切り札の名前
区切りをよくするため、今回は少し短めです
国の一大事の案件をオレが決めるの!?
「いやいやいや!!」
「なぜだ?
コムギしかおらんだろう?
パンについてお前以上に信頼出来る者はおらん。
それに、お前のメロンパンが関わっているのだ、悔しくないのか?
あの硬いまるで別物の黒いメロンパンなぞで、ケンカを売られたのだぞ?」
たしかに。
全くの別物を比較して、かつ一方的に「勝った」と思われるのは勘に触る。
職人ならば正々堂々と同じ土俵で勝負すべきだ。
なんだか沸々とした怒りと共にヤル気がでてきた。
よーし!
帝国側にとって、魅力的な商品を提示してやるぞ!!
「こうなりゃヤケだ!
やってやりますよ!!
任せてください!!!」
はあぁ、、我ながらチョロい男たな、、見え見えの乗せ方なのにパンのことになるとつい。
ほら、だって王様が小さくガッツポーズしてるじゃん。
「で、コムギ。
実際どうだ、アイデアはあるのか?
なければ時間を与えるが、、」
「食料問題を解決するためのパン、ですよね?
ありますよ。」
「「「えっ!?」」」
その場にいる全員が驚く。
「本当か?!
そんなパンがあるなんて知らないぞ??」
王様が目を見開いて驚いている。
もしかして『あれ』がないのかな?
そしたらたしかに『あれ』はないかも。
念のため、王様に『あれ』について聞くと「なんだそれは?」との反応。
よし!イケそうだ!
材料も揃うし、あとは作るだけだ。
「王様、お願いがあります。
一週間ください。
そのパンは時間と手間がかかるのです。
お願いいたします。」
「仕方ない、それ以上は無理だからな?
必ず一週間で作れよ」
「はい!」
すぐさま店に戻り、オレはパン作りに取りかかる。時間と手間がかかる分、このパンは美味しいのだ。
ただ、その分本来ならコストも掛かるが今回は度外視だ。
見てろよ、これならイケるはずだ!
そう期待と願いをパンに込め、一週間後を迎えた。
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出発する前に、無事に完成したそれを王様や皆に報告がてら見せる。
その姿に皆が不思議そうに見ている。
凸の形の白い砂糖でコーティングされた茶色い棒状のパン。
それはまるで中の生地部分が柔らかい白い布で覆われているかのように見えるのだろう。
またもや見たことがないものだ、とそこにいる皆の視線は釘付けになっていた。
そのパンの名前は
『シュトーレン』
これが今回の切り札になるパンだ!
いつもご愛読ありがとうございます。
すっかり寒くなりましたね。
今回出すのはシュトーレン。
冬限定の今ならではのパンです。
高い分美味しいので見かけたら手にとって見てはいかがでしょうか?
アドバイス、感想もお待ちしております。
よろしければお願いいたします。