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レオンがケガして2日後の朝、朝食を持ってエドガーが部屋まで行くと、普通に支度をして出ようとしてるレオン。
「何をやっているんですか?」
「これ以上休むわけにはいかん」
「お願いしますから後数日包帯取れるまではお休みください」
とりあえず用意された朝食は急いで食べ部屋を出る。
前に立ち、制止しているエドガーだが、体格差もあり玄関まで押し切られる。
レオンが玄関扉に手をかけるタイミングで外から開けられた。
「やっぱり動くつもりかレオン」
「団長!」
レオンが所属する第2騎士団団長が目の前に立っていた。
ズカズカと入ってきてレオンのケガしてる腕を掴みホール中央まで連れてくる。
「ほらまだ痛そうだ」
ニカッと歯をみせ豪快に笑う。傷口を直接掴まれたレオンは腕を押さえ痛みに耐えながら団長を見る。
「なんなんですか!」
「いやきっとお前さんなら今日から出そうだろうから、休ませに来ただけだ」
「団長自らですか?」
エドガーがここではなんですのでと応接間へと案内して2人を座らせる。
お茶を用意してテーブルに出す。カップに手を伸ばし団長が一気に飲み干す。
「というのは冗談でだな、公爵家…お前さんの実家から申出があってな」
「は?」
「この家の護衛を我が団でやることになった」
「まさか!!王宮騎士団ですよ!!」
「それは知らねーけど、命令されたら従うだけだろ?お前さんは休みながら自宅で仕事できるわけだ。まぁそんなに人数さけないから人選は任せる。ジンが立候補してたが…」
「あいつはダメです」
「まあ決まったら連絡くれ」
ガハハと豪快に笑い、おかわりを入れてあったカップを手に取りまた一気に飲み干してじゃあなと団長は帰って行った。
「自宅勤務と言うことですか?」
「そう…なるな」
エドガーがお茶の後片付けをしてるとふと気がついた。昨日から姿を見てない事に。
「…エドガーあの…いや」
「クレアさんならレオン様に会いたくないと言ってますが」
手は止めず横目でレオンの表情を見ながら聞きたがってる事を先に言う。
「は?」
やれやれとエドガーが応接間を出て行ったが気がつかないほど、その場から動かず考え込んでいた。
調理場に食器を持っていくと、ドナルドが遅めの朝食を食べていた。
「なんかあったか?」
「この屋敷の護衛に騎士団がつくみたいですね。てっきり公爵家の護衛が来ると考えていたんですけど」
「え?それって…」
洗い物をしながら、自分がここにいるせいかとクレアは思う。
──どうしよう…なんか私1人の為に話が大きくなってない?そんなに守ってもらう必要ある?だって要は親戚のゴタゴタに巻き込まれる…かもの可能性低い話で…
「考えこんでるところすみませんがちょっと頼まれてくれますか?」
「…あっすみません。なんですか?」
『朝食の食器そのままなので取ってきてください。あっご主人様と目は合わせないでください。返事も極力しないでください。機嫌悪いので』
わざわざ頼まれる事でもないが、洗い物終わらせてレオンの部屋に向かう。
──機嫌悪いのは私のせいだよね…騎士団が屋敷の護衛っておかしいし…
はぁーとため息つきながら部屋をノックする。返事はないが部屋にいないはずと中に入る。思った通りレオンは部屋にいないのでベッドのシーツを交換し、部屋の空気変えるために窓を開け、後で掃除しなきゃなと思いながら食器を持ち部屋を出ようとする時扉が開く。
「あっ」
──目を合わせちゃいけない!
レオンを確認しながらも目をそらし、無言で礼をして部屋を出ようとする。
怒りで固まっているのだろうと急ぐ。
「まっ待ってくれ」
呼び止められて振り向いても顔は上げずにいると
「護衛の件は聞いたか?」
こくんと頷く。
「いや…あの」
「顔も見たくない程怒っているのか?」
──ん?今なんて?
顔をあげると困ったような表情のレオンがいて
「そこまで怒るとは思わず…」
──ん?ん?ん?
「すまない。できれば…」
「ちょっと待ってください!」
レオンとバッチリ目が合うが気にしてられない。
「お怒りなのはご主人様ですよね?屋敷の護衛なんて本来すべきものではないですし」
「俺の顔を見たくないんじゃ…」
「私がですか?そんなことは…」
何か話が違うなと後で確認しないと…と思いながら目の前のレオンを見ると
「そうか違うか」
本当にホッとした顔で微笑む。
──もうこのご主人様は!!
「怒ってませんが、私をからかうのはやめてくださいね!他の方にお願いします!」
真っ赤になりながら持ってるトレイを落とさないよう急いで部屋を出る。
からかったつもりはないが…と説明する間もなくクレアが出ていったので、椅子に座って顔を覆う。
エドガーから会いたくないと聞かされ、思ってる以上のショックを受けた。
先程目も合わせず、目の前から去ろうとするクレアを見て胸が痛くなった。
このままだったらどうしようと本気で思い目の前が真っ暗になりそうだったが、目が合った瞬間心から安堵した。
怒ってないと言いながら怒ったように出ていったのは何故なのか…
──何がどうなっている…?
とりあえず今自分の状態を処理しきず、だいぶ混乱しているレオンは最後の言葉に苛立つ。
──他の人ってなんだ?誰がいるんだ?俺に誰かいると思われてるのか…
少し前から理解できない状況に振り回されっぱなしなので、ブンブンと頭を振り今はそれどころじゃないと自分のことは後回しにすると決めた。
◇◆◇
調理場にトレイを持っていくとエドガーがまだいたので、問い詰めてもはぐらかされた。
「機嫌悪くないなら良かった」
「そうですけどね…」
──とりあえず心臓に悪い。