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夜会当日、朝から公爵家は慌ただしい。

ベアトリスは朝から動きっぱなしで、何か手伝えるか聞く暇もないほど動いていた。


「クレア様、今日は予定が詰まっております」


気合いの入ったメイドがズラっと並びまずお風呂に連れて行かれた。自分でやりますと言う反抗をしてみたものの、軽く却下され頭の先から足の先まで入念に花の香りをつけた石鹸を泡立て洗われた。

甘い香りがきつくクラクラしそうだった。


「夜には薄まりますので今は濃く残るように配合されております。今は我慢してくださいね」


「はい…」


もう言われるがままである。こんな体験もそうは無いと考えを少し改め流れに任せる事にした。


髪を乾かしてる時にサンドウィッチとお茶を持ってきてくれた。この段階で既にお昼はすぎている。今しかゆっくり食べられる時間はないかもとを味わって食べた。


お茶を飲んで一息着くと、本格的に髪の毛を乾かし、軽くセットする。ドレスを着てから本格的に仕上げるので顔周りのみしっかりと編み込みされた。ハンドケア、フットケア…とりあえずありとあらゆる所を仕上げ、最後コルセットを締められドレスを着込む。メイクをしてラストの髪を仕上げ、見事な令嬢が出来上がった。


──仮の姿みたいで…私じゃないみたい。


「うわあーお姉様綺麗」


お許しが出てルイスが部屋に入ってきた。


「ルイス。貴方も素敵ね」


いつもとは違う礼服を着て髪も後ろに流し額を出しているルイスも実際の歳より大人びて見える。


「あークレア本当に素敵だよ」


「お父様ありがとうございます」


マシューも入ってきて泣きそうになっている。トントンと音がしてベアトリスが入ってきた。


「ベアトリス様、とても素敵なドレスありがとうございます」


「ふふっ似合っているわクレア。でもこのドレスはレオンが用意したものよ。私は手伝っただけなの」


「レオン様がですか?」


──知らなかった…いつの間に…


ベアトリスが目を細めクレアの手を取る。


「グレースが本来ならやっていた事だけど、ここまでの準備は母親として楽しかったわ。今日はずっと胸を張って前だけ見てレオンに任せていればいいからね。私は貴方が娘になってくれて本当に嬉しいの」


「ベアトリス様には感謝しかございません。まだ実感わきませんが乗り切れるように頑張ります」


ベアトリスはクレアを優しく抱きしめる。


「ちょっとおひとり確実に絡んでくる方いると思うけど、害はない方だから笑って許してね」


「え?絡んでくるって…?」


すぐ分かるからと笑ってベアトリスは会場に戻っていった。


「絡むって何?」

「さあ?」


──出来れば絡まないでいただきたい…今日は余裕ないのよ…


既に少し泣きそうになってきた。



そろそろお客様が来るという時間になったので主賓の公爵夫婦はお迎えの為会場に入る。その後ろに控えると言うことでレオンが迎えに来た。


「クレア…綺麗だ」


目を細めクレアの手を取り甲にキスをする。そのままその手を引いて会場へ向かう。大きな扉が開かれていて、一歩中に入ると煌びやかな世界が広がっており、ズドンと不安がのしかかる。


「私…大丈夫ですか?レオン様…」


「大丈夫だ。誰よりも綺麗だ。私もいるから何も心配しなくていい」


はいと答えたが緊張感は増してくる。

中には公爵夫婦と、もう1組男女がいた。長男のアントニーと夫人のエリザベッタである。ウォルターもいた。


「やあやっと逢えたね」

「はじめまして」


「はじめまして。クレアと申します」


2人ともクレアの緊張が伝わったのか、笑いながら気楽にねと声をかけてくれた。


「クレア最高に綺麗だよ」


ウォルターがクレアに近づくのでレオンが一定の距離を取る。


「ウォルター様ありがとうございます」


「でも顔ガチガチだな。いつも通りでね」


ウォルターも笑って和ませようとしてくれる。それがとても嬉しかった。

クレアが入ってきた扉とは反対側の扉が開け放たれ、着いた順番で次々と名前を呼ばれ招待客が入ってきた。

まずハミルトン公爵夫妻に挨拶し、それぞれ子息の元へもやってくる。


「まぁレオン様にもお相手が…」

「君にもやっとか」

「泣かれる方いっぱいね」

「うちの娘もよろしく頼む」

「お似合いね」

「どちらのお嬢様かしら?」


…本人目の前ではお世辞しか言わないが、その場を離れてからクレアに注がれる視線やコソコソ話などは容赦がない。


──予想以上だわ…吐きそう…


レオンはクレアの腰を抱き離れず側にいるが届く声には目線で牽制しながらもクレアの耳元で囁く。


「どうしてもとなれば避難するから言ってくれ」


「ありがとうございます。レオン様」


最後の方で入ってきたマシューとルイスが顔色悪いクレアを心配して駆け寄ってくる。


「お姉様大丈夫?」


「頑張ります…」


ほとんどの招待客がホールに入り後は数人となったところで扉あたりでいた人がざわつく。


クレア達がそちらを見ると


「リットン伯爵様?ヘンリー様!!」


ヘンリーは1人で歩いて、杖をついたアドルフを支えている。この2人の体調もあるので執事も後ろに控えている。


「遅くなってすまないクレア」


「ヘンリー様お身体は…」


「大丈夫だよ。さすがに長くは無理だけどね」


「伯爵もありがとうございます」


クレアがリットン伯爵、ヘンリーと話しをはじめると周囲がざわめく。降って湧いたような娘だと思っていたら伯爵との繋がりも?と興味津々な人達はクレアたちの一挙一動に注目する。


「公爵…今回は色々…お礼申し上げる」


「伯爵にとってクレアは孫ではありませんか」


公爵は周囲に聞こえるように大きな声で言い放つ。今回あえてリットン伯爵を呼んだのはクレアのバックに誰がいるか広く知らせる為だ。

ハミルトン公爵とリットン伯爵は少し話をしている。ベアトリスはまだ完全に許してないのか、扇から見えてる眼からは怒りの光が見える。


ザワザワと騒いでいるのは先程と変わらないが質が変わった。クレアは少し身体の力が抜けた。横にいたレオンがその変化を感じる。


「クレア少しは楽になったか?」


「はい…ここまで考えてらしたのですか?」


「母上がな」


──ベアトリス様…


ほぼ招待客が揃ったところで公爵が始まりの挨拶をしようと壇上へ進もうとした時また騒がしくなる。


「おや、僕達が最後かな?」


そこには第一王子と末の王女が揃っていた。


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