貴族としての箔をつける為にこの魔法学校に入った者達には気を付けて欲しいでござる」
「それは」
理由を聞こうとしたその時、何か大きな物音と激しい怒号が前方から聴こえてきた。
「………何かあったようでござるな」
そこには頭から血を流し地面に倒れ伏している男子生徒と、その生徒を何度も何度も足で踏みつけている男子生徒が居た。
「……あれが気をつけてほしい人種の生徒でござるよ」
「……ハッ………ハッ………ハッ………」
「………ジョン殿?」
………呼吸が上手くできない。
「拙者、今からアレを止めてもらう為に先生方を呼んでくるでござるよ……………ジョン殿?大丈夫でござるか?」
「…………ハッ…………ハッ…………ハッ………」
………心臓がバクバクと激しく脈打っている。
「平民風情が!イフリート寮に入る資格は無いんだよ!」
反抗する意思のない者を何度も何度も蹴っていた。
《幼馴染が首を吊っている光景》
「今すぐこの魔法学校を辞めないと!これよりも酷い目に遭ってもらうからなッ!」
何度も何度も
《幼馴染が首を吊っている光景》
「まあもっとも辞めたとしても!一度僕を不快にさせたからには王都に居場所なんか作らせないけどな!もちろんお前の家族も!友人もッ!」
何度も………何度も…………
《諒太が首を吊っている光景》
「それじゃあ、最後に自分がした事の罪の重さを知ってもらう為にその身体に罪人の印を付けてもらわないとなぁ!」
男は大きな火球を自らの足元で倒れている者に落とそうとしていた。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺は目の前に居る男を殴り飛ばした。
「ぐぺっ?」
男はそのまま壁に激突した。しかしそんな事などどうでも良く、俺は倒れている男子生徒に駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「うぅぅっ」
「すぐに保健室に連れて行くからな。諒太」
「貴様ぁぁぁ!よくもこの僕の顔に傷を付けてくれたな!絶対に許さんぞ!」
「体を持ち上げる時に痛みを感じるかもしれないけどごめんな」
「俺は現大臣の息子で、次期大臣のユリウス・アゾーケントだぞッ!」
『アニキ、ララは回復魔法を使えるッスよ』
『本当かッ!?じゃあ今すぐ頼む。早く諒太を助けてくれ』
『………アニキ、その男は………いや、分かったッス』
「僕をこんな目に合わせて無事でいられると思うなよ!」
「うぅぅぅ……」
「今すぐ助けるからな」
「いや、お前………その指輪……『召喚の指輪』だな?いいことを思い付いたぞ。貴様に魔法学校のルールに則って決闘を申し込む!!」
体に白い布のような物がぶつかってきた。ちょうど血を拭くものが欲しかったからその布を使って血を拭き取った。
「その手袋を拾ったな?ならば決闘を受け入れたと言うことだ。フッ馬鹿な奴だ。条件も聞かずに手袋に触るなんてな。此方が勝った時は貴様には死ぬよりも酷い目に遭ってもらうからな!」
傷を治し、血も拭き取り、ひと段落して周りを見てみると周りに人だかりが出来ていた。
「今から三十分後、決闘場で僕と貴様で召喚獣による代理決闘を行う!!」
え?
『よっしゃーやってやるッスよ!』
この小説をここまで読んでいただいてありがとうございます。エデル君はトラウマを刺激されて正気度チェックを失敗しました。
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