エスコート?
抱きかかえる姿勢のまま再会に驚くその女性をオレはまずしっかりと立たせた。
危なくないように手を取りながらなので彼女の指、手の感触から緊張が伝わってくる。
「あの、、すみません。」
「いえ、、あの、どこかでお会いしたことありますか?」
正直心当たりが全くない。
こんな綺麗な、本で見るようなお姫様みたいな女性は男なら忘れようもない。それにオレは知り合いが少ないし、、、。
「まさか、わからないのですか、、?
ふふっ、そう言えば服装がまるで違いますからね」
からかい甲斐があると言わんばかりに意地の悪い笑顔になる。その笑顔にも思わずドキリとしてしまう自分に久方ぶりの胸の高鳴りをコムギは感じずにいられなかった。
「私ですよ、アンです。
アンジェリーナ・フォン・ドボーです、本当にわかりませんか?」
「ええーっ!?アンさん?!?なんでここに、それにその格好はいったい、、?」
クスクスと笑いをこらえながら笑い涙を浮かべながら彼女は答える。
「あの魔石を取りに行ったことで叙勲されたのです、なのでそれなりの服装に。
今日は父、公爵の名代として登城した次第です」
「そうなんだ、びっくりしたよ、まさかこんなところで会うなんて。
正直、君には礼を言わなきゃって思っていたんだけど機会がなくて言いそびれていたのが気掛かりでね、、今日会えたついでってわけじゃないけどありがとう。」
「いえいえ、コムギさんのお噂もかねがね。気になっていましたよ、新しいパンで国中が大騒ぎ。しかも今回ワフウとの交渉にも立ち会って活躍なされたとか。おめでとうございます。
それに父に代わりまして御礼申し上げます」
褒めてくれる内容でも、最後の一言だけ、トーンが真面目だったのをオレは聞き逃さなかった。
「最後のはどうゆう意味かな?
お父さんになにか関係が??」
彼女はぐっと握りこぶしに力を込め、決意したかのように
「父は国の物流を担う要職にあります。その責務において、今回の小麦粉の不足は父の失態です。それを救っていただいたコムギさんには御礼を申し上げないと、、」と言いづらそうな内容を口にした。
「アンさんのお父さんが担当の公爵だったのか」
「はい、だから本当にいろいろ申し訳なくて、その謝罪や報告を陛下にするために今日こちらまで来たのです。」
「じゃ、一緒に王様のとこに行こうか?
たぶんまだショーニさんと話をしてるだろうから執務室にいるはずだよ?」
「え、でも、、」
「一人じゃ心細いでしょ?
ちょっとの恩返しというのも兼ねて、で一緒に行くよ」
「、、ありがとうございます。
正直とても不安でしたので、、」
「じゃあ行こうか、はい」
「えっ?」
オレは手を差し出す、エスコートするような形だ。
「手が震えてるからね。
緊張をほぐす意味でも手を繋いでいくよ。子供扱いするわけじゃないよ、人って不安なときに誰かと手を繋ぐと安心するらしいからさ」
「、、はい」
羞恥からなのか緊張からなのか顔を真っ赤にしながら彼女の手を取り、2人は執務室に向かう。
それはこれからの波乱を感じせない、穏やかで微笑ましい時間だった。
いつもご愛読ありがとうございます。久方ぶりの登場、アンです。あんぱんのアンさんです。
これから彼女をどのように絡めていけるかいろいろ頑張っていきます。励みになりますので、評価、感想、ブックマークもよろしければお願いいたします。