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──ルイスの服を直す感覚になってたわ…
先程の行動を反省しながらエドガーの部屋に行こうとしていると食器を持って降りてくるジョンがいた。
「エドガーさんちょっと食べてまた寝た」
「ありがとう。リストはこれ?」
手を伸ばしトレイの上にあった紙を広げると
「何この量…」
もしかしてまだアレが続いているのかと思うほど、事細かくやることが書いてあった。本来従者の仕事も兼ねてエドガーが全て行っているので仕事量が多いのはしょうがないのかもしれない。
ちょうどノラが来る時間だったのでみんなで調理場へ集まる。
ドナルド、ノラ、ジョンがリストを見ながらあれこれ話し合っている。クレアは朝食を軽く食べ、準備を手伝えなかった分洗い物をしながらの参加だ。
「食材、飲み物なんかの手配は俺がやれるな。外商来るのも今日か…それも俺だな」
「花壇の植え替え準備は僕が出来る。屋敷周りの外壁修理も」
「私は普段の事だけで大丈夫?元々器用じゃないからね…あっ洗剤とかの在庫確認はできるからやるわ!」
洗い物が終わり、軽くお茶を用意してみんなに出しながら
「じゃあ残りは…執務室掃除とご主人様の予定確認、調度品の点検ね。今後の予算組みは無理だわ…ご近所執事との交流会?何これ。これは今回欠席でいいかな」
クレアは自分ができそうなのを選ぶ。お茶を飲んで各々仕事へと取りかかる。
いつもは洗濯を手伝うが今日はノラ1人で頑張ってもらい、クレアはまず執務室へむかう。朝見た時から片付けたくてしょうがなかった。
机の上にある書類をおおまか種類別にわけ、計算途中になっているものは中身の意味は分からないが最後まで計算し別紙に書いておく。壁際にある本棚はバラバラに適当に置いてあるが、もしかするとレオンが見やすい陳列なのかもと思い、埃を落とし向きだけ揃えた。
調度品の点検は別にリストがあってそれにそって数など確認していく。
昼食の準備はドナルドがしてくれていたので、ありがたくいただき、片付けを担当した。エドガー用の食事も作ってくれていたのでトレイにのせて持っていく。
トントンとノックすると返事があったので起きてるようだ。
「どうですか?」
「熱は下がったと思います。今からでも…」
「はい、それがダメです!これ食べてもう少し休んでくださいね」
文句言いたそうだったが、クレアの迫力に負け渋々従う。トレイを受け取り食べながら
「仕事はどうですか?」
「皆さんで手分けしてやってます。今からご主人様の予定を聞きに行くついで足りないものを買ってきますね。エドガーさんがいるものあります?」
「いえ…では後少しお願いします」
はいと返事して部屋を出るとドナルドが外商くる準備をしていたので
「私今から外出してきますね」
「1人で大丈夫か?ジョンは…」
「今日はみんな忙しいですし、ちょっと足りないもの買うだけなので大丈夫です」
「じゃあ頼む。気をつけてな」
街中抜けて王宮の入口にあたる門でレオンの家の使用人で主人に用がある旨伝え待っていたら、ジンが走ってやってきた。
「やっぱりクレアさんだ」
「ジン様そんなに急がなくても…」
「会いたかったし嬉しいな。すみませんあんな大口叩いたのに、本当はまだ会える立場ではないけど…でも嬉しいな」
本当に嬉しそうに笑うジンにつられクレアも笑顔になる。ジンは手で口元を覆い下を向く。
「あーうん、今は我慢、我慢…」
ぱっと顔を上げ
「副団長は今日視察に出られているのでそのまま帰宅されるそうです。簡単な視察だからそんなに遅くならないと思いますよ。明日以降は通常ですが後数日で地方への視察があるので2週間以上は王都から離れます」
「分かりました。ありがとうございます。ジン様も行かれるんですか?」
「僕も行きます」
「気をつけて行ってきてくださいね」
「…はい」
ジンと別れ、少し買い物して急いで屋敷に戻る。
玄関入ってすぐのホールにエドガーとドナルドがいた。
「エドガーさん起きてるんですか?」
「もう完全に熱はないですし、ゆっくりさせてもらったので大丈夫です」
「無理しないでくださいね。今回エドガーさんの仕事量見てびっくりしましたよ」
「人がいないですからね」
当然ですと残ってる仕事を片付けようとしだすので、今聞いてきたレオンの予定を伝える。
「2週間だとどうする?今日頼んだ食材も変更してもらうか」
「そうですね…また考え直しですかね」
2人で悩み始めたので調理場に行こうとしたらジョンが玄関を開けレオンを中に入れた。
「おかえりなさいませ」
「エドガーもういいのか?」
「はいありがとうございます。ご迷惑おかけしました」
そのまま2人で階段を上がって行くのを頭を下げながら確認して、ドナルドと調理場に行く。
夕食の準備はほぼ終わっていたので仕上げをしていく。
「2週間いないとなると、俺らも交代で休みになるかもな」
「え?そうなんですか?」
「クレアは家に戻る…のはさすがに無理か、まあまだ先だけどな」
決まっていないし後で考えようと思い食事の用意をする。エドガーがバタバタと入ってきて
「すぐ召し上がるそうなのでよろしくお願いします」
「はい」
なんだかんだといつもの光景に戻ってきてくすっと笑う。
「なんですか?」
「エドガーさんもう体調崩さないでくださいね」
「はいはい気をつけます!…今回はすみませんでした…」
最後はかなり小さい声で恥ずかしそうに言うから、ドナルドと2人でさらに笑った。