誤解
イリエステルに暫しの別れを告げ、俺は自身の生まれた村に二週間ちょっとぶりに戻ってきた。
その時に追い出された理由が理由なので周りを警戒しながら村に入っていった。
「お、お前は………エデル!!生きていたのか!?」
が、すぐに村人達に見つかってしまった。
絶対に近づいてはならないと言われてきた『腐敗領域』から意識のないリフィアちゃんを背負って出てきたところを見られたせいで腐敗の女神の信奉者だと誤解されて、この村を追われてしまったが………もう誤解は解けたんだろうか?俺は恐る恐る村人達に近づいていった。
「よく………よく戻ってきてくれた!すまない!俺たちはお前のことを誤解していたようだ………俺たちはてっきりリフィアちゃんの魂を腐敗の女神への生贄にしたんだと……………エデルが無事で良かった…………」
開口一番に謝罪された。俺が腐敗の女神の信奉者だという誤解は無事解けているようだった。
「でも生きていたならこの二週間何をしていたんだ?………いや、怪我のせいで身動きが取れなかったんだよな。俺たちが誤解したせいで………本当にすまない」
……この二週間か………………貴方達が腐敗の女神と呼んで恐れているイリエステルを王都に連れ出したり、イリエステルと一つ屋根の下で暮らしたりしていました。なんなら俺がイリエステルを連れ出していたせいでこの村にも魔族が侵攻してくるところでした。
………………本当に誤解か……?これ。………やばい、村人たちが凄く申し訳なさそうに謝ってきてるけど、それ以上に俺の方がやばいことやってるんじゃ…………
「も、勿論許すに決まってるじゃないですか!!罪を憎んで人を憎まず!汝隣人を愛せよ!お互いを許し合う精神が大切なんですよ!!」
こっちも村を壊滅させていたかもしれないのに一方的に責め立てることなんて出来るわけがない。
「あ、ああ、本当にすまない……まさか許してくれるとは思わなかったよ…………あの後リフィアちゃんが起き上がって本当のことを話してくれた時はみんなエデルを間違いで殺してしまったって落ち込んでしまってな………」
そうか……!リフィアちゃんはあの後無事に意識が戻ったのか………!本当に良かった。それだけが気掛かりだったのだ。きっとレフィアちゃんも喜んでくれただろう。これで妹の体調の為に俺なんかと結婚せずに済むんだから。
「特にレフィアちゃんとレグスの奴が酷く塞ぎ込んでしまって……」
「え!?」
………いや、それも当然かもしれない。あの二人も凄く優しくて責任感がある子達だから。はやく死んでないことを伝えて安心させてあげないとな。
「じゃあちょっとその二人に挨拶してくるので俺はこの辺で……」
「そのことなんだが……………二人とももうこの村にいないんだ」
え゛!?
「なんだって!?」
「レグスもレフィアちゃんも三日くらい前に王都に行ってしまったんだ。もう村の外に出れる歳になったっていうのもあるんだが、なんでもここにいると嫌なことを思い出すとかで、リフィアちゃんを連れて出ていったよ」
「そんな………」
じゃあ俺レフィアちゃん達の中で死んだまま!?
「特にレグスの奴なんてお前を森の奥まで追っていったせいで重度の症状が出てな、まあそれ自体はお前が持ってきてくれた黄色い実のお陰で治すことが出来たんだが、それもあって尚更お前を森の奥に追いやったことに責任を感じていてな。………それともう一つ、あの木の実の種を村に植えてみたんだ。そしたらそこから芽が出てきてな………実が出来るまでは時間がかかるだろうけどこれで村は救われる。本当にありがとうエデル」
そうか…………この村が救われるのなら良かった。
しかしそうか……まあレグス君は王都で冒険者になるだろうから王都の冒険者ギルドに行けば会えるだろう。
そこでレグス君にレフィアちゃん達がどこにいるのか聞ければいいんだが………
そして村の人達との会話を切り上げて自宅で資金と武器を確保し、その後王都に向かった。
《転移の指輪》を使ってすぐに王都まで行ければ良かったのだが誰にもこの指輪の使い方を教えてもらっていないことを思い出し、前回王都に行った時のように徒歩と馬車で移動することにした。
そして徒歩で馬車の出る村まで移動していると魔物が襲い掛かってきた。本来ならこれが普通だ。イリエステルを連れて王都に向かっていた時はたまたま運が良かったのだろう。
「ブルルルル!」
見た目は牛のような魔物だ。
俺は剣を構え牛の魔物と対峙した。ゴーレムの件を除けば魔物と自身の力で戦うのは初めてだがうまく戦えるだろうか?イリエステルは俺がゴーレムを倒したことで強くなったと言っていた。彼女のその言葉を信じて戦う事を選んだ。
「うおおおおぉ!」
「ブモオオオオ!」
俺達はお互いに剣と角を構え相手の方に突進した。
そして勝者は……………俺の方だった。奴の角は俺に届かず、そして俺の右手に握られているものが奴の命を奪った。
その俺の右手に握られていたものとは……………女性の手だった。より詳しく言うのならイリエステルが俺と手を繋ぎ、いつの間にかそこに存在していた。
俺の方に向かってきている奴を剣で叩き切ろうとした瞬間、《召喚の指輪》が熱を持ち俺の手の延長線上に突然現れたイリエステルが牛の魔物を殴り倒した。
「ピンチ?」
「………………いや」
…………………召喚魔法の発動権限って、そっちも持ってるのかよ!
「……ピンチじゃなかった?」
イリエステルは事態が飲み込めず黙っていた俺に不安そうに話しかけてきた。
「…………いや、ありがとう」
彼女も俺を心配して来てくれたんだ。怒ったりするようなことじゃないし助けてもらったことに素直に感謝の言葉を述べよう。
ただそうなってくると一つ疑問が出てくる。彼女はどうやって俺が戦っていると分かったんだろう?
「なぁイリエステル、なんで俺が戦っているって分かったんだ?」
「…………」
「もしかして何処かから見てたのか?」
………まさかな、彼女が近くにいたのならこの辺の生き物は全部死んでるはずだし足元の植物だって青々と生い茂っている。ありえない。
「…………ミテナイヨ」
「ん?」
イリエステルは俺の返事も待たずに消えていった。
これは………
「うわぁぁぁ!足がぁぁぁ!助けてくれぇぇぇぇ!」
俺はその場で足を押さえ座り込んだ。
「!?大丈夫?」
どこからともなくイリエステルが指輪を付けた方の俺の手の先に手を繋ぐ形で現れた。
………………やっぱり見てんじゃねぇか!!
この小説を読んでいただいて誠にありがとうございます。皆様のおかげでブックマーク件数が20を超えることが出来ました。本当にありがとうございます。あと1、2話で1章も終わり次の2章からはよりキャラが増え、キャラクターのやり取りの幅も広がると思うので今以上に話が活気付くと思います。なのでどうか2章もよろしくお願いします。




