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はじめは家の馬車を使ったが、王都までこの馬車で行くにはお金がかかりすぎるので、街馬車が出てる所まで来て引き返してもらった。


──これで完全に1人だわ…


馬車の乗り場を探しとりあえず1番王都に近い街まで行く馬車に乗り込む。乗り心地は最悪だが高い馬車なんてもったいない。

時間も無駄なく宿もなるべく泊まらなくていいように乗り継ぎ、ギリギリで王都に着いたのは出発してから5日たっていた。


──お祭りでもあるの!!何この人の多さ!!


完全に都会に呑まれたクレアだったが、一瞬で現実に戻る。


──ぼーとする時間はないわ。さあハミルトン家に行ってお仕事もらわないと!!


で、…どこなの?





◇◆◇



人に聞いて、聞いて、やっとハミルトン家まで来たが…



──ここ?こんなに大きなお屋敷の方とお母様が知り合い?



ポカーンと門を見上げていたら、明らかに場違いな娘がいるので門番から声をかけられる。


「何か用か?こちらはハミルトン公爵家だが…」


「公爵家!!…あのすみません、こちらにベアトリス夫人はいらっしゃいますか?」


「公爵夫人だが、約束は?」


まさか公爵家だとは思ってなかったので、そのまま訪ねればいいと思ってた呑気な自分に腹をたてながら、すぐにきりかえる。


約束はしていないのでその約束を取り付けてもらえるように門番に頼む。すぐに会えないだろうし滞在費どうしよう…と考えながら、しばらく門の前で待っていたら先程の門番が急いで戻ってきて中に案内される。

門を通り中にすすむと黒いスーツを着こなした人物がクレアに一礼する。トランクを持っているので略式ではあるが膝を曲げクレアも挨拶をする。


「こちらへ。奥様がお待ちでございます」


「あっはい」


──会っていただけるのね。よかった…



案内された応接間はとても大きく綺麗で、ソファーもあったが座るのが申し訳なく立って待っていた。

しばらくそのまま待っていると、ノック音がして先程の執事が入ってくる。立ってるソフィアにびっくりするが、後ろから入ってきた夫人を案内する。


「クレアさん?」


「はい。はじめましてクレア・ブランドンと申します。何も約束ないまま来てしまい申し訳…」


言い終わる前に夫人に抱きしめられる。



─え?


「若い頃のグレースそっくりだわ」










「ごめんなさい」


泣いてクレアを抱きしめていたベアトリスは少し落ち着いてから話はじめる。クレアもソファーに座り目の前にいる夫人を見つめる。


「グレースとは幼なじみなの。本当に大切な友達だったわ。なのにあんな無理やりな結婚をさせられるなんて…あっごめんなさいあなたのお父様よね」


「いえ、父がダメなのはよく分かっています」


「あなたの祖父母にあたる方はグレースをよく思っていなくてね…」


母からは何も聞いてない話だった。でも恨み言も聞いたことがなく、あんな父親だったが2人は仲がよく苦労はしたが幸せだったと思うとクレアが言うと、目を閉じあの子らしいわと寂しげに笑うベアトリス。


「で、あなたは私の娘になりに来たのよね」


「ちっ違います!!私が働く所を紹介していただけないかと…」


にっこりと微笑んで突拍子もないことを言い出す公爵夫人に対しブンブンと頭と手を振って否定する。


「えー!グレースの娘は私の娘よ。このままうちの子になればいいのに」


「申し訳ございません!私は働いて弟を助けたいんです」


娘が欲しかったのに…とまだぶつぶつ文句を言っていたがなんとか説得したクレアだった。



「だったらちょうどいい所があるわ。私の息子が独立して街に住んでるのよ。なぜだか使用人が次々辞めちゃってね。そこなら娘を預けるのにちょうどいいし気兼ねなく会いにいけるしね」


「公爵ご子息が街にですか?」


娘発言は軽く流しとこう…


「三男で爵位は継がないし、騎士団の副団長とかしてるから気難しいのよねあの子」


「何か言われたらすぐ帰ってくればいいしどう?」


「もちろん喜んで行かせていただきます!よろしくお願いいたします」


断る理由はない。立ち上がり深々と頭をさげる。すぐに案内してもらって…と思っていたが、そこから夫人につかまった。

お茶してお菓子食べて、今まで着たことがないようなドレスを何着か着せられ、全部あげると言うベアトリスに、本当に受け取れません!!と必死に断りを入れ夕方近くやっと職場になる公爵家ご子息、レオン・ハミルトンの家に案内された。


公爵家の馬車の豪華でふかふかの椅子も恐れ多かったが、今目の前にある屋敷にもびっくりする。


『小さな家なのよ』


そう夫人は言ってなかったか?確かに公爵家よりは小さいが…

街中にあるには十分な大きさの屋敷である。



トントントンと扉をたたき待っていると執事らしき人が出てきた。長くのびた銀色の髪を後ろで結った20代くらいの、整った顔だった。


「ベアトリス公爵夫人から紹介いただきましたクレアと申します」


「どうぞ中へ」


扉を抜けてすぐにまた次の扉があり、その先には広いホールが広がっていた。中央奥に広い階段があり登りきった小さなホールから左右にわかれて部屋がある。

クレアは2階の客室に案内される。


「こちらでお休みください」


「ちょっと待ってください。私は働きに来たのでこのお部屋では休めません」


「公爵夫人から言われております」


「いえ、本当にここではない部屋にしてください!夫人にはまた私から報告しますので」


しかし…としばらく考え込んでいたが、本当に使用人の部屋でいいのか再度確認をとり、1階使用人部屋は今男性が主に使っているので狭くなるけどこちらでと屋根裏部屋に案内される。


「今日はご主人様はお戻りになりません。用意終わりましたら1階食堂までおこしください。その時説明いたします」


「ありがとうございます」


部屋を見渡す。1人で使うには十分な広さねとトランクをベッドの上に置く。

他に小さなタンスとサイドテーブルと椅子があり窓もあった。

持ってきた荷物は多くないのですぐに片付けは終わった。タンスの引き出しの中に黒のワンピースと白のエプロンがあった。



──これメイド服よね。ちょっと大きいけどこのまま着ちゃって大丈夫よね。



手早く着替えて部屋を出る。

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