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夕食の準備ができるまで、ルイスはずっとクレアにベッタリとくっつき、レオンと会話もできないように邪魔をしている。


「俺何かしたのか?」


普段相談などしないウォルターに思わず聞いてしまうほど身に覚えがなく戸惑っていた。


「何をしたのか本当に分かってないのか?」

「なっ、お前に分かるのか!」


ウォルターはやれやれと情けない弟を見ながら


「そりゃお前はルイスの1番大事な物を奪っていく悪者だからな」


「は?」


「姉であり母の様な唯一の存在をお前に取られるんだ、意地悪もしたくなるだろ?」


「!!」


「ルイスに反対されたらクレアも結婚を考え直したりして」

「それは…」


ないと思いたい…。クレアが働きに出たのはルイスの為だ。それ程大事にしている弟だ。万が一その可能性もあるかもしれない…レオンはどんどん不安になっていく。


──クレアがいなくなるのは耐えられない。


どうするのかなとニヤニヤしながら見ているウォルターの存在は完全に忘れてその場で考え込むレオン。

そのレオンをぐるっと1周しても何も反応がないので面白くないとウォルターは部屋を出ていった。


かなり長い時間そのままでいたレオンだが、目を見開いて決意をしルイスの元に向かった。


クレアの部屋をノックして中に入る。クレアは顔を上げ立とうとするも、腰にルイスの腕が巻きついていて立てない。


「ルイス!お願い離して」


「お姉様と離れたくない!」


困ってレオンを見ると、座っているルイスの前に立ち静かに話しかける。


「2人で話がしたい」


「レオン様…あの…」


「いいですよ。僕も言いたい事あるし」


ルイスもすっと立ち上がり背の高いレオンを睨むように目線をあげる。


「クレア2人にしてくれるか」

「お姉様きちんと話をするので」


2人に言われればしょうがない。扉閉める瞬間まで中を見ていたが、諦めて最後まで扉を閉めた。






「レオン様怖い」


うるうると目を潤ませ上目遣いで言って見たがレオンは表情を変えないので、すっと態度を変えた。目にかかるほどある長い前髪を片手でかきあげレオンを睨みながら


「俺は認めない。お姉様はまだ誰にもあげない」


「それが素なのか」


ニッとレオンが笑ったので少し眉間に皺を寄せたがルイスは続ける。


「公爵令息への無礼を後で咎めないよね?今までは俺より偉い人がいなかったから思う存分言ってきたけど」


「今まで?」


「お姉様にどれだけの男が言いよってきたと思ってる?あの人無自覚のキラーだからね。全部俺が潰してきたけど」


「なのに俺の元を離れた瞬間だよ!こうなる予感がしてたから反対してたのに…俺がもっと領主として力があれば…」


「後は何とかするのでお姉様は連れて帰ります。結婚は諦めてください」


ルイスは一方的に喋り腕組みをして精一杯の去勢をはる。


「ルイスにとってクレアがどれだけ大切な人なのかは俺には理解できない…」


「は?理解して欲しいとも思わないよ。お姉様は俺にとって絶対だ!」


母の記憶などほとんどない。全ての愛情はクレアが与えてくれた。ルイスにとってクレアの代えはいない。簡単に理解するとか言われるのが嫌いだった。


「理解しようとは思わない。それは君の感情だから」


「!!」


「だが、俺にとってもクレアは唯一の人だ。簡単に諦めたりなどできない」


「後から出てきて勝手な事言うな!あんな…俺が見たことないような顔をさせるな!!」


実際は分かっている。クレアが今まで見たことがない、自分を見る時とは全く違う顔をしている事を。選んだこの人を自分が拒否しても無駄な事を。今までにない、本当に自分より他の人を選びいなくなってしまう事への恐怖感を…


「お姉様を…とるな」


我慢していた涙が出そうになるもグッと堪える。


「クレアを諦めるのは無理だ」


「君のクレアを思う気持ちと俺の気持ちを天秤にかけたりはしない。それは同じようで全く別の物だ」


「クレアが君を全力で守っているなら、それごと俺が全力で守る」





「安心して、信じて、君ごとクレアを任せてくれないか?」




──ああ、この人がお姉様が選んだ人か…


我慢してた涙が頬を伝う。急いで手で拭いてレオンに背を向けるが次から次と溢れる涙はすぐには止まらない。

後ろから大きな手で頭を撫でられ、ばっと払い除ける。


「俺を子供扱いしていいのはお姉様だけだ」


「そうか」


「…もしお姉様がちょっとでも不満や不安を口にしたらすぐに連れて帰るから!監視もつけるからな!!」


「了解した。そんな事には絶対ならないから安心しろ」


自信満々余裕の笑みで言ってくるのでグッと肩を上げ睨もうとするが、ふっと力を抜いてそのままソファーに座り込んだ。上を向いてフーと大きく息を吐く。そのまま少し時間を置いて、気持ちを切り替える。

ん!と勢いをつけ立ち上がりレオンの真正面に立ちしっかりと頭を下げる。


「姉をよろしくお願いいたします」


「ありがとうルイス」








──中はどうなっているのかしら?結構経つけど…


扉の前でウロウロしてるとリーフェンが夕食の準備ができたと呼びに来た。


「何かあったのですか?」


どう説明しようと思っていたら中から2人が出てきた。


「準備ができたなら一緒に行こう」


レオンがクレアを引き寄せ腰を抱き向きを変える。


「え?」


クレアは横にいるレオンの顔を見て、さらに後ろにいるルイスの顔を見る。


──何も説明してくれないの?


「行こう」


歩き出すとルイスもついてくるがクレアの腰にまわっているレオンの手を後ろから引っ張っる。


「調子乗りすぎ。俺の前ではやめてください」


「俺!?ルイスどうしたの?」


ルイスはにっこり笑ってレオンとクレアの間に入る。


「認めても邪魔しないとは言ってないよ」


ニヤっと笑うルイスを上から一瞥しレオンもニヤっと笑う。


「あの…私に説明は?」


「とりあえず行こう」


「お姉様皆さまお待ちですよ」


1人意味がわからずキョトンとしているクレアをルイスが引っ張って歩き出す。

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