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次の日、朝食を食べ終え食器を持って片付けに行こうとするクレアをウォルターが呼び止める。


「片付けなんてやらなくていいから。それより今日は動いても大丈夫?じゃあ前に約束したよね。結果見せてね」


嫌な予感しかしなかったが、連れて行かれたのが練習ホールだったので


「ウォルター様…本当に申し訳ございません。ダンスは…」

「はい手を取って。まず音楽かけずにやるよ」


強引に引っ張られホールドを組まれる。


「前にも言ったよね。まず身体でリズムを覚えて…ああ、ちゃんとできてるよ」


はじめにリーフェンと踊った時よりはマシになっている気はするが…やはり足元ばかり見てしまう。


「ほらクレア、顔を上げて。足ばっかり見ない」


言われて顔を上げるとバッチリとウォルターと目が合う。にっこり微笑むとさらにしっかりと腰を抱かれ、ペースを速めた。


途端にグダグダになるクレア。


「ちょっと待ってください!速いと無理です…」


「弱音は吐かない。さあもう1度、音楽と合わせようか」


もう1度とウォルターが手をとった時、バンっと音がして扉が開く。レオンが肩で息をしながら立っていた。ズカズカと2人のところまで歩いてきてクレアの腕を掴んで自分の方に引っ張る。


「おいおい乱暴だな。クレア困ってるじゃないか」


何も言わずウォルターを睨んで掴んだ腕はそのまま部屋から出ていく。レオンは大股で歩いているがクレアにとっては歩くと言うより走るスピードで気がつけば裏庭に出ていた。


手を離してクレアに背を向けて黙っているレオンに、息を整えてから声をかける。


「ご主人様?」


「すまない…」


まだ背中を向けているので、どうしようか迷ったが全く振り向く感じがないので、思い切ってレオンの前に回り込む。


「大丈夫ですか?体調でも…」

「…ウォルターの申し込みを受けたのか?」


「え?」


「夜会はウォルターと出るのか?」


いきなりの話で少しびっくりするが、すぐに元に戻り


「あのお話はお断りしようと思っております」


「断る?では…」


「ウォルター様もご主人様も夜会で大事な事がありますし私は裏方としてサポートさせていただきます」


今度はレオンが眉を寄せて一瞬固まる。


「大事な事?」


「はい。ご婚約の為の…」

「婚約?」


「王女様とご婚約がお決まりだと…」


「決まっていない!!」


大きな声だったので胸の前で手を合わせびくっと肩があがる。

レオンはその手を取ってクレアを引き寄せまっすぐ顔を見る。


「俺が側にいて欲しいのはクレアだ。クレアしかいない」


手をさらに引き寄せクレアを抱きしめ


「君が好きだ。ずっと側にいて欲しい」












そのままなんの反応もなく、腕の中のクレアも全く動かないので腕の力を抜き肩に手を置き顔を覗き込む。


「クレア?」


顔は真っ赤で目は開いてるが何も見えてないような表情で、しかし段々とフルフル細かく震えだしカクカクとした動きでその場から逃げ出そうとする。


──可愛い。


レオンはそう思うがそのまま逃げ出されるわけには行かず素早く腕を掴みまた引き寄せて抱きしめる。


「クレア返事は?嫌なら振りほどいてくれていい」


もう振りほどかないと分かって言っている。


──嬉しいけど嬉しいけど!!


「クレア」


優しい声で名前を呼ばれ恐る恐る顔を上げ小さな声で答える。


「私も…ご主人様を…お慕いして…」

「名前を呼んでくれ」


レオンは今まで見たことないような笑顔でクレアを見ている。


「レオン様をお慕いしております!!」


ちょっとやけ気味にクレアが叫ぶと抱きしめてる力がさらに強くなりクレアの肩に顔を埋めて


「よかった…」


とレオンはつぶやいた。







その様子をウォルターと昨日せかされて様子を見に来たエドガーが扉から見ていた。


「上手くまとまったみたいだね。よかった」


「はあ…だから私が来る意味なかったのでは」


「まあそう言わず、この機会に君に聞きたい事があるんだ。私は君のようになりたくてね。その容姿を持って今も1人なのは不思議だよね。確か君も貴族の末席だったはず…」


「私の事はいいんですよ。着飾った女性が苦手なだけですから」


「おや、それだとクレアはその条件から外れていた訳だ」


嫌そうな目をしてウォルターを見るが、視線を2人に戻し


「お2人が幸せならそれでいいではありませんか」


そうだねとウォルターも微笑み、綺麗にまとまりそうだったが、ベアトリスの雷が落ちるのはこの後すぐである。






「そこに座りなさい」


クレアとレオン、ウォルターまでベアトリスの前に座らされる。ベアトリスは扇を閉じ、まずはクレアに


「食器を片付けたりはもうしないでね。後、無理はダメと言ったのは昨日だと思うけど」


申し訳ございませんと頭を下げる。


「ウォルター、貴方クレアの体力戻っていないのに連れ出してダンスとか…」

「いや、練習も必要…」

「お黙りなさい」


もう何も言えない。そして最後にレオンの前に行きパンッと扇を片手に振り下ろし


「レオン。貴方は何をしたか分かっているの?嫉妬からの勢いで、しかも裏庭でなんて。何も持たず、何も渡さず何をしているのかしら」


「え?」


「クレアの気持ちを考えたことあるの?」


「ベアトリス様!私は別に…」

「クレア、ここは引くところではないわ」





「夜会までにやり直しを!!」


その場の全員がベアトリスの言葉に驚く。


「貴方たちのお父様はそれは見事な演出でしたわよ。お前も少しは考えなさい!」


「え?あっ…その…はい。分かりました」


──ベアトリス様…レオン様には酷です。しかも私も恥ずかしい…

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