トップの鏡
組織のトップとは、かくありたいものです
馬車を走らせ、オレたち3人は王様に謁見すべく城に到着する。
執務室まで執事セバスに案内されるが、疲れの色が見える。
やはり今回の事態でいろいろ忙しいのだろうか。
コンコン、、。
執務室の扉をノックするが、返事を待たずセバスに室内へ入るように促される。
「おお!来たか。
根を詰めすぎた、少し休もう。
紅茶でいいな?
ついでに何か朗報があるならありがたいが、、」
王様が早口で一気に話す。
悟らせないようにしているが、彼にもまた疲労の色がかなり見える。目の下のどす黒いクマがその証拠だ。
「実は朗報ではないですが、ご提案がありまして。」
「ほう!!なんだ?聞かせてくれ!」
公爵が王様に先ほどまでの話を説明する。
「なるほどな、、。
さすが『慧眼』と呼ばれたオイル公爵だな、その力は顕在か。
俺様もその案に賛成だ。
というより、それしかないだろうな」
王様の方でも、帝国の情報はおぼろげに掴んでいたらしく、試す価値アリと判断したようだ。
「陛下、『慧眼』とは懐かしい呼び名ですな。
ではこれからどのように致しましょうか?」
「こうゆうのは直接乗り込むしかないだろう。
俺様があのバカイザーに目にもの見せてやる!
我が国、ブーランジュの力を思いしるがいいわ!!」
あ、王様もバカイザーって言うんだ。
公認の呼称なのね。
というかまるで悪役みたいなセリフじゃないか。
それに、
「いやいやいや!!
陛下自らはちょっとまずいでしょう?」
思わずツッコんでしまった。
「なぜだ?」
「え、そうゆうのは大使とか代わりの者がやるものじゃ?」
「そんなことはせん、この国のトップは俺様だ。トップが動かねば国の危機の解決にはならん!
行動する姿勢を見せるだけでも民は安心する。
危機の時こそ、大胆かつ慎重に、しかし皆と心を1つにし立ち向かい、事態を解決する。
これこそが王様たる俺様の責務だ。
故に代理など論外よ!!」
そこにはトップに立つ人間の理想形があった。
漲る気迫、自信に満ちた表情。
きっとその姿を見るだけで、誰もが安心できるだろう。
『この人に任せれば大丈夫』と。
まさに王たる風格だ。
威厳と優しさを兼ね備えた傑物。
だからこそ、彼は若くして王様になったのだろう。
小さなパン屋だけどオレも見倣おう、組織のトップはこうありたいな。
「行くのは俺様、オイル公爵、アン、ショーニ、それにコムギだ。残りは護衛を少々だ。
あまり大人数だと動きづらいからな。
さっさと行って、ちゃちゃっと片付けてやる!
さあ、皆、急いで準備をしろ!!」
疲れからか王様がハイになっている。
ヤル気満々といった感じだ。
皆が高揚とした空気に当てられている中、オレは気付く。
あれ?
まだ終わってないよな、この話。
「あのぉ、すみません。
帝国に行って、なにをするつもりなんですか?」
そう言えば、とハッと我に帰り、皆がまだ決まっていない具体的な話を詰めようとする。
が。
王様がキョトンとした顔で一言。
「何を言っている?
お前が考えるのだぞ、コムギ」
な、、な、
「なぜええええええぇぇぇぇ!!!???」
本日2回目の投稿です。
ブックマークが気付いたらすごいたくさん、、。
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