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次の店でもイザベラは嬉しそうに選んでいたので、クレアも楽しく買い物の手伝いができた。


お茶でもとイザベラは思っていたが、王女としての用事もあり帰る時間になっていた。


「今日は急なお誘いになったうえ送れなくてごめんなさい。次はゆっくりとお話しましょう。クレアさんありがとう」


素晴らしい笑顔で少し砕けてクレアに挨拶をした。


「私も楽しかったです。またお呼びください。お気をつけて」


馬車が去っていくのを見送り、大きく息を吐く。


「送って頂かなくても大丈夫ですので、馬車を追ってください。騎士様」


「イザベラ様からの命令ですので御屋敷までお送りいたします」


歳はレオンと同じぐらいで鋭い目つきの騎士がクレアを見下ろしていた。先程笑った騎士だ。


「セルゲイ様…でしたよね。馬車もありませんし歩いて帰るので…」


先程笑われたのを少し根に持って睨みながら答えた。


「え?歩く?」


──失礼な人ね!


クレアは無視をして帰ることにした。


「いやいや、ちょっと本当に歩かないでください」


馬を引いて追いかけてくる。


「馬に乗ってください。引きますから」

「そんな目立つことしませんよ!!屋敷は街中ですし歩きます」


呆れながらも後ろについてきている。


「奥様はあのレオンの奥様なんですよね?」

「ですけどそれが?」


「いや…レオンがねぇ…」

「さっきからなんですか?言いたいことがあるならはっきりどうぞ!」


歩みを止めくるっと向きを変えセルゲイを睨む。


「いやえらい平凡なのを選んだなと思って…あっ質素って言わないとダメか…レオンもその程度だったのかと」

「どっちも女性に使うには失礼ですよ…私はいいですけど」

「いいの?」


ふーと息を吐き両手を腰にあてる。


「私は淑女でもないですし、貴族の子息様に嫁ぐつもりもなかった身ですからなんと言われようといいですが、ご主人様をバカにされて黙っていられるほど平凡でもありませんので!!」


「レオン様への侮辱は謝ってください!!」


すごい勢いでセルゲイの前でまくし立てたクレアに押され


「…色々すまない」


と謝った。


「二度と言わないでくださいね」


クレアはまたずんずんと歩き始めた。

後ろでまた笑い声が聞こえたが気にせず歩いた。


すぐに屋敷に着いたので一応振り返り


「ここまでありがとうございます。お仕事にお戻りください」


セルゲイに一礼して玄関を開け中に入った。


「奥様…歩いて帰ってきました?」

「え?はいでも仕方なくですからね。一応護衛の方いましたし…」


大きく息を吐き頭を振るエドガーの横を逃げるように通り過ぎようとしたら、奥からまだ残っていたノラが嬉しそうによってきた。


「クレア良かったわ。無事に結婚できて良かった」

「ノラさん奥様です!」

「あーはいはい。奥様ちょっとお茶しながら話しましょう」

「そうね。調理場で…」

「食堂使ってください。用意しますから」


エドガーは怒りながらもお茶の用意をしに調理場へ向かう。クレアとノラは笑いながら食堂に急いだ。



◇◆◇


「おーいレオン!」


王宮第二騎士団詰所に普段来るはずもない第一騎士団副長のセルゲイが入口でレオンを呼んでいる。

その場にいた騎士が壁の様に立ち塞がり


「副団長に何か用ですか?」

「用がなかったらここに来ないだろ」


「やめろ。なんの用だ?セルゲイ」


壁になってる騎士たちを下がらせセルゲイの前に立つ。


「おいおい、喧嘩しに来たわけじゃないぞ。ちょっと出れるか?」


レオンが頷き外に出た。


「今日お前の奥様を家まで送ったが…」

「ちょっと待て。セルゲイが何故?」

「王女様の気まぐれでな、その辺は帰って聞いてくれ。いや驚いたわ、街から普通に歩いて帰るし気は強いわ…」


「お付のメイドもいないみたいだが、早めにつけた方がいい。王女様から頻繁に呼び出しありそうだし毎回1人なのも問題だろ」


「それだけを言いにきたのか?」

「ああ、お前の奥さん面白いなと思ってな」


あははと笑いながらセルゲイは去って行った。


レオンはルイスの言葉を思い出す


──無自覚のキラー…周りを巻き込む天才か…


目を閉じ少し頭を振り詰所に戻り、やりかけの仕事を早々に切り上げ今日は帰ることにした。



◇◆◇



「おかえりなさいませ」


「エドガー少しいいか」

「はい」


「レオン様おかえりなさいませ」


クレアも玄関ホールまで来るが、2人は急いで執務室へ行ってしまった。クレアの横を通り過ぎる時、後で呼ぶからとレオンが少し怒っていたのが気になった。


──私何もしてない…わよね?





「奥様、ご主人様がお呼びです」

「はい…」


足取り重く執務室まで行き扉をノックして中に入る。

机に向かい書類を見ていたレオンは1枚サインをしてエドガーに渡しソファまで移動する。エドガーはその書類を持ち出ていった。クレアは座らず立っていたが促され座る。


「クレア、今日イザベラ様と出かけたのか?」

「はい。王宮侍女は無理だとお断りしましたので、それの代わりに…」


「で、歩いて帰ってきた?」

「あっ、はい。距離もなかったですし…え?それがダメでした?」


クレアを見つめ手をとる。


「レオン様?」


「危ないから1人での行動はやめてくれ。早急にクレア付きのメイドを1人雇うことにした。ルイスが誰か送ると言っていたが公爵家で付いてたメイドをそのままよこして貰うように手配した」


「私付きですか?それは…」

「メイドがいれば他の男と歩いて帰ったりしなくて済むだろ?」


「今日はたまたまで…」

「クレア本当に気をつけてくれ」


レオンがクレアを抱きしめる。


「分かりました。とりあえず食事の準備をしてきます」


そっとレオンの腕から離れて調理場まで行くクレア、すれ違いでエドガーが執務室に入ってきた。


「まだまだ心配事は増えそうですね」


「全くだ…」





調理場へ行くとドナルドが最後の仕上げをしていた。


「美味しそう。用意できてるの持っていきますね」


「奥様がそんな事してたら怒られるぞ」


「大丈夫ですよ。これくらい」


食事を運んで食堂の準備をしてレオンを呼びに行く。


「レオン様食事の準備が整いました!」

「ですから!奥様がそのような…」

「もういいエドガー、屋敷の中はクレアの好きにさせてやれ」


「甘い…そんな事では…」

「エドガーさん!怒りすぎると身体に悪いですよ」

「誰のせいで…」


「気をつけますから」


クレアが笑顔で答える。レオンも笑っている。




奥様になるのはだいぶ先の話になりそうだが、この屋敷に笑い声が響く日はこの先ずっと続く。





─────end

いつもブクマや評価をありがとうございます。感想や誤字報告もありがとうございます。本編はここでひとまず終了となります。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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