その名はHERO!
朝、正幸の部屋の窓から太陽の光が中に照らされる。
「オーイ!起きろ!」
「んわ?だれ…って!なんでお前が!?」
寝起きの正幸の側には静が立っていた。
「なにって、起こしに来たんだよ。今日も学校だぞ」
「それは知ってるけどなんでお前が?」
「そりゃあお前!自分の相棒を起こしにくるのは当然だろ!」
「相棒じゃねぇし…っていうか今何時だ?」
机の上に置かれた時計に目をやると、時計の針は午前八時三十分を指していた。
「やべぇ!!もうこんな時間じゃねぇか!なんでお前はそんな余裕そうなんだよ!?」
「いや〜!昨日とか学校すら行ってねぇし、遅刻ぐらい別になぁ〜」
「そういえばそうだったな!…って!話してる場合じゃねぇ!!」
正幸はベッドから跳ね起き、大急ぎで支度を始めた。
顔を洗い歯を磨き、着替えを済ませて口に食パンを咥えて靴を履いた。
「いってきますー!!」
大急ぎで家を出た正幸は、腕時計に目をやった。
「八時四十分!ホームルームが始まるまで十分!学校まで走っても十分以上!間に合わねぇ!」
「おい相棒!こっちだ!」
静が路地裏を指差し、正幸を引っ張って入って行った。
「おい!遠回りしている場合じゃ…!」
無理矢理引っ張られながら路地裏を抜けると、正幸の目の前には、何故か学校があった。
「………え?」
突然の出来事に正幸は呆けていた。
「なにしてんだ!早く行こうぜ!」
正幸を置いて、静は一人で先に学校へと入って行った。
一人ぽつんと残された正幸は、自分の頬を強く引っ張った。
「……!夢じゃねぇ…どうなってんだいったい?」
強い疑念を持ちながらも、正幸は学校へと入って行った。
放課後。
正幸は教室で宙を眺めていた。
「おいどうした?エッチな事でも考えてんのか?」
静が目の前に現れ、正幸の顔の前で手を振った。
「いや…今朝のあれの事なんだが…」
「あれか…それはこれから教えてやるよ。まずは、私達の部室に行くぞ」
「部室…慈善活動に部室は必要か?」
「いいから行くぞ!」
正幸を引っ張りながら、学校の四階へと上がって行った。
四階へと上がった二人は、目の前の部屋に入った。
「着いたぞ!ここが私達の部室だ!!」
部屋の中は机と椅子しかなく、寂しげな部屋であった。
そんな部屋の隅に、一人の女子が椅子に座って本を読んでいた。
髪は明るい茶色で、長い。
身長は小さく、百五十センチほど。
表情は暗く、部屋に入ってきた二人に対しても、その表情は変わらなかった。
「……その人が、新入部員?」
「そうだ!ユッキーと呼べよ」
「ちょっと待て。ユッキーて何だ?」
「正幸だからユッキーだろ」
「やめろ」
正幸は改めて彼女に自己紹介をする。
「俺は一年の江原正幸。よろしく」
「一年の塩澤春香。こちらこそよろしく」
挨拶を済ますと、春香は再び本を読み始めた。
「自己紹介も済んだし、活動を始めるか」
「その前に、今朝のあれはなんだよ。突然学校の前に出たやつ」
春香が本を読むのを止めて、静に視線を向けた。
「……説明してないの?」
「今からするところだ問題ない!」
「はぁ…そう…」
春香の反応に、正幸はやや不安そうに二人を見る。
「いいかユッキー!この部の本当の名前は、“チームHERO”だ!」
「帰ってもいいか」
「さてはお前、私がおふざけで言っていると思っているな?」
「うん」
「いいか?私達チームHEROは、この街のありとあらゆる不思議な現象を解決する事を目的とした、対特殊怪異隊だ!」
「不思議……まさか今朝の登校中、いきなり学校が目の前にあったのも!?」
「そういうこと」
「じゃあなんであれを放置してるんだ?」
「便利だし〜、実害はないし〜」
「仕事しろや!」
「放置してるのは他にも理由があってな、他にも不思議な現象が起こっていて、それの対処に忙しいからなんだよ」
しかしそんな話を聞いても、正幸は眉間にシワを寄せ、静をじろじろ見ている。信じさせるにはまだ至らないようだ。
「だったらあれだ!春香には特殊な力があってな、守護霊みたいなのを使って幽霊退治できるんだからな!」
「そうなの?」
「ええ…まぁね」
「見せてやってくれ春香、お前のもう一人の自分を!」
「そういうんじゃないから」
春香は鞄から弁当箱を取り出し、いなり寿司を出した。
するといなり寿司の一つが突如消え、春香が椅子に座ったまま宙に浮かびだした。
「どうよ!嘘じゃねぇだろ」
「まじか……でもなんで俺をそんなに勧誘するんだ?」
「お前にも、特別な役割があってな…」
「それは?」
「ツッコミ役」
「そんなことで俺を怪異とかに巻き込もうとするんじゃねぇ!」
正幸は怒って帰ろうとする。
「待てよ」
「何も聞くことはねぇよ」
「お前の安全の為に言っておく、このチームに入れ」
真剣な様子で静は言うが、それを無視して帰って行った。
あけましておめでとうございます。
久しぶりの投稿になります。
これからも不定期投稿になりますが、よろしくお願いします。