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次の日昨日の疲れからいつもよりは遅めに起きたクレアだったが、朝の支度を終え夜会の片付けをしているメイドたちのところに行き声をかけた。
「おはようございます。なにか手伝えることありますか?」
「おはようございます。クレア様に手伝っていただくことはないです」
「でも昨日の片付けとか大変ですよね。あっあの辺掃除しますね」
周りが止めるのも聞かず、掃除をはじめる。
──あーやっぱり落ち着く。
見事な手際で掃除をすすめていくので止められず一緒に片付けているメイドたちもベアトリスの姿を見て固まった。
「クレア…朝から何をしているの?」
「おはようございます。掃除を…」
「とりあえず手を止めて朝食にしましょう」
まだ掃除を続けたかったがベアトリスには逆らえず1度用意をしに部屋に戻ってから食堂に向かう。
ドミニクとマシュー、レオンとウォルターとルイスがそれぞれ話をしていたがクレアが顔を出すと全員席についた。
「皆昨日の疲れは出てないか?」
ドミニクが夜会の成功と労いの言葉をかける。
「マシューとルイスは今日立つと言うしクレアも屋敷に戻るとか?」
「はい、そう考えております」
「まだゆっくりでいいのに」
ベアトリスは少し怒りを込めてクレアを見たが
「いつまでもご好意に甘えるわけには…」
「ここ数日賑やかだったのが寂しくなるな…」
ドミニクは噛みしめるように言って食堂に集まった皆の顔を見渡す。
ウォルターがそんな父親を見てくすっと笑いながら
「大袈裟だな。もう会えないとかじゃないんだから」
「ウォルターあなたは少し黙りなさい」
その場全員で笑い、湿っぽくなりかけた空気が和んだ。
食事後、ドミニクとウォルターは早々に仕事に出ていき、レオンはマシューとルイスが帰るのを見送る為もあるが今日は休みである。
「お姉様これからどうするの?」
「え?」
「まさかそのままメイドとして働く気じゃないよね?」
「ダメなの?」
「クレア…あなた何を言ってるの?」
「王女様の申し出受ければいいんじゃないの?通いで王女様付きで働かせてもらえば」
「お父様、いきなり王宮侍女にはなれませんよ」
「王宮はダメです!!」
全員がレオンの顔を見ると顔を赤くして口元押さえながら小さな声を絞り出す。
「他の人に仕えるとか…耐えられない」
「ゆっくり考えればいいわよ」
真っ赤になってる2人を完全に無視してベアトリスが段取りをはじめる。
ルイスとマシューが席を立ち帰り支度をはじめる。
「じゃあレオン様、お姉様をお願いします」
「クレア元気でね」
「お父様、ルイスも気をつけて」
ルイスがギュッとクレアに抱きつきながら顔だけレオンに向けて最後の睨みを効かせてから馬車に乗り込む。
またねと手を振って馬車の扉を閉めて出発した。
「寂しいか?」
「はい、やはり寂しいですね」
レオンがクレアを引き寄せて馬車が見えなくなるまで立っていた。
1度屋敷の中に入りクレアは着替えた。出かける用意を終えベアトリスの元へ向かう。
「用意できたの?」
「はい、行ってきます。母上は本当に残りますか?」
「そこまで邪魔しないわよ。2人で行ってきなさい」
「行ってまいります」
◇◆◇
馬車に乗り込み2人で教会へ向かっている。披露宴的なものは昨日の夜会で終わらせたので後は夫婦として宣誓して儀式的には終わりになる。
「ドレスは着なくても良かったのか?」
「昨日のレオン様に選んでいただいたドレスだけで充分です」
「今さらになるが2人だけの式で良かったのか?」
「注目浴びるのは慣れておりませんので昨日だけで…」
話をしていると中央の教会についた。レオンが手を出してクレアを馬車から降ろし、一緒に中に入る。教会には事前に知らせてあったので礼拝堂へ案内された。
神父からの内容説明を受け、神の前で宣誓をする。
「クレアを一生大事にするよ」
「私もレオン様を一生支えます」
宣誓書に名前を書き神父からの祈りを受け結婚の儀式は無事終わった。
既にお昼近くなっていたので少しお腹もすいている。馬車に乗ってから
「あっという間ですね。レオン様どうします?何か食べて帰りますか?」
「ああ、後前言ってたが欲しいもの見つかったか?あればそれも買えばいい」
「そうですね…じゃあ見てもいいですか?」
商店の並ぶ所まで送ってもらい馬車は待機してもらって2人で歩くことにした。まず空いてそうなカフェでランチを済まし、商店を見て回る。
「2人で歩くなんてはじめてですね」
「ああ、こんな買い物ははじめてだがクレアと一緒だから楽しいな」
レオンが笑うのでクレアが手を引いて次の店を指さす。
「次はこのお店見ていいですか?」
小さな雑貨を扱ってる店で、手作りのものを中心に扱っているから同じ物はないらしい。ひとつひとつ気に入った物を手に取って見て目を輝かせているクレアが可愛くて全部買おうと言い出すレオンにダメ出しをして、1番気に入ったガラス細工の置物を買ってもらった。
「大事にします。ありがとうございますレオン様」
包んでもらったそれを両手で大事そうに持ち嬉しそうに微笑んだ。
歩き疲れも出てきたので馬車で屋敷に戻る。
「あら、おかえりなさい。楽しんで来たのね」
「遅くなりましたベアトリス様」
にっこり笑ってクレアだけを引っ張り
「レオンは夕食まで好きにしててクレアは借りるわよ」
答えを聞くより先にひとつの部屋に入る。クレアを座らせてコホンと軽く咳払いをして目の前に立つ。
「今日教会で宣誓にサインしてきたわね」
「はい、してきました」
「じゃあ今日からでいいわよね?」
「…何をでしょうか?」
意図がわからずクレアが尋ねると
「部屋は今日から一緒でいいのよね?」
「え?」




