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公爵家に戻るとクレアは寝ていたので、ベアトリスにしばらくここに滞在させてもらう許可をもらいに行く。


「別に構わないわよ。あっ前から言っていたと思うけど我が家主催の夜会があるから参加してね」


「夜会?いつも通り不参加で」


「あら無理よ。元々貴方たちのお相手見つける為の夜会なんだから」


「俺はいい」


ベアトリスは息子の目を覗き込む。レオンが後ろに下がると同じだけ進む。


「何か?母上」

「クレアから返事はもらってはいるのよね?」

「返事って…」


レオンが少し動揺したのを見て


「まさか何も言ってないの?」


「いや、あの、特別にどうとは…」


口元を片手で隠しながら顔を赤くさせている息子を見て情けなくてため息を吐く。


「もう少し話が進んでいると思っていたのに…また計画立直しだわ」


ほんとにもう!とブツブツ言いながらベアトリスはくるっと向きを変え歩き出す。扉の所からレオンに向かって


「クレアも参加させるから!側についていなくてもいいなら不参加でいいわよ」


「え?いや、ちょっと待ってください!クレアも参加させるのですか?」


「先ほど了承をもらったわ。着飾ったクレアは目立つわよ。声もかけられるでしょうね」


にっこり笑う母親に、完全にしてやられるレオン。


「…私がエスコートします」


「あらそう。じゃあそう言う事で」


ベアトリスは出ていったが笑い声は響いていた。


──母上には敵わない…


夜会など面倒くさい事この上ないが、クレアを1人にする訳にはいかない。しっかりとガードする必要があると思いながら、着飾ったクレアを想像して少し微笑んでしまい、ブンブンと頭を振って立ち上がりクレアの寝ている部屋に向かう。


ノックして中に入るとクレアは目を覚ましていた。レオンを見て起きようとするのでそのままでいいと言ってそばに座る。


「顔が赤いが熱でも出たか?」


「少し怠いですが、朝よりはるかに楽ですので大丈夫です」


「今、少し話をしても大丈夫か?」


「はい、このままで申し訳ないですが…」


それは構わないと言ってレオンは両手を握りしめ少し間を開けてから語り出す。


今ニコルが牢に入っている事。誘拐については無理やりではないと主張している事。クレアが結婚に同意してその準備だったと話をしている事。今沈黙を続けている為処分が下せない事、そして


「事実との照合の為1度会う必要がある…私も同席するが嫌なら断ってくれていい」


レオンが辛そうにクレアを見つめる。その顔を見て目を閉じしばらく考える。






「ニコル様は私に会いたいと思ってらっしゃいますか?私と会うとさらに辛い思いをさせてしまいませんか?」


「ニコルの心配などしなくてもいい!クレアがあいつを見る方が辛いだろ」


──でも私は…ニコル様を拒絶した…


黙るクレアを見てジワジワと湧いてくるものがある…


「そんなに…あいつが心配か?」


「え?」


「結婚に同意したと言うのは…本当なのか?」


クレアがニコルを選ぶことはないと思うが確証を得てる訳では無い。ずっと、もし本当にニコルを選んでいたらどうしよう、自分よりもニコルを…。そう考え潰れそうになるのを必死に打ち消してきたがクレアからその答えを聞いてしまったら耐えられる自信はない。


「同意などしていません!私はレオン様を…」


と勢いで身体を起こそうとしてしまい痛みでうずくまったが、同時に言ってはいけない事を口走ろうとした自分の口を押さえる。


──ダメダメ。馬鹿なの私、言っちゃダメ!!


「無理するな!大丈夫か?」


「はい。私は同意などしておりません」


レオンの顔を見ることができずうずくまったまま答える。


「身体が治るまで時間はあるからゆっくり考えてくれ」


──良かった…やはり同意してなかった。







「なにをやっているのかな?」


クレアの食事を用意してメイドと一緒に持ってきたが、目の前の光景があまり面白いものではなかったので、思わず声が出た。


「クレア食事だよ。食べさせてあげようか?」


「お前がするくらいなら俺がやる!」


「レオンは乱暴だからね。私の方がいいよね?」


「いえ、自分で食べますので…」


クレアの返事は全く聞こえてないように兄弟の言い合いが始まる。メイドが助けを求めにリーフェンを呼び、なんとかその場を収めた。

クレアは上半身をゆっくり起こし枕を背中にあて、1人で食事をとった。2人が見ているのが恥ずかしかったので退席してもらいしっかりと食べた。


──早く体力戻さないと!



しばらくしてリーフェンがレオンからの手紙を持ってくる。内容は屋敷に置いてあるクレアの荷物を1度持ってくる事と、先程はすまなかったと書いてあった。兄弟喧嘩しているところを見られて、恥ずかしくて部屋に来れないみたいですよとリーフェンに言われくすっと笑う。ただ、いずれ戻るつもりなので荷物はそのままでもいいのにとは思うが、そんなに量もないのでいいかなと思い直した。




次の日、朝はベアトリスが様子を見に来てくれた。


「もう大丈夫?」


「はい。今日は起きて動きます」


「そう?いきなりで無理しないでね。着替え必要でしょ用意させるわね」


「動きやすい服お願いしてもいいですか?」


えーと文句を言っていたベアトリスだったが、用意してくれた服は幾分押さえたワンピースだった。

1人で大丈夫ですと手伝おうとしたメイドにお礼を言って下がってもらった。



お昼すぎ、レオンの指示でクレアの荷物を持ってノラがやってきた。部屋まで案内されクレアと2人になると、泣きながら抱きついた。


「よかったよかったわ!本当に心配したのよ」


「ノラさん…ご心配かけてすみません」


「もう大丈夫なの?見た感じは前と変わりはないけど」


「はい。昨日までは怠さ残ってましたがもう大丈夫です。屋敷の皆さんにも早く会いたいけど、しばらく公爵家に滞在するので」


ノラとの会話は楽しくついつい長くなってしまいそうだったが、クレアがいない分ノラも忙しいらしく、早めに戻ると言うので身体を慣らす為に玄関まで見送る事にした。

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