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「あらレオン早いわね」
「片付けは?」
「ほぼ終わってます」
レオンがそのままソファーに座り込む。ベアトリスと目のあったクレアは促されてレオンの横に座る。レオンは大きく息を吐いてから話し出した。
「レスター親子の処分が決定した」
クレアがギュッと手に力を入れるのを見て、レオンは手を重ねる。
「レスターは斬首刑、ニコルは修道院送りで…証言をしていた執事は流刑になった」
「そうですか…ニコル様は修道院に…」
「もう会うこともないだろうから気にするな。クレアも忘れる方がいい」
「はい…」
──ニコル様…
「リットン家は本当にこのまま爵位返上するのかしらね」
「まだ申請は出てませんが多分」
「そう…夕食は食べてから帰るのよね?」
「いやすぐに…」
「食べて帰るわよね!」
ベアトリスの気迫に負け夕食後に帰ることにした。
部屋に2人残り馬車に乗せる為に荷物を用意しながらもクレアは手を止めてしまい…はっと気が付きまた動かし…を繰り返していた。
「クレアはニコルが気になるか?」
「あっ申し訳ございません…気にならないと言えば嘘になりますが…」
レオンがクレアの手を取りそのまま抱きしめる。
「忘れてくれ。あいつの事は今後口にしないから…忘れてくれ」
「レオン様」
「クレアの中に少しでもいると思うと…腹が立つ…から本当に忘れてくれ」
少し拗ねたように言うのでクレアは思わず笑ってしまった。
「大丈夫です。私もこの先思い出すこともありません。私の中はレオン様でいっぱいです」
レオンにわかってもらう様に言ってから、とてつもなく恥ずかしい事を言った事に気づき、レオンに見られないように背中を向けようとしたが、抱きしめる力が強く無駄に終わった。
「もう1度言ってくれるか?」
下を向いてるクレアの顔を片手で上を向かせ、腰に回した手をさらに強め、ニヤッと笑いながらレオンが言う。
「むっ…無理です!!分かってますよね!」
あははと笑い力を緩めるとクレアが真っ赤になって拗ねていた。
リーフェンが呼びに来て2人揃って食堂に向かう。ベアトリスはもう席に着いていた。
ドミニクもすぐ入ってきて食事が始まった。
「クレアは王宮務めをはじめるのかい?」
「え?いえその予定はありませんが」
「イザベラ王女がそう言って用意させていたからな」
「あらあら、なかなかの絡み具合ね」
ベアトリスはくすくすと笑っているがレオンの表情は曇っていく。
「断ったはずですが…あの我儘王女様は…」
「レオン様」
「1度お訪ねする予定ですのでその時再度お断りします」
「そうか、ではこちらからもそれとなくお伝えしておく」
ドミニクから言って貰えたら大丈夫だろうとその話は終わりとなった。
食事を終え、いつもならゆっくりお茶を飲むところだが遅くなっても帰りにくくなるので、今日はここで終了となった。
公爵家の使用人が荷物を馬車に乗せ準備をしている。クレアは使っていた部屋を最後片付け階段を降りる。
玄関ではレオンとベアトリスが待っていた。
「クレアいつでも遊びに来てね。今度エリザベッタと3人でお茶でもしましょう」
「はい」
リーフェンがドミニクを呼びに行き、揃ったところで改めて挨拶をした。
「本当に色々ありがとうございました」
「ああ、何かあればまた言ってくれ」
ベアトリスとドミニクがクレアをなかなか離さないので痺れをきらし
「申し訳ございませんが、そろそろ離してください。帰れません」
「もう。レオンは心が狭いわね!クレア嫌になったらここに帰ってきなさいね」
「お義母様…」
「そんな事はさせませんから」
リーフェンが扉を開け、レオンとクレアは外に出る。馬車まで少し歩きレオンが手を貸しながら乗り込んだ。
「本当にありがとうございました」
「気をつけて帰ってね」
手を振るベアトリスに頭を下げ馬車の扉は閉められた。
屋敷に戻るのが久しぶりなのと、メイドとしていた屋敷に結婚して戻るのが少し恥ずかしくどうしようかと思っていたら
「いつも通りでいい」
「掃除してもいいですか?」
「それは…エドガーに聞いてくれ。多分無理…な気もするが…」
──エドガーさん許してくれるかな…
馬車が屋敷の前に着いてレオンが降りると、エドガーとジョンが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「戻りました。長々すみませんでした」
「いえ、奥様お帰りお待ちしておりました」
「やめてください!!その呼び方なんか…嫌です」
「しかし以前と同じようには出来ません」
「エドガーさんお願いします」
クレアが泣きそうになってるのでレオンが助け舟を出す。
「とりあえず中で話をしよう。エドガーあまりいじめるな」
「はい、かしこまりました」
ニヤリと笑ってエドガーが中に案内する。ジョンが荷物を降ろし全て運び終わった頃、全員食堂に集まった。