帝国へ
次回から新章になります。
オレが帝国に!?
なんでそうなる!?
皆のざわめきが止まらない。
オレの胸のドキドキも止まらない。
王様のガタガタと震えは止まるわけがない。
「では調印としようか。
記念すべき両国の友好を祝ってな。」
「ままままままて!
なななななななぜそうなる!!??」
身体も声も震えまくりの王様が必死に声を絞り出す。
「なぜ?
どう考えてもこうなるだろう?
『シュトーレン』をこちらの保存食として提案。
そして作れるのはコムギのみ。
貴重な技術をもつ人材とアンとの交換。
これならば埋め合わせになるので、アンとの婚姻を勘弁して欲しい。
つまりはこうゆう意味で、今回の提案をしたのだろう?」
(言われてみればそうなるよな。
王様は動揺しすぎて、説明全然しなかったし、、)
「ばばばばばばかをいえ!
コムギは渡さんぞ!
コムギがいなければ我が国とて困る!
パンを含め、いろいろこれから助けてもらいたいのだからな!!」
王様がこれほど必死に、そして評価してくれているとは知らなかった。
こんなオレにありがたいことだなと、思わず少し目頭が熱くなる。
だが無情にも皇帝は続ける。
「では最初の通り、アンとの婚姻だ。
でなければ、食料の流通回復はせんぞ。
こちらとて苦しいのは『わかっている』のだろう?」
「ぐぬぬぬ、、、」
事前に帝国の食料事情が芳しくないとの情報を得ていたことを突かれると、たしかに見合う条件はオレの技術と知恵になる。
アンとの婚姻の要求はもしかしたら帝国が自国の事情を悟らせないようにした、情報操作もしくは『こじつけ』だったのかもしれないな、とオレはふと思った。
(事実そうなのだが)
「では、イストよ。
どうする、貴様はどちらを選ぶのだ?
可愛い従妹のアンか?
それとも貴重な人材、コムギか?
さあ選べ!
この場でな!!」
「ぐっ!うううぅぅぅぅ、、、、」
王様が鬼のような形相で皇帝を睨みつつ、悔しさもを噛み締めるように唇を噛み、苦悩している。
そして皆が沈痛な表情を浮かべる。
ショーニさんやアンも助け船を出そうにも、この万事休すとしか言い様のない空気の中では、ただ沈黙するしかない。
・・・仕方ないな。
「オレはいいですよ」
「「「「!!!」」」」
この場を納めるのは、これしかない。
アンの意思も聞いているし、オレがよしと頷けば
1番円満に解決だろう。
どれくらい帝国にいることになるのかわからない不安より、残してきた店やウル、リッチが心配だ。
まあ王様やショーニさんが上手くやってくれるだろう。
「皇帝陛下、これなら良いんですよね?
アンとの婚姻も無し、食料の物流回復も約束してもらえるんですよね?」
改めて念押しする。
「ああ、約束しよう!
即時、手続きをしよう。
約束する。
コムギ、貴様にも不自由はさせないつもりだ、安心しろ。」
「わかりました」
「っ!!・・・すまん、コムギ、、、」
王様が涙目で頭を下げる。
「いいんですよ、元々オレは余所者なんですから。
あ、でも店のことはしっかり頼みますよ?」
「うむ、、うむ、、っ!もちろんだ!!」
何度も何度も頭を下げる王様に思わず困ってしまうが、これで良かったのだろう。
でも、きっと忘れられないだろうな。
アンの今まで見た中で1番の辛そうな顔を。
身代わりになったオレへの懺悔か、安堵した自分への戒めか。
その表情にはいくつもの苦しさが込められていた。
「ではこれにて、解決だな。
これから我が帝国でよろしく頼むぞ、コムギ」
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