表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/50

36

公爵家に戻って屋敷に入った瞬間、ベアトリスがクレアを抱きしめた。


「おかえりなさい。お茶用意しているわ甘いものと一緒にいただきましょう」


「ありがとうございます」


何も聞かず、労わってくれるのはとても嬉しかった。


「母上クレアをよろしくお願いいたします」


「あら貴方の分もあるけれど?」


「私は少し出てきますのでよろしくお願いいたします」


レオンはそう言ってまた玄関から出ていった。


テラスに移動してベアトリスと向き合って座る。メイドがお茶とお菓子を用意してくれた。

お茶を1口飲むと緊張が一気にとけた。


「美味しい…」


「良かったわ。そう夜会はマシュー達にも招待状送ったから報告もしてね」


「え?」


「レオンとの事まだ話してないでしょ?」


ベアトリスの言葉を聞いてまだ何も伝えてない事に気がついた。両手で頬を押さえ青くなる…。


──手紙出すの忘れてる…ルイス怒ってるかな


「後、ヘンリーの病状なんだけど、毒が何か分かったからだいぶ楽にはなったみたい。改善されるまでは…無理なようだけどね」


「少しでも楽になっているなら良かったです」


「これで心配事は無くなったわよね。クレアはこの後ダンスの練習ね」


ベアトリスがニコリと微笑む。


「ベアトリス様もうダンスは…」

「何度も言ってるわ。必要だから」


執事のリーフェンが後ろに控えていて、またも断れない雰囲気だ。

お茶を飲み終わった後、ダンスを叩き込まれる。時間的には短いが細かく指導が入ったので、レオンが帰ってきたとメイドが知らせにきた頃にはヘトヘトになっていた。


「母上!」


「あらちょうどいいわ。貴方とも合わせないとね」


「え?」


「無理です無理です!!」


──レオン様の足を踏むなんて…出来ない


「はい、準備して」


完全に無視でにっこりと微笑みながらホールの中央に2人を残す。

オズオズと向かい合っていると


「クレア手を」


レオンがやっと声を出してクレアの手を取る。リーフェンがゆっくりとピアノを奏で始める。


「え?」


不思議に思っているとレオンがリードして静かに踊り始める。力強くリードしてくれるおかげでクレアも不安なく踊れている。レオンと目が合うととても優しく微笑んでいる。


──レオン様…


1曲踊り終わった時、レオンがクレアの手を取って膝まづいた。


「クレア、君にはずっと側にいて欲しい。私と結婚してくれますか?」


「レオン様…私でいいのですか」


涙が溢れてきて震える声で聞くクレア。


「もちろんだ。君が…クレアじゃないとダメなんだ…」


「クレア」


名前を呼ばれて一気に沸騰するように全身熱くなる。


「…はい。よろしくお願いいたします」


レオンが立ち上がりクレアの涙を手で拭いそのままクレアを確認するように抱きしめた後そっと身体を離すと、いつ用意したのか手には花束を持っていてクレアに渡す。


「クレア愛してる」


花束を受け取りながらさらに涙が溢れ「私もです」と言いたいのに声が出ない。

そんなクレアを慈しむように見てもう一度抱きしめる。


扉からベアトリスがまあまあねと笑いながらリーフェンと出ていった。


2人になったところで涙の後のつく頬を挟み、レオンがクレアに口付けをする。

クレアはもう限界を迎えていて身体から力が抜ける。レオンが急いで支えて椅子に座らせる。


「大丈夫か?」


「…はい。すみません慣れていなくて…」


「驚かせた方がいいと言われて…」


「びっくりしました。でも嬉しいです。レオン様…」


「ん?」


「私も…愛してます」


小さい声で思い切って言ったクレアだったが、声に出すとさらに恥ずかしさが増し顔を覆ってしまった。

レオンも顔を真っ赤にして一瞬固まったがクレアの手を取り


「ありがとう」


と微笑んだ。クレアも幸せいっぱいの顔で微笑み


──可愛い…


レオンがもう一度口付けしようと顔を近づけた時


「あっあの!」


クレアの不意の言葉で止められる。


「私何もルイスに伝えてなくて…もしかするとちょっと我儘言うかも…」


「ルイス?ああ弟君だね」


「はい。大丈夫だとは思うのですが…」


「大丈夫だ君の弟なら」


──だといいけど…昔から私に近づく人に当たりきつかったから…


「そんなに心配か?私は認めてもらえないか?」


「そのような事はありません!レオン様を認めないなんて」


「では、そんな顔せず笑ってくれ」


考え込んで表情が曇っていたようだ。余裕なレオンを見てクレアはふっと力を抜いて笑う。


「さすがご主人様、色々慣れてらっしゃいますね」


「前から言おうと思っていたが、慣れてるとかない…後また呼び方戻ってる」


「あっすみません」


「本当にダメと言われても認めてもらうよう尽力する」


レオンがクレアを安心させるように笑いながら言った。


「さて、そろそろ夕食だろう」


レオンは椅子から立ちクレアの手をとる。そのまま食堂まで2人で向かった。






「あら、もういいの」


「ご協力ありがとうございました」


──やっぱり伝えてあったのね


また恥ずかしさを思い出し顔が赤くなるクレアを席にエスコートするレオン。

公爵も席につき和やかに夕食を楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ