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異世界転生と心の住人

作者: 雲来末

(何度潜っても気が滅入るなぁ)

 僕はそう考えてダンジョン内部を見回し、仲間達が魔物を倒した際に発生した金貨やアイテムの数々を拾い上げ回収する。


『いつもダラダラと動いてるからそう思うんだ!少しはシャッキリしろ!』


 鉢巻に空手の道着を着た少年はそう怒って僕を睨む。


『たがだがポーターが頑張ったって無意味よ。まあテキトーにやんなよ』


 ネグリジェにサンダルという気怠げな格好の女性はそう皮肉を言って笑う。


 二人の名前は熱血君とテキトーさん。僕の心の住人で、異世界転生した際になぜか具現化した僕にしか認知出来ない存在だ。まあどうだっでいいけど。


 僕が金貨やアイテムを回収している間にも冒険者パーティーの仲間達で主戦力の皆はリーダーを囲む形で今回の戦果を大いに喜んでいた。まあモブでわき役の僕には関係ない話さ。


『ポーター、単なる荷物持ちなんて役目を押し付けられて悔しくないのかよ!』


『荷物持ちだってパーティーを支える立派な仕事じゃん?職に貴賤なしって言葉知ってる?』


 熱血君はやる気がから回ってる功名心の塊が本音の僕の一部。

 テキトーさんは常に弁が立ち屁理屈をこね回す口が上手い僕の一部。

 そして僕は今日もテキトーさんの口車に乗りダラダラと腑抜けた意見に流される。そんな自分がごくたまに嫌になるが・・・慣れてしまえばそんな考えはいくらでも誤魔化せるさ。

 そんな他愛のない事を考えている間に状況が一変した。ダンジョン内の通路から魔物の一群が突然沸きだし、あっという間にパーティーが分断されてしまう。


「た、助けてっ!」


 僕の数メートル先に前線メンバーから分断されてしまった主戦力の女性僧侶さんがゴブリンに囲まれ、今にも襲われようとしていた!


「た、助けなきゃ!!」


 でもどうやって?手持ちの武器は護身用のボウガンと短剣のみ、後は背負ってる巨大なリュックに色々と対魔物用アイテムがあるにはあるけれど・・・


『ウダウダ考えてる時間は無い!何でもいいからすぐに助けるんだ!』


『バカ!考えなしに物を言わないでよ!どうせ何の役にも立たないんだ・・・だったら前線メンバーの連中と合流してから助けるの方が合理的よ!』


『それじゃあ間に合わない!今ここで、助けるんだっ!!』


 テキトーさんの言葉に同意しかけた僕だったが、この時はなぜか熱血君の言葉に弾かれる様に反応してしまい、ゴブリン達に対して装備したボウガンの矢を次々と放った。

 矢は何本かゴブリン達に刺さり、その事に怒った連中は怒りの余り女性僧侶さんから僕に目標を変えて凄い勢いで迫りあっという間に包囲されてしまうが、その隙を突いて女性僧侶さんはその場から離脱する事に成功する。その様子を見届けた僕は少し安堵するも、今度は自身が絶体絶命のピンチに陥っている事を自覚し恐怖で震える。


『ほら言わんこっちゃない!柄にもなくカッコつけるからこんな破目に陥るのよ!』


『それでも誰がが目の前でヒドイ目に遭ったり死んだりするよか百倍マシだ!』


 二人がそう言い争っている間にも、ゴブリン達は仲間を呼び状況は悪化する。流石にもうダメだと諦めかけてたが・・・女性僧侶さんが分断されていた前線メンバーを連れて戻り、彼らの手によりゴブリン達が難なく全滅したことにより僕は何とか無傷で済み命は助かった。


 ダンジョンの探索を終え街えと帰る道すがら、僕は今日の出来事を振り替えってたまには熱血君の意見に耳を貸すのも悪くないと思いつつ、やはり基本はテキトーさんの言うことがそれなりに大事かなと思った。

 僕がいようがいまいが世界はきっと回り続ける。だけど今日僕が出来るだけ頑張った事に僕自身が満足しているので今日は何だか気分が良かった。

 なのでこれからも、熱血君とテキトーさんの二人と一緒にゆったりダラダラと生きていこうと何となく決めた。

初めて書いた短編はとても難しかったです・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰の心の中にもいそうな熱血君とテキトーさん。 熱血君だけだと気合の入れすぎで倒れそうになるし、 テキトーさんだけだと何も行動できなくなりそうだし。 バランスが難しそうですね。
2022/06/08 17:20 退会済み
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