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再会の味

本日は一挙2話更新です。

ノックされたドアを開けると、思わぬ人物が目の前にいた。


「彼」だ。

なんで?

どうして、、、?


「、、こんばんわ。アンさん。」



「こんばんは、、えっ。どうしてここに?」



「公爵様からいろいろ聞きまして、、、。」



しどろもどろになりながら2人は言葉を交わす。

彼女の胸に大きななにかの波がこみ上げてくる。


安心のような、驚きのような、期待のような、そんな強い希望の波が。



「ごめんなさい。

驚いてしまって、、。

立ち話ではなく、部屋の中へどうぞ?」



「すいません、お邪魔します。」


彼は小さな袋を手に、部屋の中へ入った。



(緊張する、、、。)

鼓動が彼に聞こえてしまうのではないかというほどだ。

部屋の中に異性と2人など初めてだからだ。

顔も紅潮するのがわかるほど熱い。



2人は対面式の小さなソファに座る。


「えっと、、、今日はどんなご用件で?」


「いや、公爵様に、、、その、、貴方を連れて行くようにと、、?

なんだかお願いされてしまいまして、、。」



「「・・・・・」」



2人で無言になってしまう。

何がどうなってそんな話になるのか、2人ともよくわからないと混乱しているからだ。

きっとその場に第3者がいたらきっと笑ってしまうだろうという位、おかしな話の流れと空気に思わず



「「ぷっ、、あはは」」



2人で思わず噴出してしまう。

なんだろう、さっきまで闇色だった心がすっと晴れるようだ。



そんな軽い空気になったのを察してか、彼がゆっくりと切り出す。


「話や事情はいろいろ伺いました。

 単刀直入に聞きます。

オレに出来ることはありませんか?


アンさんにオレは感謝しているんです。

いきなりこの世界に来て、わけもわからないオレにショーニさんを紹介してくれたり、雪山で命がけで助けてくれたり、くじけそうな時に励ましてくれたり。

一緒にいた時間は短かったけれど、心強くて、安心したんです。


だからアンさんが何かしたいというなら今度はオレが恩返しします。

いや、させてください。



アンさんの笑顔に、、、助けられたので。」


まっすぐな彼に感謝の気持ちに思わず照れてしまう。

同時にそんなのは私の都合に、貴方を利用したという後ろめたさが彼女の胸に強く刺さる。


こんな真っ直ぐな気持ちを受け取る資格が自分に本当にあるのか、そう考えるだけで

彼女は改めて自分が最低な人間だと認識するのだった。



「感謝なんて、、私の都合に貴方を巻き込んだんです。

受け取る資格、、私にはありませんよ、、。、」



思わず声が小さくもれるように話してしまう。

真っ直ぐな彼に正面から向き合えない自分が情けない。


彼が持っていた袋からカサカサと何かを取り出す。

小さな小分け袋に入っていたそれは以前見た「あれ」だ。



「、、アンさんに食べて欲しくて作りました。

もし良かったら食べてもらえませんか?」


そっと手渡された「それ」は、気落ちして力が入らないからか前より少し重たく感じた。


「いただきます、、」



前と同じ、ふわっ、、とした生地、そして前とは違う、甘くとろける軽い食感とともに前に食べた小倉餡の味が口の中いっぱいに広がる。



「ふわぁ、、これ前のより美味しいです、、!

軽くて甘い、初めての食感、、、。


この白いものはなんなんですか?」



「生クリームです。

バターを作る前に出てくるんですよ。

小倉餡との相性ばっちりでしょ?」


彼がちょっと自慢するような

「へへへ」というようないたずらな微笑みで教えてくれる。

知らない味にまたも簡単に気持ちを軽くされるなんて、なんて単純な女なんだと自嘲してしまう。



でも、、彼のおかげで、この『生クリームあんぱん』のおかげで心が軽くなった気がする。

彼には感謝しかない。

ちゃんと伝えなきゃ。



「ありがとうございます、、あれ?」



涙が不意に頬を伝う。

ホッとしたからなのだろうか、気が緩んだのか、とめどなく涙が溢れていた。


「あれ、、こんな、、」


どうしよう、涙が止まらない。

こんなに弱い無力な自分を感じるなんて初めてだ。

自分で自分をコントロールできないなんて、未熟な証。

こんな自分に感謝される彼の気持ちに、応えられないやるせなさが、さらに彼女の不安な思考を加速させていた。



・・・!!

不意に彼が私を抱きしめる。


「えっ!?え!?」



「オレはこういうの慣れてないから、うまく言えないけど、、。

泣かせてしまって、ごめんなさい。


もしアンさんが不安とか悲しいなら、安心してもらえるようオレが側にいますし、胸を貸して抱きしめます。


、、安心してもらえればいいんですけど。」



「、、はい。ごめんなさい、、、。

今だけ、あと少しこのまま、、」



彼の照れながら懸命に気持ちを伝えようとするその言葉に、照れと恥ずかしさでいつのまにか私の涙の色は歓喜の色に変わっていた。



そして心臓が破裂するのではないかと言うほど大きな鼓動は



互いにだけ、温かく伝わっていた。


いつもご愛読ありがとうございます。


本日は一挙2話更新です。

描写が難しくて上手く描けてるかどうか、、。


今回紹介のパンは「生クリームあんぱん」です。

小倉あんに生クリームがたっぷりはいった私の大好物です。

軽い食感と甘さが魅力的なので皆様もよろしければぜひ!


まだまだ勉強しなければなと思うこのごろ。

作品の評価、感想もお待ちしておりますのでよろしければどうぞお願いいたします。


寒くなってきておりますので皆様もお体には気を付けて。

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