11
急いで着替えて調理場に急ぐ。
「なんだ着替えちゃったのか。俺も見たかったな」
「落ち着かないんですよ」
さて、何します?と2人で手分けして用意を進めていく。おおかた仕上がった頃エドガーが飲み物を求めてやってきた。
水を1杯飲んでふーと息をはき珍しくドスンと椅子に座る。
「どうかしました?」
「さっきから暑くて…」
ドナルドと顔を見合わせ、暑い?そこまでではないなと思いながら、エドガーの所まで行く。
「失礼しますね」
「なんです?」
額に手をあてる。やっぱり熱いですエドガーさん!!
「ちょっとこんな所いる場合じゃないです!熱ありますよ」
「まさか…」
熱があることを認めず、仕事を続けようとするのでドナルドに部屋まで連れて行って休ませるようお願いして、飲み水と冷やすものを用意して後に続く。大丈夫ですとまだ動こうとするのをドナルドが説教していた。
エドガーのことは任せて急いで食堂での食事の用意をしてレオンに知らせに行く。
執務室をノックして扉をあけると書類に目を通しペンを走らせていたレオンが顔をあげる。
「エドガーはどうした?体調でも悪かったか」
「はい…熱があるようなので休んでもらいました。お食事の用意出来てますがいかがしましょうか?」
「やはりな…分かった。すぐ行く」
はいと答えて先に食堂まで急ぐ。いつもお茶はエドガーが用意しているが今日はクレアが入れる。
──エドガーさんほど上手くないけど…
レオンが食堂に入ってくる。食事を出し、ある程度準備できたので入口まで下がろうとすると呼び止められる
「ちょうどいい。リットン家では大丈夫だったか?」
「はい。ニコル様と少し話しただけで特に何も」
「そうか…もうないと思うが嫌な噂も聞いたことがある。気をつけた方がいい」
「かしこまりました」
──次…とか言われたけど…今約束してる訳じゃないものね…
いつものように味わうと言うより流し込むように食べ終わった頃、
「ドレスは?」
「着替えました。今度ベアトリス様にお返しします」
「似合っていたからあのままでよかったのに」
──!!
一瞬でクレアの動きが止まる。
目を見開いて口も開いてびっくりした後、ジワジワと熱が上がるように真っ赤になる。
「ご…ご主人様!その…そういう事は意中のお嬢様に、言ってさしあげてください!!」
「そっ…外にいます!ので終わった頃参ります!!」
カクカクした動きで急いで食堂から出て、扉を閉めた後、調理場まで走る!
──天然なの?天然なのね!!びっくりするわーーーー!!
「おいおいクレアまで熱あるんじゃないだろうな」
調理場にいたドナルドが心配するほど真っ赤だったらしい。
その後食堂の片付けに行った時にはレオンは既に部屋に戻っていた。本来はついていないとダメだと思うが…
少しホッとしながら急いで片付けて
エドガーの様子を見に行く。
扉をそっと開けるとぐっすりと寝ているようなのでタオルだけ変えて出る。
──夜これ以上酷くはならないといいけど…
明日エドガーが動けないと困るなと思いながら、今日もなかなか疲れていたのであっという間に眠りについた。
朝いつもより少し早めに目が覚める。ふぁ~と伸びをして気持ちを入れ替え用意をしてエドガーの様子を見に行こうと階段を降りて行くと、ジョンが起きていた。
「おはようジョン」
「クレアさんおはよう」
一緒にエドガーの様子を見に行く事になり部屋の前まで来ると、明らかに中で音がする。
まさかと思いながら扉をノックして開けると服を着て起きようとしているエドガーと目が合う。
「おはようございます。もう大丈夫ですので…」
「ちょっと失礼します!…まだ熱ありますよ」
「これくらい大丈夫ですよ。これ以上休めま…」
「ダメです!!完全に熱下がって体力戻るまで部屋から出ないでください!!」
「は?」
「今日やることリストにしてください。みんなで手分けしてやります。判断出来ないものは後で聞きにきますので、お願いです寝てください」
「いや…でも」
「熱でもしもの事があったら…その後がもっと困ります。お願いします寝ててください」
下を向いていつもより小さい声で、クレアの泣きそうなお願いにエドガーは分かりましたとベッドに戻るしかなかった。
「軽く食べるもの持ってくるのでリストお願いしますね」
ジョンに紙とペンを用意してもらい
クレアは調理場に寄る。ドナルドが朝食の準備をしながら別メニューも用意してくれていた。
「流石です!ドナルドさん」
「これくらい大した事ない」
ここはお任せしますと言ってレオンの部屋まで行く。
他の部屋より豪華な扉をトントンとノックすると短く返事があったので外から声をかける。
「ご主人様おはようございます。エドガーさん今日もお休みなので…ご用意あればお手伝いしますが…」
ガチャと扉が開いて部屋着のレオンが出てくる。
「俺の用意はいい。執務室に置いてある騎士団の書類だけ持ってきてくれるか」
「かしこまりました。お食事もいつでも大丈夫です」
「分かった」
──朝ご主人様はいつもご自分で準備されてるのかしら?
そう思いながら執務室まで行く。机の上に乱雑に置かれた書類の中から騎士団に関係ありそうなものだけまとめて持っていく。
全ての用意を終え玄関にむかうレオンの後ろを書類を持ってついて行く。背の高さの違いは足の長さの違い…クレアは必死でついて行く。
──ん?
扉を開けてレオンに書類を渡す時
「ご主人様少し屈んで頂いてもいいですか?」
「なんだ?」
ちょっと屈んだレオンの後側に周り少し乱れていた襟を直す。
「ちょっと気になって」
気づけた事と直せた事が嬉しくてちょっとくだけた顔になってしまい
屈んだまま振り返ったレオンとバッチリ目が合った。
──あっ…しまった…
急いで書類を渡し姿勢を正して頭を下げ、いってらっしゃいませとレオンがいなくなるまで顔をあげる事が出来なかった。